北海道新聞2023年12月10日 05:00<単行本>
◆方言漢字事典 笹原宏之編著
地域性のある漢字、約120字について考察。地名が多いが、北海道からは咾別(いかんべつ)神社(十勝管内幕別町)の「咾」などを収録。「あふれる川」を意味するアイヌ語地名由来らしいが、「いかん」と読ませる理由はなお判然としない。現地に足を運んだ上で編さんされ、読みものとしても面白い。(研究社 2970円)
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北海道新聞2023年12月10日 05:00<単行本>
◆方言漢字事典 笹原宏之編著
地域性のある漢字、約120字について考察。地名が多いが、北海道からは咾別(いかんべつ)神社(十勝管内幕別町)の「咾」などを収録。「あふれる川」を意味するアイヌ語地名由来らしいが、「いかん」と読ませる理由はなお判然としない。現地に足を運んだ上で編さんされ、読みものとしても面白い。(研究社 2970円)
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毎日新聞 2023/12/12 北海道朝刊 有料記事 519文字
浦幌町のアイヌ民族の団体「ラポロアイヌネイション」と、米国や台湾など5カ国・地域の先住民らが、先住民には「先住権」があり、各地で権利を取り戻せるよう連帯して闘うとする「2023ラポロ宣言」を取りまとめた。今後、各地の情報を共有しながら権利回復に取り組むという。
北海道大アイヌ・先住民研究センター長の加藤博文教授は「先住民の団体が主体となり宣言を出すのは非常に珍しく、海外からも注目を集めている。先住権を巡る共通課題を明文化し、議論を続ける方針が示されたことは意義深い」と話した。
宣言は11月30日付。地元の河川でサケを捕獲する権利があると主張している同団体が今年5月、米国、カナダ、オーストラリア、台湾、フィンランドの先住民らを招いて開いたシンポジウムを契機に取りまとめられた。
先住民は「伝統的、慣習的に使用する土地や資源に対する集団的権利」を持ち、いかなる国もこれを侵害できないとする内容。自然資源の管理や規制をする場合は、先住民に十分な情報提供を行い、事前の承諾を得るべきだとした。
同団体は、先祖が・・・・・
毎日新聞 2023/12/12 北海道朝刊 有料記事 429文字
「イラムヤン(考えてください)」――。札幌市西区で8日に開かれたビートルズ元メンバー、ジョン・レノンの追悼コンサートでアイヌ語の歌声が響きわたった。ジョン・レノンの不朽の名曲「イマジン」。「人がみんな お互いに尊重し合っている」「殺し合いはない」。平和で差別のない世界を観客と共に思い描いた。
アイヌ語で歌ったのはアイヌの女性3人グループ「Unit木の芽」。音楽プロデューサー、箭原顕さんのピアノ伴奏で歌い、会場のスタジオに詰めかけた約100人から拍手が湧き起こった。リーダーの原田公久枝さんは演奏後、「一言で分かるような歌詞で覚えやすく、歌いやすい」と話していた。
ジョンの妻オノ・ヨーコさんのいとこで、主催した実行委員会代表の小野有五・北大名誉教授によると、イマジンをアイヌ語訳で歌ったのは世界初。
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【安味伸一】
札幌大学2023年12月11日
札幌大学は、2024年4月から、時代の変化と社会の要請に応える教育プログラムとして、新カリキュラムをスタートします。
札幌大学では、経済学、経営学、法学、英語、日本語・日本文化、歴史文化、スポーツ文化、リベラルアーツの8つの専攻で他大学の学部・学科と同等に幅広い学問領域の学位が取得できると同時に、学生の興味関心に応じて幅広く学んだ後で専攻を決めることができる「レイターマッチング」や他の分野の学びを組み合わせられる「副専攻」など、わが国の大学教育の最新の流れである「多様な学び方」を他大学に先駆けて展開しています。
新カリキュラムの特徴
1.学修者本位のカリキュラム
学生自身がカリキュラムで「なにを学び、どんな力が身につくか」を実感できるよう、構築しています。
学修目標への道筋が明確になるよう、科目を精選しています。
学生が早期に専門分野の魅力に触れることができるよう、1年次から入門的科目を配置しています。
2.「国際性」を重視した専攻再編と基盤教育
隣国・韓国について、ニーズの高い韓国語を充実し、ポップスなども含めた韓国文化の科目を新設します。
ロシア語専攻のロシア語・ロシア文化科目をリベラルアーツ専攻に移行し、歴史と伝統を引き継ぎます。
これからの時代に欠かせない国際コミュニケーション力を身につけられるように、基盤教育も含めて英語教育を充実します。
3.社会で活躍する力を身につける「みらい志向プログラム」の拡充(※)
複雑化する時代を生き抜いていくためには、「専門知」と分野横断的な「総合知」の両方が必要であり、2022年度からスタートした全専攻横断型プログラム「みらい志向プログラム」をさらにアップデート(※)していきます。
あらゆる仕事と生活に有用な学びとして、新たに「スポーツマネジメントプログラム」、「リスクマネジメントプログラム」をスタートします。
※全専攻横断型プログラム「みらい志向プログラム」は、2022年度から「食・観光プログラム」「データサイエンスプログラム」「アイヌ文化スペシャリスト養成プログラム」の3つのプログラムで展開しています。
基盤教育(共通科目)
「地域共創人」として社会に貢献できる教養を身につける
SDGs、起業家精神、先住民族文化など地域を共に創る人材に必要な基礎的素養を学びます。
ビジネス英語をはじめとする語学と社会変化に対応した新たな教養としてSTEAMS教育(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics、Sports)の各分野科目を展開します。
初年次から就業意識を醸成する演習科目、キャリア科目を展開します。
各専攻カリキュラムの特色
各専攻が目指す「身につく力」を明確にして、学びの特色を一層強めていきます。
経済学専攻 |
4年間の学びで「どんな力が付くか」「どのような進路を目指すか」を主眼に2つのユニットを立ち上げます。 「行政・金融ユニット」:ヒトとおカネをつないで地域を設計できる力が身につく •公務員、銀行員を目指すうえで必要とされる経済学の基礎と応用をしっかり身につけ、地域住民とふれあい関係者を結びつける企画・調整力を築ける力を身につけます。 「食・観光ユニット」:地域の真の良さがわかり、道内外の人々に価値あるモノとサービスを提供できる力が身につく •食×農×観光をめぐる様々な知識を修得し、実践体験を通じ、北海道経済の魅力をもっと引き出す人材を育てます。 |
経営学専攻 |
「経営・会計コース」:実践から学び、マネジメント力が身につく •様々な経営体における諸問題に対して、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を活用して解決に導くことができる力を身につけるために、経営体が意思決定を行う実践から経営学分野の知識として学びます。また、商業科教師に必要とされる指導力が身につきます。 「情報経営コース」:AI時代に対応する情報経営能力が身につく •様々な経営体における諸問題に対して、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)のうち、情報を効率的に活用して解決に導くことができる力を身につけるために、AI時代に変革していく経営体で不可欠な情報経営分野の知識を学びます。また、情報科教師に必要とされる指導力が身につきます。 |
法学専攻 |
「法的思考力」が身につく 社会に生起する紛争や具体的な課題に対して、事実関係を精査し、関係するルールを勘案しつつ、納得できる論理を使いながら、妥当な解決策を見つけ出す力、それが「法的思考力」です。法的思考力は、すべての公務員やビジネスパーソンに広く求められています。 |
英語専攻 |
日本のカルチャー、世界のカルチャーを語れる英語力が身につく •伝統のレベル別・少人数制クラスで英語を主体的に学び、成長を実感することができます。 •専門的指導と英語力を活かした就職を目指す、実績ある英語教育と通訳・翻訳のエキスパートゼミ。 •Jカルチャーを題材とした授業を展開。英語で情報共有し、世界中の若者と繋がる力がつきます。また、アメリカ、フィンランド、韓国等の大学に交換留学することができます。 |
歴史文化専攻 |
フィールドワークを通じて自分で考え、判断・行動する力、地域貢献力が身につく •北海道でのフィールドワークを通じて、アイヌ文化・北方史・北方考古学を学びます。 •中学と高校の社会科教師に相応しい地域貢献力:歴史学、地理学、考古学、アイヌ学の専門知識が身につきます。 •学芸員に必要なスキル:歴史的価値のある資料や古文書を読む力、フィールド調査の技術を獲得します。 |
日本語・日本文化専攻 |
自分の内面にある思いを表現する力、新たな価値を創造する力が身につく •古典からサブカルチャーまで日本の文学作品を学ぶことによって、作品を鑑賞する力や自分の内面にある思いを表現する力が身につきます。 •物語、和歌、アニメ、映画、音楽...、多様な日本文化に触れることで新たな価値を創造する力がつきます。 •国語科教師、日本語教師に相応しい力が身につきます。 •日々の言語活動を省み、演習型授業を取り入れ、実践的な日本語力が身につきます。 |
スポーツ文化専攻 |
多様な社会をスポーツから構想、活性化できる力が身につく •身体のしくみからスポーツの社会的役割まで幅広く学び、スポーツの可能性を引き出す力を身につけます。 •スポーツイベント、野外教育、パラスポーツなど多様なスポーツのあり方を学び、スポーツへの関わり方を理解します。 •保健体育科教師やトレーニング指導者などを目指すうえでの知識と素養が身につきます。 |
リベラルアーツ専攻 |
グローバルとローカル―世界を視野に地域やビジネスの課題を解決できる理解力、対話力、行動力が身につく •韓国、中国、ロシアなどの隣国の文化を学び、国際理解力、国際交渉力を深めます。 •北海道の自然、観光、ツーリズムについて理解し、地域に貢献できる知識・経験を身につけます。 •フィールドワークを通じて対話力、課題解決できる力を身につけます。 |
全専攻横断型プログラム「みらい志向プログラム」
2024年度新設する2つのプログラム
スポーツマネジメントプログラム
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リスクマネジメントプログラム
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内容を充実させる3つのプログラム
「食・観光」プログラム
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データサイエンスプログラム
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アイヌ文化スペシャリスト養成プログラム
国立アイヌ民族博物館を核とするウポポイ(民族共生象徴空間)が白老町に開設されるなどアイヌ文化を次世代に継承していくことが一層重要となっており、専門的な知識や技術を有するプロフェッショナルな人材が今後ますます必要とされます。特に、アイヌ伝統工芸の後継者育成は重要な課題であり、このプログラムでは優れたアイヌ工芸作家を講師に招き、木彫りや刺繍などの実技を直接指導してもらうことができます。
問い合わせ先
札幌大学 学務部 教務課
TEL:011-852-9608 または 011-852-9172
E-mail:kyomu@ofc.sapporo-u.ac.jp
琉球新報2023年12月12日 05:00
アイヌの人々などに向けた差別的言動を繰り返している自民党の杉田水脈衆院議員は、月刊誌「Hanada」2024年1月号への寄稿で「私は潰れません。これからも、まだまだ戦っていきます」と宣言した。別の月刊誌の対談では、「琉球民族を先住民族として認めろという動き」に触れ、沖縄などの運動を中傷した。杉田氏の言動を放置している自民党の責任が問われている。
杉田氏は寄稿で、アイヌや在日コリアンに関する差別的言動を巡り、法務局から人権侵犯と認定されたことについて、「行政処分ではありませんから、具体的に何が起きるわけではない」と主張。「私が叩たたかれれば叩かれるほど、様々な問題があらわになっていく」と、国会議員の職を続ける自身の対応を正当化した。
さらに杉田氏は、月刊誌「WiLL」24年1月号の対談で、「今、琉球民族を先住民族として認めろという動きも活発化しています」と言及。対談相手の元産経新聞記者が「そうして莫大な補助金チューチュー構造をつくろうとしている」と応じると、杉田氏は「公金を得た左翼活動家が、さらに反日活動を世界中で展開する」と語り、沖縄の運動などを中傷した。
杉田氏は過去にも沖縄に関して、「(沖縄に対する)差別なんてない。優遇されている。大阪の議員仲間も『ゴネればゴネるだけお金が来るんですよ』って」(17年の月刊誌「JAPANISM」の対談)と根拠のない発言を拡散。東京MXテレビの「ニュース女子」が、基地建設に反対する市民をテロリストにたとえる番組を放送して問題になった際も、「事実を報道したテレビ局に対し、『デマ』というレッテル貼りをし、デモなどで圧力をかける。いつもの左翼活動家の手法」(17年2月、産経新聞)と番組側を擁護していた。同番組はその後、放送倫理・番組向上機構(BPO)から人権侵害と認定されている。
杉田氏の一連の言動は国会でも再三問題になっているが、自民党の岸田文雄首相は11月27日の参院予算委員会で、「議員の発言に一つ一つコメントすることは控える」と論評を避けている。(南彰)
JICA2023.12.11
北海道センター(帯広)代表 木全 洋一郎
2023年9月よりほぼ毎月発信させていただいた本シリーズも最終回です。
これまで日本の地方創生と国際協力との関係について事例を交えてお伝えしてきましたが、最終回では「日本の地方創生から発想すると、国際協力もこんな風に変わっていく」というお話をさせて頂きます。
十勝の資源が紡ぐムスリムフレンドリーなつながり
帯広市は十勝が持つ農業、食、自然を通じて北海道外、ひいては海外ともつながり、地域の経済・産業を活性化させていく「フードバレーとかち」をまちづくり施策として掲げています。帯広商工会議所は、2014年より草の根技術協力を通じてフードバレーとかち政策をタイやマレーシアでも実践することを支援しています。この取り組みのユニークな点は、協力の効果がタイやマレーシアだけに現れているのではなく、十勝の企業や社会にも広がっているということです。
具体的には、十勝に強みのある乳製品の加工や、お菓子の作り方等の講習のために参加した(株)とかち製菓は、ここでの企業間交流がきっかけでマレーシアの企業と共同で、イスラム教の方も安心して食べられる認証をとった「ハラル大福」を生産。後に日本での自社工場でも同認証を取得し、現在は別の現地パートナー企業と技術提携する形でハラル大福の製造・販売展開をしています。こうした取り組みが評価され、2018年には農林水産大臣賞も受賞されています。いずれは北海道の農水産物の輸出を促進させるべく、マレーシアで自社独自に事業展開することを検討されています。
また、(株)クナウパブリッシング(旧ソーゴー印刷(株))は、この協力をきっかけに現地で北海道のスローライフを発信するフリーペーパーを発刊。残念ながらコロナ禍で同事業は休止されましたが、別途旅行会社を立ち上げ、マレーシア向けに北海道の自然資源を生かしたツアーを造成しています。
さらに帯広の街の中でも、イスラム教の方も安心してお食事できるところや礼拝できるところを地図にした「ムスリムフレンドリーマップ 」が作成されています。
こうした動きを受けて、マレーシアから食品衛生を学びに来たハラル開発協会の会長からは「十勝の農産物をハラル認証された商品の原材料にしたい」という提案を受けるに至っています。
このように、国際協力に背中を押される形で、マレーシアそして将来は10数億といわれるイスラム教の方々向けの市場を相手に、十勝の資源を生かした形での企業の進出及び観光への呼び込みが期待されています。
釧路とタイの相互観光振興による交流人口還流
JICA海外協力隊をご存じの方は多いかと思いますが、それと同様の制度がタイにもあることはご存じでしょうか?これまでは隣国のカンボジアやラオス等にボランティアを派遣していましたが、同制度であるFFT(Friends From Thailand)の20周年となる2022年に、初めての日本派遣として釧路にタイ人ボランティアが派遣されました。
ボランティアとはいえ、日本への留学経験があり日本語は堪能、日本とタイで日系の旅行会社での勤務経験があり、さらに自身のSNSでは20万人ものフォロワーがいるインフルエンサーのような方が来てくれました。
2022年9月~12月の3か月間、主に阿寒地域に入って持ち前の明るさで地域の事業者に愛され、当地で活動している地域おこし協力隊とも連携して、阿寒湖の自然やアイヌ文化の魅力をタイ語で発信し、タイ人向けの旅行ツアー案も作成してくれました。
こうした成果には釧路市側も大いに驚いて、離任時には同ボランティアに外国人では初となる「Cool釧路市観光大使」に任命するに至りました。
2023年2月には、観光大使となったFFTボランティアを追いかける形で釧路市職員がタイに出張。同ボランティアの紹介でタイでの旅行フェアへの参加、彼女の勤めていた旅行会社との関係構築と、釧路観光誘致にむけた戦略的なPRにつなげることができました。
2023年9月には釧路でタイから観光振興分野での青年研修を実施、2024年1月からはタイで観光コミュニティ開発の活動をする予定のJICA海外協力隊の候補生がグローカルプログラムとして約3か月間釧路での観光振興に取り組む予定です。そして2024年2月頃にタイから2代目となるFFTボランティアが釧路に派遣される見込みとなっており、タイに赴任予定のJICA海外協力隊との協働も期待されています。
このように、タイと日本のボランティアが釧路で、そして将来はタイでも協働することで、釧路とタイ双方から魅力あるツアーが企画され、そのツアーでタイから釧路に、そして日本からタイに多くの観光客が行き来するようになるのも夢ではありません。
国際協力がつなぐ“相互地方創生”へ
ご紹介した事例でお分かりの通り、国際協力は途上国を利するだけの事業ではなく、国際協力の先にある「日本の地域との互恵的で持続的な関係構築」を見据えた“相互地方創生”事業となってきています。
グローバルな視点から課題や可能性を捉え、国境をこえてローカル(地域)とローカルを結んでいく。次にはどのようなテーマで、どのような価値を共創していくのか…そんなことを考えながら、現場から企画を練っていくワクワク感を持ち続けていきたいですね。(おわり)
琉球新報 2023年12月11日 10:02 更新 2023年12月11日 11:50
オンラインで台湾・南澳のタイヤル族の人々とつながったフォーラム=9日、南風原町の南風原文化センター
1969~72年に沖縄から島づたいに台湾に渡り、日本の旧植民地だった台湾や朝鮮の人々の暮らしを映したドキュメンタリー映像「アジアはひとつ」(73年、布川徹郎・井上修監督)の上映会が9日、南風原町の南風原文化センターで開かれ、約90人が参加した。国家や植民地主義への疑問を投げ掛ける映像について、会場からは“台湾有事”を名目に南西諸島で軍備増強が進められる中、県民に戦争反対の機運が高まっていることを重ねる声も。「虐げられながらなんとか生きるたくましさを感じた」「どうあらがえばいいか、考えさせられた」といった受けとめが聞かれた。
映像は学生らでつくるNDU(日本ドキュメンタリストユニオン)が作製。2019年に「台湾原住民族との交流会」事務局で中国残留孤児の支援にあたる安場淳さんが映像の存在を知り、同会会員の久部良和子さん=南風原町=に声をかけた。当時フィルムは貴重で映像はほとんど残されておらず、現地で上映会をして関係者に見てもらいたいと考えたという。
映像では、西表炭鉱や沖縄本島の建設現場で過酷な労働環境に置かれた台湾や韓国の人々の様子を紹介しているほか、50年前の台湾・宜蘭県南澳郷のタイヤル族の集落と人々の姿も写されている。日本兵として徴兵された先住民のインタビューも出てくる。
元NDUメンバーの今郁義さんは反響の大きさに「映像の記録性や魅力を感じる。時代を超えてこの映画に久部良さんが息を吹き込んでくれた」と評価。新里幸昭さん(81)は「弱い人たちが団結して生きていくたくましさが見えた。南西諸島でミサイル配備が進む現在の状況の中で非常に示唆に富む映像だ」と指摘した。那覇市と名護市から訪れた70代女性は「創氏改名など日本の皇民化の大きな影響を感じた。貴重なインタビューでもっと上映会をしてほしい」と涙を浮かべた。
映像を制作した監督2人はすでに他界。台湾原住民族との交流会は今後、著作権を持つ団体などと協力し、50年前に写された状態の良い写真を南澳の親族に渡す活動を模索していくという。
台湾でも上映会
「あれは私のお母さん!」「私のおじいちゃんとおばあちゃんだよ」。10月下旬、台湾・宜蘭県南澳で開かれた「アジアはひとつ」の上映会には、大きな反響が寄せられた。50年前に撮影された亡き肉親の姿などを一目見ようと会場は熱気に包まれた。かやぶき屋根の家々や子どもたち、運動会でタイヤル族伝統の踊りを披露する姿などが映し出されると、来場者は立ち上がって指を指したり、歓声を上げたりして興奮した様子で見守った。47年前に死去した母親の姿を映像で見つけた曹恵玲さん(58)は「懐かしい。本当にありがとう」と涙を流し、喜んでいた。
映像の中で記念写真に写るバサオ・ノカン(林長盛)さん(88)が存命だということが会場に来た人の話で分かり、急きょ会場に駆けつける場面もあった。流ちょうな日本語で自身の先住民族としてのアイデンティティーや日本への複雑な思いなどを語った。
ノカンさんの祖父は、日本の台湾統治初期に抵抗して日本軍に銃殺された。父親は警察官だったことから、他のタイヤル族の子どもたちが学校教育を受けられない中、宜蘭の寄宿学校で日本人と同じ教育を受けたという。日本の敗戦で植民地統治が終わり、戦後国民党が政権を握ると学校では「日本人」としていじめられた。
その後、郷長として10年間務める中で集落に電気を通すなど生活改善に努めたノカンさん。9日のフォーラムでは日本語で「沖縄とつながることができてとてもうれしい」とオンラインを通して呼びかけ、拍手を浴びていた。
(中村万里子)
Forbes2023.12.11
米ユタ州アーチーズ国立公園の名所デリケートアーチの絶景(Shutterstock)
来る新年に訪れたい場所のリストに、米国の国立公園を加えてみてはどうだろう。ちょうど国立公園局(NPS)が2024年の「無料開放日」(6日間)を発表したところなので、今のうちにカレンダーに印をつけておくといい。最初の機会は年明け早々、1月15日のキング牧師記念日だ。
カリフォルニア州のジョシュアツリー国立公園にある頭蓋骨の形をした岩やサボテン群生地、名称の由来となったジョシュアツリー(ユッカ・ブレビフォリア)の木立から、メーン州のアーカディア国立公園にある東海岸最高峰のキャデラック山まで、米国立公園は絶景の宝庫だ。内陸部も、ユタ州のブライスキャニオン国立公園に立ち並ぶ奇岩、コロラド州のメサベルデ国立公園に残された古代プエブロ人の岩窟住居、ケンタッキー州のマンモスケーブ国立公園にあるゴシック建築を思わせる洞窟など、魅力は尽きない。
全米に63カ所ある国立公園は、まさに見どころ満載。だが実は、NPSが管理する公園地は425カ所、広さ34万4000平方kmに及ぶ。米本土のみならず、バージン諸島などの米海外領土にも国立公園があるのだ。バージン諸島国立公園はセントジョン島の3分の2を占め、サンゴ礁の海でシュノーケリングをしたり、先住民族タイノが先史時代に描いた岩面彫刻(ペトログリフ)を鑑賞したりできる。
米国立公園には訪れるべき場所がたくさんあり、無限の冒険が待っている。年間パス未購入でも、無料開放日を活用すれば「死ぬまでに絶対行きたい場所」のいくつかは制覇できるだろう。
2024年の米国立公園の無料開放日は?
・1月15日:故キング牧師の誕生日
・4月20日:国立公園週間の初日
・6月19日:ジューンティーンス奴隷解放記念日
・8月4日:グレート・アメリカン・アウトドア法制定記念日
・9月28日:全国公有地の日
・11月11日:退役軍人の日
無料開放される国立公園は?
無料開放日は、普段なら入場料が必要な国立公園を訪れる絶好の機会だ。対象となる公園や施設のリストはこのウェブページで州ごとに確認できる。とはいえ、実はほとんどの国立公園はもともと年間を通して入園無料だ。400を超える国立公園地のうち、入園料が必要となるのは100カ所程度になる。
米国立公園の入園料は通常、入園者1人または車両1台ごとに徴収され、金額は5~35ドル(約720~5100円)。無料開放日でも、キャンプ場のレンタル、一部ガイドツアー、ボート場といったサービスやアクティビティーは有料となる。(多くのガイドツアーは無料だ)
冬に訪れるならどの国立公園?
2024年最初の無料開放日は1月15日のキング牧師記念日だが、冬季におすすめの国立公園はどこだろうか。
凍てつく空模様に耐えられそうなら、アーチーズ国立公園やグランドティトン国立公園の雪景色はいっそうの趣が味わえる。寒さをものともしない人なら、イエローストーン国立公園では間欠泉を横目にクロスカントリースキーが、ロッキーマウンテン国立公園のヒドゥンバレーではそり滑りが、セコイア・キングスキャニオン国立公園ではスノーシュートレッキングが楽しめる。
寒さが苦手なら、フロリダ州キーウェストの沖合にあるドライ・トートゥガス国立公園や、バージン諸島国立公園がおすすめだ。
さて、2024年に行ってみたい国立公園は見つかっただろうか。
プリファード トラベル グループ2023年12月11日 14時23分
プリファード トラベル グループ傘下のサステナブルホテルブランド、ビヨンド グリーンは加盟ホテルの世界的なESG (環境、社会、ガバナンス) イニシアチブの成果とサステナビリティへのコミットメントを示す初のグローバル インパクト レポートを発表しました。
レポートはビヨンド グリーン加盟ホテルのサステナビリティに関する調査データを活用しており、地球の自然環境の保護や、文化遺産の尊重、地域社会の生活向上など、持続可能な観光がもつ力を示しており、旅行の未来を象徴するものと言えます。レポートは www.staybeyondgreen.com/GIR から入手できます。
ビヨンド グリーンは2021年4月にプリファード トラベル グループによって立ち上げられました。このホテルブランドは世界中からサステナブルホテルとしてリードする施設を集め、旅行業界を変革することを目指しています。各ホテルは世界的に持続可能な観光基準と国連の持続可能な開発目標に沿った50以上の指標に従って審査されています。このレポートは、環境や社会への配慮が旅行者の目的地や宿泊施設の選択に与える影響が大きくなっている時代に、教育ツールとしても役立っています。環境面だけでなく、サステナビリティについて一般の旅行者にも身近なものとして理解を促す役割も果たしています。ビヨンド グリーンは、「自然」「文化」「地域社会」の3つの柱でサステナビリティリーダーシップを発揮するホテルを紹介することにより、旅行者が訪れる場所や地域社会に積極的に貢献している宿泊施設とのつながりを保証してます。
「このレポートの結果は、持続可能な観光の基盤である「自然」「文化」「地域社会」の3本柱にまたがる私たちのメンバーホテルの素晴らしい活動に焦点を当て、このテーマがいかに重要であるか、そして私たちがなぜ情熱を持ってこの理念に取り組んでいるかが示されています。私たちは共に、旅行が持つ力を活用し、次世代を担う旅行者のために遺産を残すことができるのです。」と、ビヨンド グリーンとその親会社であるプリファード トラベル グループのCEO(経営最高責任者)リンジー・ユベロスは述べています。
レポートのハイライトは以下の通りです:
サステナビリティ専任職: ビヨンド グリーンの加盟ホテルの90%以上が、サステナビリティマネージャー、またはそれに相当する役職やチームを設置、サステナビリティプログラムの進化と現場で実地にリーダーシップを発揮しています。
使い捨てプラスチックの削減と廃止: ビヨンド グリーンに加盟している100%のホテルでは、使い捨てのペットボトルを廃止しています。使い捨てプラスチックを減らし、廃止するための取り組みとして、生分解性包装の利用や、木や竹で作られた再利用可能なルームキーなど、持続可能な素材の採用がホテル運営全体で行われています。
o カリフォルニア州にあるThe Ranch at Laguna BeachのGEO (Golf Environment Organization)認証ゴルフコースでは、独自のガラス瓶粉砕機を使って砂を作り、ガラスの廃棄量を90%削減しています。
再生可能エネルギー: ビヨンド グリーンのホテルのほぼ70%が、ソーラーパネル、風力タービン、認証された木質ペレットから作られるバイオマスなど、再生可能エネルギーを積極的に活用しています。
o The Brandoは再生可能エネルギーの活用に優れており、太陽光発電所からのエネルギーだけでなく、革新的な海水空調(SWAC)システムも採用しています。このシステムは深海からの冷水を利用し、ハイドロフルオロカーボンにダメージを与えることなく空間を自然に冷却する技術です。
絶滅危惧種の保護 :加盟ホテルは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストや米国の絶滅危惧種リストに登録されている24種以上の動物種と1種以上の植物種の保護に積極的に貢献しています。
o andBeyond Mnemba Islandは海洋保護におけるリーダー的存在であり、Ministry of Blueとの協力で、周辺の生物多様性に富んだ海域をさらに保護するためにMnemba Island Marine Special Area (MIMSA)を設立しました。この場所は絶滅の危機にあるアオウミガメのわずかな営巣地として保護されており、滞在のゲストもモニタリング活動に参加することができます。
&Beyond Mnebma Island
慈善活動と寄付: ビヨンド グリーンの加盟ホテルは、直接的な資金やゲストからの寄付を通じて、2021年から2022年の間に合計3,138,449米ドルを寄付し、地域社会や自然・文化的イニシアチブを支援しました。
o スペインのカタルーニャ地方にあるTalaia Plaza EcoResortは、2022年12月にプラザ テラ ビバ財団を設立し、地域の豊かな遺産を保護し、住民の福利を向上させるために地元の非営利団体やプロジェクトへの支援を拡大しています。
文化遺産の保護 :伝統的な建築や地域独特の土地の特徴を反映した、料理プログラム、民間伝承、歴史や芸術を探求するゲスト体験を提供することで、ゲストと文化遺産を共有しています。
o モンゴルのゴビ砂漠に位置するThree Camel Lodgeは、周辺の草原に生息するマスティフ犬の一種であるモンゴリアン・バンホールを復活させるプロジェクトを通じて、この地域に語り継がれる伝統と生活遺産を守っています。
地域社会、社会的、経済的幸福: 加盟ホテルは、地元コミュニティを積極的に支援するために、雇用の促進、地元企業やアーティスト、職人とのパートナーシップ、零細企業プロジェクトの支援、教育や健康への取り組みなど、地域開発に貢献しています。
o バンクーバー島のThe Parkside Hotel & Spaは、ホテルが建つ土地とソンヒーズ族の歴史的な関わりを認識し、ブリティッシュコロンビア州で初めて和解覚書(MOR)を開始したことで知られています。現在ソンヒーズ族やエスクイマルト族として知られるレクウンゲン族に招かれ、ガイド付きのカヌーやウォーキングツアーを通じて先住民族の文化を学ぶ機会を宿泊客に提供しています。
ビヨンド グリーンは、このような革新的な取り組みが評価されて、革新者と持続可能性のリーダーを称えるTravel + Leisure 2023 Global Vision Awardで表彰されました。
「ビヨンド グリーンのメンバーは、ワールドクラスのホスピタリティと持続可能なソリューションが融合することで何が可能かを実証しています。彼らの地域へのポジティブなインパクトは、地球の保護とそこに住む人々の幸福につながる卓越したゲスト体験を通じて、自然、文化、コミュニティの支援に焦点を当てています。加盟ホテルは行動を通してインスピレーションを与え、世界中のサステナビリティ リーダーシップのハードルを常に高く設定し、サステイナブルトラベルに参加するための指針を示しながら、人々を導いています。」と、ビヨンド グリーン トラベルのサステナビリティ副社長であるニーナ・ボイズは述べています。
本レポートで使用されているすべての統計は、ビヨンド グリーン加盟ホテルを対象に実施された包括的な調査から得られた定量的・定性的データに基づいており、2021年1月から2022年12月までの67の質問が含まれています。26軒のホテルがこのアンケートに回答し、姉妹会社である持続可能なツーリズムのリーディング コンサルタント会社である、ビヨンド グリーン トラベルがレポートを執筆、共同開発しました。
グローバルインパクトレポート(英文のみ)はこちらのサイトからアクセスできます:www.staybeyondgreen.com/GIR
ビヨンドグリーンのホテルの予約はこちらから:www.StayBeyondGreen.com
ビヨンド グリーンについて
ビヨンド グリーンは、旅を善のための力として変革したいという情熱に導かれ、サステナビリティリーダーシップを発揮するホテル、リゾート、ロッジのグローバルポートフォリオを提供しています。「良いゲスト」と「良いホスト」が出会う世界をより目的意識を持って探索するために、サステナブルツーリズムの3本柱である「環境に配慮した秀でたオペレーション」、「自然と文化遺産の保護」、「地域社会の社会的・経済的な発展に貢献」を提供するというコミットメントを持つホテルのポートフォリオを提供します。加盟ホテルになるためには、グローバルなサステナブルツーリズムの基準と国連の持続可能な開発目標に沿った50以上の指標に基づいて審査が行われます。ビヨンド グリーンはプリファード ホテルズ&リゾーツ、ヒストリック ホテルズ オブ アメリカ、ヒストリック ホテルズ ワールドワイドを傘下に持つグローバルトラベルとホスピタリティブランドを運営する、ファミリー経営のプリファード トラベル グループが所有、運営するブランドで、「人々による地球のため」の真のホスピタリティの新たな体験を提案します。詳細については、www.StayBeyondGreen.comをご覧ください。
プリファード トラベル グループについて
ユベロス・ファミリーが所有し運営するプリファード トラベル グループは、プリファード ホテルズ&リゾーツ、ヒストリック ホテルズ オブ アメリカ、ヒストリック ホテルズ ワールドワイド、PTG コンサルティング、ビヨンド グリーン トラベルの親会社で、80か国において 1,100を超えるホテル、リゾートを代表するホスピタリティブランドです。デスティネーションマネージメントや観光局の業務もグローバルポートフォリオに含みます。20 か国に250人以上の経験豊富な旅行スペシャリストが在籍する同社は、ブランディング、セールス、統合マーケティング、レベニューマネジメント、包括的なデストリビューションサービスとコンサルティングを通じて、独立系ホテル、ホスピタリティ企業、そしてデスティネーションをグローバルマーケットに繋いでいます。ブランドプロミスである「Believe in Travel」を軸に、同社は「旅」が人々の生活を豊かにし、変革力とより大きな寛容性を生み出すという揺ぎない信念を持っています。詳細についてはwww.PreferredTravelGroup.comをご覧ください。
十勝毎日新聞2023/12/11 12:10
20年ぶりのグアテマラ滞在も1年半が経過した。このコラムでは毎回いろいろな思いをつらつらと書かせていただいているが、長い文章を読むのは面倒くさいという人のためにも、今回は写真を中心にグアテマラの魅力を伝えたい。今回の滞在中に訪れた土地の中から「グアテマラに来たらぜひ訪れてほしい場所ベスト10」を紹介します(選考と順位はあくまで個人の感想ですので苦情は受け付けません~)。
10位:アティトラン湖(ソロラ県)
8万4000年前の火山の噴火でできたカルデラ湖。「世界一美しい湖」とも呼ばれる。湖岸には有名な観光地パナハチェルだけでなく、美しい織物や陶器で知られる村が点在しており、バスやランチャ(ボート)で巡ると楽しい。写真は峠のカフェから撮影した雄大な風景。
9位:アンティグア・グアテマラ(サカテペケス県)
グアテマラの古都で世界遺産。あまりにも代表的観光地なのでここでは順位は控えめに。治安も良く、グアテマラの文化や食をゆっくりと満喫できる。写真は街並みとアグア火山を一望する展望台「十字架の丘」より撮影。
詳しくはこちらを参照→古都アンティグア、すてきなカフェ巡り あれから20年~再びグアテマラへ(5)
8位:リオ・ドゥルセ(イサバル県)
グアテマラ北東部、カリブ海につながるイサバル湖岸の町。夕陽が美しい湖にホテルやレストランがあり、ガリフナ族の名物料理「タパード」(海鮮のココナツスープ)など海の幸がおいしい。カリブ海の町リビングストンにもボートで行ける。写真はかつてカリブの海賊を撃退した古城サンフェリペ城。
7位:ティカル(ペテン県)
北部ペテン県の密林に広がるマヤ文明の古代遺跡で世界遺産。これもあまりに代表的なので順位は控えめに。遺跡公園内は携帯電話の電波も通じない秘境だが、中心部の神殿(ピラミッド)の頂上に上ると突然電波が入る。ピラミッドパワーか。
6位:ビオトポ・デル・ケツァール(バハ・ベラパス県)
世界一美しい鳥とされ、手塚治虫の火の鳥のモデルとも言われるグアテマラの国鳥「ケツァール」が運が良ければ観察できる自然公園。自分は20年前は何も見られず、「本当にいるのか?」という邪念を抱いていたが、このほど森の中で飛ぶ姿を拝むことができた。ケツァールは実在します! クリアな写真は撮れなかったので、上段の写真はグアテマラ自然保護地域国家評議会(CONAP)のHPより。下段はケツァールが見られるホテル。
5位:チチカステナンゴ(キチェ県)
マヤのキチェ族の文化が色濃く残る町で、マヤの聖典「ポポル・ブフ」が発見されたサント・トマス教会がある。木曜と日曜に中米最大規模と言われる民芸品(主に織物)の市場が出る。ウィピル(先住民の民族衣装)好きにはたまらない。12月のフェリア(お祭り)では伝統的な子牛の踊りやロープ一本でポールから降りるパロ・ボラドール、花火などが行われる。
4位:キリグア(イサバル県)
グアテマラを横断するモタグア川中流域の低地にあるマヤ遺跡で世界遺産。ピラミッドがそびえるティカルに対し、マヤ象形文字が刻まれた巨大石碑群が見どころ。小さな博物館もある。ティカルほど来場者は多くはないので、ゆっくりと時間を過ごして雄大な歴史を感じることができるのが魅力。ただし暑い。
3位:ハワイ(サンタ・ロサ県)
他のグアテマラ観光ガイドでは絶対にランクインしない、独断おススメの海岸リゾート(?)。本当は1位にしたかったがさすがに遠慮して3位に。7~11月は運が良ければウミガメの産卵や子ガメの放流ができる。マングローブ林ツアーもおススメだが蚊は多い。とっても暑い。
詳しくはこちらを参照→グアテマラの楽園、その名も「ハワイ」 あれから20年~再びグアテマラへ(9)
2位:ネバフ、アクル(キチェ県)
有名観光地ではないが個人的に気に入っている場所。キチェ県北部のイシル族の住む町で赤色を基調とした美しい民族衣装で知られている。ネバフの市場には常設の民芸品市場もあり、近隣の村の貴重なウィピルが集まり、織物好きにはたまらない。お隣のアクルは山間部の高原で、イタリア伝来のおいしいチーズ「ケソ・チャンコル」を製造している牧場は癒やしスポット。
アクルは、詳しくはこちらを参照→チーズのふるさと あれから20年~再びグアテマラへ(16)
1位:スニル(ケツアルテナンゴ県)
堂々の独断1位はこちらも個人的にお気に入りの温泉地。20年前から大好きな場所だったが、今回の滞在で訪れた山中の露天風呂は最高という言葉以外に見当たらない。グアテマラ第2の都市ケツアルテナンゴからはバスで30分ほどで、スニル市内や手前のアルモロンガにも個室風呂がたくさんあるけれど、そこからさらにピックアップトラックに乗って着く露天風呂にぜひ行ってほしい。途中ののどかな農村風景も最高!
ここからは惜しくもランク外、でも訪れてみてほしい場所をいくつかご紹介。
〇サン・フアン・コマラパ(チマルテナンゴ県)
ベスト10が強敵すぎてランク漏れしたが、個人的にとても好きな場所。赤い線の入った美しい織物で知られ、日曜の市場は歩くだけでも楽しい。画家の町としても知られ、墓地の外壁に描かれたグアテマラの歴史(マヤ創世記から内戦時代のつらい記憶まで)の壁画は一見の価値あり。
〇イシムチェ(チマルテナンゴ県)
中部にあるマヤ遺跡の一つ。1400年代のカクチケル王国の首都だったが、スペイン人に滅ぼされた。小さな博物館がある。ティカルに比べ規模は小さいが、遺跡が自然な状態で残され、球戯場などもあって興味深い。遺跡奥には今も使われるマヤの祭壇がある。
〇テクパン(チマルテナンゴ県)
首都から車で1時間ちょっとの高原にある町で、街道沿いにソーセージやチーズで有名でちょっと高級な雰囲気の良いレストランが点在する。「道の駅」プエブロ・レアルはゆっくり滞在するのに良い場所でコーヒーがおいしい。
〇トドス・サントス・クチュマタン(ウエウエテナンゴ県)
赤を基調とした男性の民族衣装(帽子、シャツ、ズボン、カバンの完全コーディネート!)で有名な北西部の村。ここも織物好きにはたまらない場所。11月1日の「死者の日」に行われる競馬が有名。20年前に競馬を見たが、今回は行けていないので残念ながら選外に。写真はウエウエテナンゴ市の公園で見かけたトドスおじさん、アイスを食べてるだけでも格好良い!
〇スンパンゴ(サカテペケス県)
普段は静かな村だが11月1日の「死者の日」に行われる大凧(たこ)揚げには大勢の観光客が集まる。
詳しくはこちらを参照→「死者の日」の凧揚げとアルフォナ あれから20年~再びグアテマラへ(8)
〇セムク・チャンペイ(アルタ・ベラパス県)
石灰岩でできた階段状の池が連なり、神秘的なエメラルドグリーンの風景が広がる。グアテマラを代表する自然景勝地だが、こちらも20年前に行ったきりで今回は行けていないので申し訳ないが選外に。写真はグアテマラ観光庁(INGUAT)HPより
〇ラチュア湖(アルタ・ベラパス県)
雄大な景色はアティトラン湖が有名だが、水の透明度はこちらのカルデラ湖が上。カリブ海のような澄んだ水に小さな魚たちが泳いでいる楽園。北部の町コバンからさらに車で3時間のメキシコ国境に近い場所なので行くのが大変。
○エスキプラス(チキムラ県)
黒いキリスト像で有名なカテドラルがある。巡礼地となっており1月の祭りには中米から何万人も集まるという。20年前に名物とされたド派手な帽子を買って日本に帰ったが、今回行ったら売っていなかった。流行だったのか?
〇トトニカパン(トトニカパン県)
マヤ先住民が多く暮らす普通の町を体験するならば個人的におススメなのがトトニカパン。中心部は常に大勢の人で活気があり、市場には織物や陶器などもあり楽しい。国内の都市では治安がトップレベルに良いので安心。
〇ケツアルテナンゴ(ケツアルテナンゴ県)
グアテマラ第2の都市。首都ほど治安が悪くないので歩いて都市生活を楽しめる。おいしいレストランも多く、中央公園横の地ビールが飲めるバーはお勧め。地元のパン屋さん「シェラパン」のクリームパンもおいしい。
〇グアテマラ市(グアテマラ県)
首都にも面白い場所はあるのだが、あまりに治安が悪いのでスルーする観光客が多い。旧市街の中央公園・国家宮殿は一見の価値ありで、隣の中央市場(メルカド・セントラル)は規模も大きく、民芸品も豊富で比較的安いのでお勧め。市場内は治安も良い。イシュチェル民族衣装博物館、ポポル・ブフ博物館は私立フランシスコ・マロキン大学内にあるので安心してゆっくりできる。おいしいレストランも多いが、とにかく移動時の安全は要注意。
グアテマラにはこの他にも文化的な見どころや自然景勝地がたくさんあります。日本からは遠いですが、いつか機会があればぜひ来て見てください~
現代ビジネス2023/12/11
若林 正丈 の意見
手軽で多彩な食文化、どこか懐かしさを感じる街並み――。多くの日本人にとって、台湾の魅力は「食と観光」だ。しかし、この島がたどった歴史には、あまり目を向けてこなかったのではないだろうか。その苛酷な歴史にはもちろん、日本も大きく関係している。〈短いが複雑で濃密な歴史〉が、台湾社会の「文化的な力」になっているという。
原住民のお墓」に驚く
――台湾に、日本の観光客が見逃している「歴史を感じるスポット」はありますか。
若林 本の冒頭でも紹介したのですが、芝山公園は、ぜひ行ってみてほしいですね。台北の士林区、地下鉄の芝山駅で降りて徒歩10分くらいです。
この公園には、福建省漳州(しょうしゅう)からの移住者が祖先を祀った恵済宮、同じく福建省泉州の出身者と広東から来た客家(ハッカ)などが争った「分類械闘(ぶんるいかいとう)」の犠牲者の慰霊碑、日本植民地時代に台湾住民に殺された6人の日本人学務部員の「六氏先生の墓」、さらにその襲った側を「抗日の義民」と称える紀念碑、そして、台湾に逃れた国民党政権の政治警察組織「軍統」を率いた人物の顕彰碑まであるのです。
〈公園の木陰に涼む地元の人々の表情は屈託なさそうに見えるが、開漳聖王廟が象徴する開拓と移民の歴史、そしてその背後に消えた平地の先住民族の来し方を思うとき、そして四つの石碑が示す台湾に来てはまた去り、あるいは居座る国家の痕跡のその背後を思うとき、この小さな岩山の空間に詰め込まれた歴史の濃密さには、息が詰まるようだ。〉(『台湾の歴史』p.16)
台北・芝山公園の恵済宮。若林正丈氏撮影
© 現代ビジネス
―まさに台湾の歴史が凝縮したような公園ですね。
若林 そういうところが、台湾にはあちこちにあるんですね。たとえば観光地ではありませんが、原住民の人のお墓を見ると、墓碑に漢字の名前とカタカナで民族名が書いてあることがあります。また、ローマ字で書いてあったり、日本名だったり、洗礼名があったり、名前が3種類とか最大4種類くらい並んでいたりする。初めて花蓮の公設墓地で見たときには、「ああ、こうなんだ~」と、ちょっと言葉を失う感じでした。
植民地時代も「自分たちの歴史」
――日本の統治時代が終わって、国民党の統治が始まった頃には、住民から「犬が去って、豚が来た」といわれたそうですね。
若林 あるオーストラリアのジャーナリストが、「島から逃げ出す1匹の犬(日本人)と入ってくる1匹の豚(外省人)」を描いたポスターをあちこちで目にしたと証言しています。そのポスターには「犬はうるさいが人を守ることはできる。豚は食って寝るだけだ」とあったと。しかし、だからといって、国民党政権より日本の方が良かった、近代化も進んで「いいことしてやったぜ」みたいに理解するのはおかしい。
日本の統治にやっとのことで適応して、おいしいところはおいしいなりにやっと吸収できるようになったところに、それをぶち壊す奴らがやってきた――という感じだと思うんですよね。
実際、日本は日清戦争で台湾を植民地として得たのですが、その占領の際には相当に残酷なことをやっている。7年くらいの間に3万人くらい犠牲になっているのです。当時、台湾の人口は多く見積もっても300万人ですから、人口の1パーセントです。
清朝末期の中国では、アヘン戦争や清仏戦争の中で、「団練」と呼ばれる民間の武装組織があちこちに出来ていて、台湾でも多くのコミュニティが武装化していたんですね。ですから、日本軍は、もう一度戦争をしたようなものだったのです。
――日本の台湾統治は「上手くやれていた」などと語られがちですが…。
若林 よく知られるように、現在の総統府は日本統治時代の建物ですし、最近でも、植民地時代の建物が新しくほぼ同じような形で再建されて、公共施設に使われたり、喫茶店になったりしているんですよね。神社の鳥居がもう一回建てられたとかね。
でも、それをとらえて、「台湾の人たちは日本の植民地統治を慕っているんだな」っていう風に理解をするのは、かなり感覚のずれた話だと思いますね。
私が着目してきた「中華民国台湾化」っていうのは、台湾の人たちによる「アイデンティティの見直し」なので、それは「自分たちを形作っているのは、自分たちの歴史じゃないか」っていう認識でもあるのです。そうしたものを消してしまうのではなく、「自分たちの歴史」として、残して考えようってことだと思う。まあやっぱり、アイデンティティっていうのは、新しくて金ぴかなのはダメなんですね、多少古くないと(笑)。
いずれにしろ、「植民地支配が良かった」と考えている人なんていませんよ。その中で、俺たちはこうがんばったとか、いい先生もいたとか、そういうことはいろいろあるでしょうけどね。
〈1972年の中国(中華人民共和国)との国交樹立と台湾(中華民国)との断交によって、日本の世論の場から台湾が消え去ったかのような時期があった。中国との国交樹立・台湾との断交という日本国の政治的選択が、あたかも台湾のことは知らなくてもいいという免責のお墨付きを与えたかのようであった。しかし、台湾はそこに在って引っ越すことはない。台湾は日本の南の隣人であり続け、そして、その後の目覚しい経済発展と近年の民主化で、しだいに国際社会における存在感を高めている。〉(『台湾の歴史』p17)
台湾に生まれた「悲哀」と「幸福」
――「複雑で濃密な歴史」は、現在の台湾に何ももたらしたのでしょうか。
若林 台湾島には、はるか以前から、さまざまな原住民族(先住民族)が生きていましたが、17世紀にオランダ東インド会社が初めて「国家」といえる統治機構を持ち込みました。その後、明朝の遺臣・鄭成功らの時代を経て、満州人の王朝である清朝の統治は200年におよび、19世紀末には日本の、20世紀半ばには「外省人」の支配が始まります。
わずか400年の間に、支配者がたびたび入れ替わり、さまざまな集団が移住してきたわけですが、こうした複雑さが、現在の台湾の「文化的な力」にもなっていると思うんですよ。
私が感心した李登輝氏の言葉があって、『台湾の主張』(PHP研究所、1999年)という著書に出てくるのですが、彼はかつて司馬遼太郎氏との対談で「台湾に生まれた悲哀」っていうことを言ったんですね。当時、国民党の主席で台湾総統ですから、非常に物議をかもしたわけですが、それが「悲哀の歴史をもつゆえの幸福」もあるのだという考えに変わっていったという。
つまり、台湾に生まれても、台湾のために自分では何もできない時代が続いていたわけです。支配者が次々と変わり、そのたびに動乱と悲劇が起こって、台湾人として生まれた悲哀を思わざるを得ないこともあった。でも、それはチャンスでもあったと。新たな支配者がやってくると過渡期には大変苦しいけれども、そこで新しい文化に接して、新しいものをどんどん吸収した逞しさもあって、悲劇を経過するごとに台湾は太くなるというか、強くなっているというのはあると思うんですよね。
李登輝という人を、台湾のあるジャーナリストが「西洋の知識と日本人のやり方で中国の皇帝をやっている」と評していましたが、台湾の複雑な過渡期を凝縮したような多面的な人ですね。ああいう、体力と気力があり、外省人に位負けしない覇気と教養もある人がいたっていうのは、民主化にとっては良かったんじゃないでしょうか。歴史的な評価はもう少したたないとわからないところですが。
――年が明けると、まもなく総統選挙ですが、台湾にとって総統選挙とは。
若林 1996年に第1回の総統直接選挙で李登輝氏が選出されて以来、ほぼ四半世紀が経ち、今回が8回目となります。その間に、2期8年のリズムで政権交代が起きている。東京外国語大学名誉教授の小笠原欣幸さんは、「総統選挙は〈台湾アイデンティティ〉を育む制度だ」と述べていますが、まさにその通りと思います。
新興の民主体制の定着度について、よく言われるのは「政権交代が平和的に2回起きれば『定着した』と言える」とする考え方です。それに基づくなら、台湾の民主体制はすでに定着していると見てよいのです。
問題は、今回も蔡英文政権が8年で交代するのか、ってことですね。変わってしまうと台中関係はどうなるのか、中国に近づきすぎて心配だという声もありますし。しかし、蔡英文政権の間に、習近平の圧力で台湾と断交する国が続出し、現在、台湾と国交がある国は13ヵ国しかない。もちろんいまだ国連でも承認されていない状況で、これからどうなっていくのか…。
いずれにしろ総統選挙は、「台湾独立」「中国との統一」「現状維持」という3つのベクトルの中で、「台湾のあり方」を争点とする「国民形成イベント」として、目が離せないのです。
※インタビュー前編〈「台湾有事」はすでに始まっている!?「複雑で濃密な歴史」が、中国との緊張関係を生んだ。〉もぜひお読みください。
アエラ12/12(火) 6:31配信
自民党安倍派をはじめとした主要5派閥のパーティー券裏金疑惑。
安倍派はもちろん、自民党全体を揺るがせ、岸田文雄内閣崩壊につながる可能性まで出てきた。
すでに安倍派の会計担当者や議員秘書なども東京地検特捜部の任意聴取を受けたと報じられ、大物議員に司直の手が及ぶ可能性も高い。
だが、検察は、安倍晋三内閣の長期政権下で、森友学園事件、加計学園事件、桜を見る会事件など、政権が倒れてもおかしくないスキャンダルがいくつもあったのに、いつも本丸に迫ることなく敗北を続けてきた。
また、圧力と懐柔で政権に手なずけられたマスコミも、忖度報道でそうした検察の堕落に手を貸す共犯者の役割を果たした。
それを見ていた私たち国民は、何が起きてもせいぜいトカゲの尻尾切りで終わり、巨悪は何の咎めも受けずに生き延びるということを繰り返し思い知らされた。
そこで、今回も、最初は大騒ぎしても、結局大物は逃げ切るのではないかという疑心暗鬼が先に立つという人も多いだろう。
しかし、今回は違うのではないかというのが私の見立てだ。
なぜなら、安倍元首相が死去して1年半近くが経ち、「安倍の呪縛」がようやく解け始めたからだ。これは政界だけでなく、マスコミにも検察にも当てはまる。
岸田政権はもはや死に体同然。火の粉が自分たちに降りかからないように逃げ回るのが精一杯で、検察に圧力をかける余力などない。検察はこれまでより格段に自由に動くことができる。さらに、岸田政権のマスコミ管理は、安倍政権や菅義偉政権に比べてかなり弱い。岸田政権批判も自民党の派閥批判も自由にできる雰囲気がある。
国民の間には、円安や資源高によるインフレと実質賃金の減少による生活苦の実感が広がり、政権への不満が蓄積されている。減税という人気取り政策でさえ、逆に「ふざけるな」という反応を誘発して支持率が下がるというのだから、その不満の強さがどれくらいなのかがよくわかる。
インボイス制度の導入で消費税の課税対象となる零細事業者たちが帳簿の記載をどうしたらよいのかと右往左往する中で、国会議員は入った金を帳簿に記載せずにネコババできるというのだから庶民の怒りが燃え盛っても当然だ。子供に食べさせるために食事を抜いているというシングルマザーや一円でも安いものを探してスーパーを梯子する庶民を尻目に夜な夜な裏金を使って高級レストランやバーで飲食する議員たちという図式も、さらに国民の怒りの火に油を注ぐ。
検事たちも国民の一人として同様の怒りを抱いているだろう。しかし、彼らにはそれよりもはるかに深い憤りの気持ちがある。恨みと言ってもよい。
3カ月ほど前のこと、私はある会食で旧知の検察幹部と会った。私が会話の中で、「安倍さんの時は酷かったですよね」と話を振ると、普段は温厚で、かつ、口が堅くて検察内部の話などしたことのないその検事は、「いや、あの時は酷かった、黒川さんも酷かった」と返してきた。
安倍氏だけでなく黒川弘務元東京高検検事長の名前をわざわざ出したのだ。黒川氏は、安倍氏の守護神と言われ、数々のスキャンダルを安倍氏本人に及ばぬように差配したという疑惑を持たれた人物だ。黒川氏が安倍氏の意を汲んで本来あるべき検察の捜査を捻じ曲げたことに対して、このような気持ちを抱いている検事は非常に多いはずだ。彼らは、安倍・黒川ラインのせいで地に堕ちた検察の威信を取り戻したいと思っている。いわば安倍・黒川へのリベンジである。
そう考えると、今回の疑獄のターゲットは、安倍派議員、しかも大物でなければならない。安倍氏本人が死亡し、安倍派代表は不在だ。となれば、安倍派の現事務総長である高木毅党国対委員長や松野博一官房長官と西村康稔経済産業相という事務総長経験者、さらには、萩生田光一党政調会長、世耕弘成参院幹事長らの安倍派幹部に注目が集まる。彼らが裏金づくりに関与していれば、政治資金規正法違反はもちろん、横領、背任、脱税の罪に問われる可能性がある。
政治資金収支報告書に名前がなかった寄付者の中には政府から補助金を受けたり、あるいは重要な政策変更で利益を得ようとしたりする企業などが入っているだろう。贈収賄事件に発展する可能性もある。
もちろん、検察が全ての案件に手をつけるわけにはいかない。大きな問題であればあるほど、捜査に手間と時間がかかる。検察の復活を信じ、粘り強い捜査に期待したいところだ。
ところで、私たち国民は、検察が安倍派の大物を血祭りに上げるのを見れば、喝采して溜飲を下げるだろうが、それだけで満足していてはいけない。このことは今から肝に銘じておくべきだ。
一部の議員を有罪にするだけで終われば、またほとぼりが冷めた後にこれまでと同じ自民党の金権腐敗政治が復活してしまう。それに終止符を打つためには、自民党政治を終わらせるしかない。そのためには、国民の粘り強い批判の声と息の長い野党への支援が必要となる。
心配なのは、連日この事件の報道が続くうちに、徐々に飽きる人が出てくることだ。本件を取り上げても徐々に視聴率が下がるということになれば、テレビの取り上げも減り、それがさらに視聴率を下げるという縮小スパイラルに陥る。そのうち、「まだやっているのか」ということになってニュースから消えていくかもしれない。
検察も国民の怒りが燃え盛っている中では、仮に捜査が難航しても、軽々に捜査打ち止めとはできないが、国民の関心が失われれば、その保証はない。
最近起きた数々の不祥事を思い出してほしい。
この秋以降だけでも、内閣改造から2カ月で計3人の政務官と副大臣が辞任に追い込まれた。東京地検特捜部の捜査を受けた柿沢未途議員はともかく、他の2人は説明責任を果たさず、もうニュースからは完全に消えている。
杉田水脈元総務政務官がアイヌや性的少数者に対するヘイト発言を認定されて謝罪した後に同様の発言を繰り返しても岸田首相は野放しにしたままだが、マスコミはもはや大きく取り上げなくなった。
馳浩元文部科学相がIOC関係者に1冊20万円のアルバムを官房機密費を使って配ったと堂々と発言し、安倍氏が機密費があるぞとけしかけたと暴露した大スキャンダルも、もはやマスコミの追及は終戦という雰囲気だ。
安倍氏が残した負のレガシーの一つに、「地に堕ちた倫理観」がある。「アベノリンリ」と呼んでもいいだろう。
「李下に冠を正さず」というのが、国を率いる人たちのあるべき倫理観である。悪いことをしないだけではなく、疑われるようなことも避けるという高潔さが求められるのだが、安倍氏は、これを完全に無視した。悪いことをしなければよいだろうというだけではない。これを一歩進めて、証拠さえなければ、悪いことをしてもよい、さらに、証拠があっても隠せばよいとか、もっとエスカレートして、捕まらないように検察や警察を抑えればよいという倫理観にまで堕落した。もはや倫理観とはいえないが、安倍氏はこれでモリカケサクラなどを全て乗り切った。
これを見ていた官僚も自民党政治家も右へ倣え。驚くような不祥事でも全くびくともしなくなった。これは経済界にも波及している。
安倍忖度で不祥事の本格追及をできなかったマスコミでも同様に不正義追及の力が弱まった。
そして、アベノリンリの蔓延は国民にも深刻な影響を与えている。
モリカケサクラなどでも何事もなく政権が続くという異常な事態に慣れてしまい、不正義への感度が著しく弱まったのだ。岸田政権でもそれが修復されていない。
「国民は時間が経てば、どんなにおかしなことでも忘れてしまう」
岸田首相は、そう考えている。自民党の派閥のパーティーを「当面自粛」するよう指示したというが、それこそ、「そのうち国民も関心を失うから、その時にまた始めればよい」という国民を見下した態度を象徴する。安倍氏も菅氏もそうだった。こんな政治家がトップにいる限り、国民のための政治など実現できるわけがない。
安倍派の数人の議員が捕まっても、引き続き派閥政治に変化はなく、構造的な問題は何一つ解決しない。
来年の通常国会の予算委員会開催中は再び国民の関心が盛り上がるだろうが、その後どうなるか。検察は悪人を告発はできても、政治の仕組みに手をつけることまではできない。
野党は、「政治資金パーティーの禁止」「企業団体献金の禁止」「調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)や立法事務費の使途全面公開」、さらには、「国会議員の資産、関連団体全ての口座とマイナンバーの紐付け義務化」「政治資金の収支全てのキャッシュレス化とステートメントのリアルタイム公開義務化」などの法律改正を提案し、国会の争点にすべきだ。
残念ながら、岸田首相の、時間さえ経てば国民の関心は薄れるという信念は間違いだとは言えない。これまで常にそうだったからだ。
来春、岸田首相は国賓級の待遇で訪米する予定だ。「ジョー」と「フミオ」の蜜月を演出して、アメリカ・コンプレックスの強い国民を喜ばせれば、内閣支持率が上昇に転じ解散も夢ではない、などと目論んでいるのかもしれない。そんなバカなと思うかもしれないが、杞憂とは言えない気がする。
今回の大疑獄をもってしても、「アベノリンリ」に毒された政界を根本から浄化することができなければ、私たち国民は、本当にバカなのだと言われても仕方ないだろう。
古賀茂明
https://news.yahoo.co.jp/articles/d109f7aa71adfa1e1d176a9a5591a57e43c67ce1