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<ウポポイ オルシペ>79 阿寒湖アイヌコタンを支えた人々 和人も協力、異文化交流

2023-12-02 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2023年12月1日 09:37

28日から始まった「伝統ト革新展#02」のポスター

 一人の和人女性と、アイヌが共につくりあげたコタン(アイヌ語で集落)が道内にあります。阿寒湖アイヌコタンです。

 1959年、戦後の北海道観光ブームの中、阿寒湖温泉街の一角に数軒のアイヌ民芸品を販売する店舗兼住宅ができました。当時、前田一歩園3代目園主となったばかりの前田光子さん(1912~83年)が無償で土地を貸与したのです。その後、民芸品を制作する共同作業所ができ、各地からアイヌが次々と移り住み、民芸品店が立ち並ぶ阿寒湖アイヌコタンが形作られていきました。

 前田さんはアイヌとの交流を生涯大切にし、ハポ(アイヌ語で「お母さん」)と慕われました。阿寒湖アイヌコタンには和人も移り住み、さまざまな地域から集まった人たちがルーツを超え協力して暮らすようになります。こうした環境から伝統文化を大切にしながら、異なる文化、新しい文化を受け入れる寛容さが自然と生まれたのでしょう。

 「阿寒湖ユーカラ座」という劇団ができたのは、今から50年以上前のことです。阿寒湖アイヌコタンでアイヌ文化を守ってきた「阿寒アイヌ民族文化保存会」の人々によって結成されました。劇団は、アイヌの物語に基づいた演劇「ユーカラ劇」を創作し、国内公演だけではなく、76年にはアイヌ民族として初めてパリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部とギメ東洋美術館で上演し、好評を博したといわれています。

 語られる言葉を「聞くこと」により楽しんできたアイヌの口承文芸。それを「見て」楽しめる演劇としてつくりあげたユーカラ劇。伝統文化を守りつつ新たなことにも挑戦する阿寒湖アイヌコタンの神髄が、ここにあります。

 ウポポイでは28日から「伝統ト革新展#02」と題し・・・・・

<文・池田亮子=民族共生象徴空間本部長補佐>

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/947562/


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経産大臣表彰を受賞したアイヌ工芸の木彫家 高野繁広(たかの・しげひろ)さん

2023-12-02 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2023年12月1日 09:25

 日高管内平取町二風谷地区に伝承されるアイヌ民族の工芸品「二風谷イタ」(木の盆)の振興に貢献した工芸家として本年度の経済産業大臣表彰(功労賞)を受賞した。50年にわたり腕を磨き、指導者としても頼られる存在の73歳。道内2人目となる受賞に「工芸家が認められることで、他の担い手の励みになれば」とほほ笑む。

 東京都日野市出身。高校を出て実家の電器店で働くも「東京を出て空気がきれいな所に住む」という夢があった。22歳の夏、釧路管内弟子屈町の摩周湖を目指してタンクトップに短パン姿でフェリーで釧路に渡った。所持金は底をつき、ヒッチハイクで道内を回った。

 このヒッチハイクで平取町二風谷で降ろされたのが、アイヌ文化との出合いとなった。偶然立ち寄った資料館で展示されていたマキリ(小刀)に一目ぼれした。持ち手に彫られたアイヌ文様の繊細さに魅了された。「こういうのを作りたい」。工芸家への思いが芽生えた。

 ・・・・

(杉崎萌)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/947550/


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台湾原住民の遺骨がなぜ英国の大学に カギは日本軍、アイヌ民族

2023-12-02 | 先住民族関連

毎日新聞 2023/12/1 08:00(最終更新 12/1 09:37) 有料記事 2345文字

英エディンバラ大学には、世界各地から集められた遺骨が保管されている=胡川安さん提供

 台湾原住民族(先住民族)、パイワン族の19世紀のものとみられる4人の頭骨が、遠く離れた英国の大学で見つかり、台湾側に返還された。台湾の山深い地域に暮らす彼らの頭骨が、なぜ海を渡ったのか。そのなぞを解くカギは、日本、そしてアイヌ民族にあった。【高橋咲子】

 英スコットランドにあるエディンバラ大学。歴史ある大学で11月3日、遺骨の返還式が行われた。豚の骨、ガジュマルの葉、豚肉、米酒が用意され、霊媒師が4人の霊と交信。その様子を出席者が固唾(かたず)をのんで見守った。4人全員が「家に帰りたい」と伝えたといい、それを聞いた関係者はみな涙したという。遺骨は同5日、木箱に守られて台湾桃園空港に到着。海外から台湾に原住民族の遺骨が返還された初めての例だった。

 遺骨は、エディンバラ大学解剖学博物館で保管されていた。吹き抜けの2階まで周囲を戸棚が囲んでいる。びっしりと1700人の頭骨が並ぶこの場所で、4人は迎えを待っていた。

近代日本初の海外派兵

 時は日本の明治初期にさかのぼる。

 1874年5月6日、日本軍の一団が台湾南端の海岸、現在の屏東県に到着した。その3年前、琉球船が遭難・座礁し、この屏東県の山中に住むパイワン族によって乗船者が殺害された事件があった。これを口実に行われたのが、近代日本初の海外派兵、台湾出兵だった。

 5月22日、偶発的に戦闘が起こり、双方に犠牲が出た。いわゆる「石門の戦い」だ。この時代の日本側の報告書はこう書く。「敵の首12を陣営に持ち帰ったところ、漢人がそのなかに牡丹社集落の頭目アルクの首があると言う。敵の兵器や装束もはぎとって持って帰った」。従軍した記者、米国人エドワード・ハウスは従軍記「征台紀事」のなかで、数日前の戦闘で地元民が日本兵の首を狩ったため、その仕返しに出たのだろうと推測している。

 エディンバラ大で見つかった頭骨は、この時のものとみられている。それを示す2本の論文を、台湾・中央大学の胡川安・助理教授らが見つけたのだ。遺骨返還に関わった医師で作家の陳耀昌さんは、論文を基に次のように推測する。

 頭骨は、お雇い外国人として台湾出兵に従軍した米国人ジェームズ・ワッソン(1847~1923年)から、横浜で医師として活動した米国人スチュアート・エルドリッジ(1843~1901年)へ、さらにエディンバラ大出身の動物学者で解剖学者のジョン・アンダーソン(1833~1900年)へ、そしてエディンバラ大の学長であり解剖学者だったウィリアム・ターナー(1832~1916年)の手に渡った――。

植民地支配正当化のための人骨収集

 なにがこの4人を結んだのか。

 「アイヌ民族の遺骨問題と関係者が重なっていることに驚きました」。台湾の遺骨返還について、先住民の遺骨収集と返還に詳しい北海道大学アイヌ・先住民研究センター長の加藤博文教授(先住民考古学)は話す。

 加藤教授によると、当時のエディンバラ大は世界でも指折りの外科・解剖学分野の研究機関で、世界中の先住民の遺骨を収集していた。なかでもターナーは収集の中心人物だったという。世界各地の教え子を通じて、遺骨を集めていたといい、同様に先住民族であるアイヌの人骨を贈られたという記録もある。

 19世紀後半、欧米列強は「科学的」視点から、植民地支配を正当化するために、国内や植民地で先住民をはじめとするさまざまな人骨を集めた。「先住民族がなぜ近代的な生活を送っていないのか、あるいは近代的生活に抵抗するのか。集団の優劣を説明するために、進化論的な視点から頭骨などを計測する研究が盛んでした」と加藤教授。アイヌの遺骨もその対象だった。さらに、遅れて加わった日本も追随した。

 ワッソンは明治新政府が創設した北海道開拓使から雇用され、エルドリッジも北海道開拓使の下、函館医学校で教授を務め、アイヌの矢毒に関する論文がある。アンダーソンはアイヌの民具を大規模に収集し、大英博物館などに寄贈した人物だった。

横浜・外人墓地でも墓の掘り起こし

 当時、研究者たちは、・・・・・・・・・・

https://mainichi.jp/articles/20231130/k00/00m/040/285000c


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アイヌ訴訟 「文化取り戻したい」 権利訴え 札幌地裁当事者尋問 /北海道

2023-12-02 | アイヌ民族関連

毎日新聞 2023/12/1 地方版 有料記事 517文字

 浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」が河川でのサケ捕獲は先住民族が持つ「先住権」だとして、法や規則で禁止されないことの確認を国と道に求めた訴訟の当事者尋問が30日、札幌地裁(中野琢郎裁判長)であった。同団体の差間正樹会長は「国や道は、アイヌ民族の伝統的な生活を否定している。魚を捕って生活する権利があることを認めてほしい」と訴えた。2024年2月1日に最終準備書面を陳述し、結審する予定。

 尋問は、同地裁への出廷が難しい差間さんの体調を考慮し、釧路地裁帯広支部と映像をつないで行われた。

 差間さんは「サケを捕まえ、神に感謝し、生活に利用する。先祖の生き方、生活としての文化を取り戻したい」と主張。国や道が資源保護を理由に捕獲を禁じる現状について「アイヌがかつて自由にサケを捕獲していたとき、資源が枯渇することはなかった。国や道、漁業関係者とアイヌが枯渇の原因を分析して、知恵を集めることが必要だ」と訴えた。

 国側は、・・・・・・

【金将来】

https://mainichi.jp/articles/20231201/ddl/k01/040/037000c


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ふだん使い可能なアイヌ伝統工芸品の展示販売会 札幌

2023-12-02 | アイヌ民族関連

NHK12月01日 19時02分

アイヌの伝統工芸品づくりに取り組む日高の平取町二風谷の工芸家が、メーカーなどと共同制作した工芸品を販売する催しが、札幌市で始まりました。
アイヌの工芸技術や文化を多くの人に知ってもらおうと、二風谷の工芸家たちは、4年前からメーカーなどと連携して普段使いができる工芸品を制作しています。
札幌市の地下歩行空間で1日から始まった展示販売会では、工芸品や民芸品およそ100点が販売され、ことし富山県の鋳物メーカーと共同で制作された、すず製の片口の酒器やタンブラーなども公開されました。
会場では、工芸品の制作の実演も行われ、工芸家たちが、▼木製のお盆にアイヌ伝統のうろこの文様を彫ったり、▼樹皮から作った糸を使い伝統的な技法を用いて生地を織ったりしていました。
札幌市に住む70代の女性は、「工芸品が作られる様子を初めて間近で見て感動しました」と話していました。
主催した平取町アイヌ施策推進課の阿部孝之主幹は、「興味がある作品に出会ったらぜひ手に取ってほしい」と話していました。
この展示販売会は、2日も午前11時から午後5時まで行われます。

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20231201/7000062951.html


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[広告] タウン情報 アイヌ文様のたき火台人気 室蘭・五嶋金属工業

2023-12-02 | アイヌ民族関連

室蘭民報2023/12/01 15:00室蘭

たき火台「OWL BON FIRE(コタンコロカムイ)」

熟練の技で製作
 鋼構造物の製缶や組み立ての五嶋金属工業(室蘭市東町3・31・4)が製作販売を手がける「たき火台」が全国のアウトドアファンの注目を集めている。本体は直径35センチ、高さ30センチほどの円柱型。側面にはアイヌ文様が切り抜かれ、火をくべると文様がくっきり見えるのが人気だという。
 製作は製缶技術の焼き嵌め(やきばめ)を採用。温度が上昇すると膨張するという金属の特徴を利用し、側板と真円の底版を強力に結合する。同社では金属を熟知するスタッフが一時的に膨張するタイミングを見計らい、手作業でくっつけていく。量産品とは違う精度の高い商品が出来上がる。
 同社の五島了代表取締役は「私たちの仕事は一般の人には分かりにくいが、生活に密着した技術がたくさんある。もっと身近に感じてもらいたい」と笑顔で話す。
 色はグレー・ブラウン・ブラックの3色で価格は4万円。折り畳み式の専用五徳は1万円。いずれも税別。ホームページのオンラインショップから購入可能。定休日は土・日曜・祝日。営業時間は午前8時~午後5時まで。問い合わせは電話0143・85局8455番へ。

https://www.muromin.jp/news.php?id=98152


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広尾町の魅力詰まった「まんぷくまつり」12月10日開催…あの街行く北海道

2023-12-02 | アイヌ民族関連

スポーツ報知12/1(金) 12:07配信

 広尾町の魅力が詰まったイベントが開催される。昨年に続き「広尾まんぷくまつり」が、シーサイドパーク特設会場(字野塚989番地)で10日に実施される。町内だけでなく、姉妹都市の芽室町と長崎・西海市に加え、今年は宮崎・西都市も参加。14店が並び、水産物や加工品、野菜、肉などを販売する。

 オンリーワンの品も登場する。広尾高校の教育課程の一つにフードデザインがある。履修する生徒が考案した「サンタのつぶやき」が初めて販売される。見かけはたこ焼き。生地に特産の昆布を加工した粉末を練り込み、タコの代わりにこちらも特産のツブ貝を使った。雪に見立ててかけられた山わさびがアクセントになった品を、町水産商工観光課の山田雅樹課長補佐も「広尾に来ないと食べられないものです」とPRした。

 催しも用意している。男女各10人が参加できる毛ガニ早食い競争は、参加賞として毛ガニが1杯もらえ、上位に行けばさらに多くのカニを手にできる。毛ガニやシシャモなどの特産品が当たる、特賞は2万円相当の抽選会も実施され、いずれも当日、会場で参加を受け付ける。昨年は3000人が訪れた盛況の1日に、訪れる価値は十分にある。

 ◆1日1組限定の特別サウナ設置

 1日から17日まで、期間限定で「サンタランドイルミネーションサウナ」が大丸山森林公園で開催される。移動式サウナを所持する石山商店の石山拓代表取締役が「いい景色を見ながら外気浴で整うことができたら」と企画。イルミネーションを満喫できる同公園のポンプ小屋を会場に、1日1組限定で受け付けている。セルフロウリュサウナの温度は85~110度で、水風呂はなく、零度前後の外気温で整う、貴重な経験ができる。予約や詳細は石山商店、TEL01558・2・3105、ホームページ、www.unclezaku.comへ。

 ◇広尾町 十勝総合振興局内の最南端に位置する町。1946年9月20日、町制施行。産業の柱は日本一の漁獲量を誇るシシャモなどの漁業、小麦、てんさいなどの農業。首都圏を結ぶ海の最短距離に位置する「十勝港」は十勝の海上輸送の拠点。町名はアイヌ語で石が転がるを意味する「ピ」と、砥石(といし)が取れる地の「ルイ」が変化した「ピルイ」が語源といわれる。人口は6057人(10月末日時点)。村瀬優町長。

 ◆15万個が点灯クリスマス気分

 広尾町は1984年にサンタクロースの故郷といわれるノルウェー・オスロから、日本で唯一、サンタランドとして認定された。10月下旬から年明けまで、町内各所にイルミネーションが点灯され、クリスマス気分を味わうことができる。

 広尾サンタランドがある大丸山森林公園には、15万個のイルミネーションと1万個のウッドランタンが設置されている。市街地でも市役所、消防署、バスの待合所などもライトアップされ、町内会でもイルミネーションを実施するなど町全体がクリスマス。食べて見て、12月が広尾町を訪れるのに最高の時といえる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fcc6a844d73b64c942e48e5a68de271781ed30e2


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新潮新人賞・赤松りかこさん 大江健三郎の新作がもう出ない世界を生きるために 連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#7

2023-12-02 | アイヌ民族関連

好書好日2023.12.01

赤松りかこさん=撮影・武藤奈緒美

 小説家志望のライター・清繭子が、文芸作品の公募新人賞受賞者に歯噛みしながら突撃取材する。なぜこの人は小説家になれたのか、(そして、なぜ私はなれないのか)を探求し、“小説を書く”とは、“小説家になる”とは、に迫る。今回の「小説家になった人」は、第55回新潮新人賞を「シャーマンと爆弾男」で受賞(伊良刹那さんと同時受賞)した赤松りかこさん。応募の動機には、敬愛する大江健三郎の死があったという。(文:清 繭子、写真:武藤奈緒美)

 困った。何を聞いても大江健三郎の話になってしまう――。
 新潮新人賞を受賞した赤松りかこさんのことだ。応募の際、略歴を提出するのだが、赤松さんはそこにも〇歳で大江文学と出会い、〇歳のときに大江のこの作品に感銘を受け……と〈マイ大江ヒストリー〉をぎっしり書き、編集部から「ひょっとして関係者のかた?」と聞かれたそうだ。筋金入りである。

「高校1、2年の頃、彼がノーベル文学賞を獲って、世界最高の小説ってどんなだろうと古本屋で初期作品をごっそり買って読んだのがはじまり。内容はよくわからなかったけれど、こやつは真剣だぞ、ということは伝わって。子どもの頃、夢中になったミヒャエル・エンデや松谷みよ子とも通じる誠実さを感じました」

止められなかった動物実験

 その後、獣医だった父に影響され、獣医学部へ。そこで動物実験の実習に参加した。
「羊とか引き出してきて、首をがーって切ってばらばらに解体していくんです。それを私は無残だなと思いながらも見ていることしかできなくて。なにか行動したら違ったかもしれないのに、行動しなかった自分が溜まっていくと、別の人に行動させたくなるんですよね。それで小説を書くようになりました」
 これもまた大江の影響だという。
「彼の初の長編小説『芽むしり仔撃ち』で、作中の〈僕〉は途中まで完全に大江少年そのものなんですよ。ところが、ラスト、大人たちに座敷牢に閉じ込められ、屈服を迫られるなか、はじめて〈僕〉は大江を離れて、森の中へ駈け込んでいくんです。その〈離陸〉が私には必要でした」

 初めて書いた小説は、動物を解剖する獣医学部生の話。次に書いたのは、動物の手術の解説ビデオに登場する先生に獣医学部の学生が救いを求めて話を聞きに行くという話。こちらを群像新人文学賞に送り、「タイトルの前に〇がついていた」というのでいいところまでいったのだろう。が、その後の記憶はないという。ほどなく国家試験に合格し、獣医師として働き出したのだ。忙殺される日々の中、それでも少しずつ小説を書いた。

「私にはフランスで画家をやってる弟がいるんですが、彼がすごく本読みで。私の作品を読んでは『これはこういうことが言いたいんだね』とか『この描写は勢いがあるね』とか感想をくれるんです。今でも週に2時間は電話します。チェコ語の翻訳者だった母も元気だった頃はよく感想をくれました。母は、読み聞かせる絵本にお眼鏡に適わない文章があると紙に書き直して貼るような人。私の文学的素養はみな、この母から。ペンネームの〈赤松〉は母の旧姓なんです」

新しい人よ眼ざめよ

 獣医をしながら趣味で小説。身近によい読者もいて、それで十分だと思っていたが、2023年3月、赤松さんの世界がひっくり返った。大江が亡くなったのだ。
「もう地の底くらい落ち込んで……。犬の耳の穴を見ても涙が出るし、手術をしていても涙が出るし。あ、手術はちゃんとやりますよ。20年やってるんでそこは手が勝手に動いてくれるんですけど……。若い同僚からは『大江健三郎って東大出身だったんですね』と言われ、そ、それだけ……う、うすい、ああ、尾崎真理子さん(※大江研究で知られる)と思うさま語り合いたい! と、尾崎さんの研究室はどこか探したりなんかして。その時、私がまだ読んでない彼の作品は短編3本。その3つを読んでしまったらもうあとは何もないのだと思うと……」

 悲嘆にくれる彼女に友人や弟はこう言った。
「あなたが大江健三郎の小説を継いで書いていったらいいじゃない」「あなたは生きてて大江は死んでるんだから、生きてるあなたが書くしかないでしょ」

 それが3月20日ごろのこと。応募するなら大江が審査員を務めたこともあり、大江の初期作品のほとんどを出している「新潮」だと的を絞った。応募締め切りは3月31日。これまで書き溜めた作品の中から3つを送ると、なんと3つとも予選を通過。その中から「シャーマンと爆弾男」が栄冠に輝いた。私なら自分の才能に浮かれてしまうところだが……。

「自分がだめな人間だということを知り尽くしていますからね。動物病院をやっていると、ご家庭の事情に立ち入ることや、死生観に接することが多々あるんです。世界ってね、心豊かな人間の集まりなんですよ。野良猫のために毎日夜中2時に餌をやりにいく人がいたりして。自分はそれが見えやすい形になっているけど、本当はすべての人が生きることで表現をしている。私なんて、なんてことない」

 受賞作の着想はどこから?
「昔はアイヌの〈熊送り〉のように動物の命を刈り取ることに対する作法やまじないがありました。それが他の命を奪う大きな矛盾を乗り越えるための精神基盤になっていた。でも今は、そんなものは一切ない中で、ただ家畜を押し込めて殺す。私が原住民やシャーマンに惹かれる理由です。現代にシャーマンがいたら、自然の声が聞けたなら、土は、水は、風は、何を語るのだろう、と」

 多忙な獣医生活の中、いつ小説に向かっていたのだろう。
「スマホもテレビもない家なので、ほかにやることもないんです。Wi-Fiも必要な時だけ実家から借り、テレビが見たい時は銭湯に行きます。というのも、学生時代、格ゲー(格闘ゲーム)にハマって大会まで出ちゃって(笑)。ネットやテレビがあったら自分がだめになるのがわかっていたので」

 診察後、21時に夕食を食べ、チェロの練習をし、深夜0時から2時過ぎまで小説を書いて、翌朝は8時に起きる。「シャーマンと爆弾男」の執筆時には、友人と2人、夜な夜な川沿いを2時間歩いたり、半年間、真っ暗な浴室で風呂に浸かって水を感じたりした。そうして凝(こご)ってくるものを小説に書き、寝かせ、また書き直す……完成までに2年をかけた。なんと豊かな書き方だろう。ただ、大江を継ぐと決めて世に出た今、それも変わるのだろうか。

〈小説家になる〉とは戦争を止めること

 受賞インタビューに気になる言葉があった。

「資本主義の市場へ新たな商品を投下するつもりはありません。主業以外で同時代人から搾取するのは間違っている」(「新潮 2023年11月号」より)

 これは、ひょっとして小説を売るつもりはないということ?

「そこなんですよね。小説は書きたいですが、それがお金になることにすごく抵抗があって。脱成長を唱える経済思想家の斎藤幸平さんに共感していて、彼は、社会をよくするには公園や水、森といったお金に変換できないものをお金でやりとりしてはいけないと言ってるんです。でも残念ながら、そう書いてある本を、出版し、市場にのせている。そこに矛盾があるんですよね。私もそうなんです。本当だったら『聞いた人が幸せになれる話を思いついたから聞いてくれるか』って広場で呼びかけて、いいと思った人からパンと水をもらうのが理想の形なんですよ。それなのに現実には、広告を打って、きれいな表紙を付けて、受賞作っていう煽り文句をつけて、余分な価値を付けないと広められない。どうすればいいのか、その答えはまだ出ていません。受賞でいただいたお金は動物実験を廃止する会や愛護団体に寄付しましたが……。ひとつのヒントとして、やはり大江の姿があると思います。彼は有名になったことをフルに利用して、少しでも世界が希望に満ちたものになるように奮闘した。文学と社会活動を共存させました」

 最近、赤松さんは4回ほどけんかの仲裁をしたそうだ。戦争を止めるために自分ができることは、まず目の前の争いを止めることではないかと考えたらしい。
 仲裁のコツは、①間に割って入ってお互いが見えないようにすること、②両者の意見を聞かないこと、③大きな権力(警察)を呼ばないこと、④両者にとってなんの損得もない人間が介入することの4つだそう。「仲裁屋さんになるのもいいなぁ」とわりと本気な感じで口にする。ちょ、ちょっと待って。赤松さんにとって「小説家になる」って?

「小説で世界から兵器をなくすこと、環境汚染を止めること。じゃないと名乗れない。仕事とは世の中をよくするためのもの。今の私は獣医という仕事でのみしか、それを果たせません。私はまだ小説家ではなく、獣医です」

 気を抜くとすぐに大江の話になるインタビューの中で、赤松さんは彼の最後の小説「晩年様式集(イン・レイト・スタイル)」の中の言葉を教えてくれた。

〈私は生き直すことができない。しかし私らは生き直すことができる。〉

 私にはその言葉が、大江健三郎から若き熱き継承者・赤松りかこへのメッセージに感じられてならなかった。

赤松りかこ(あかまつ・りかこ)

1977年6月、東京都世田谷区に生まれる。同区在住。日大二高、獣医大学を卒業後、臨床獣医師を20年。2023年「シャーマンと爆弾男」で第55回新潮新人賞を受賞。大江健三郎とはご近所だったが、ついぞ出会うことはなかった。

【インフォメーション】

新潮新人賞

新潮社が主催する新人賞。これまで中村文則、田中慎弥、小山田浩子、佐藤厚志、小池水音などが受賞。次回、第56回の選考委員は、今回と同じ上田岳弘、大沢信亮、小山田浩子、金原ひとみ、又吉直樹の5名。
【賞】特製記念ブロンズ楯、50万円 【枚数】400字詰原稿用紙で250枚以内(短篇も可) 【締切】2024年3月31日(当日消印有効)
そのほか詳細はホームページで https://www.shinchosha.co.jp/prizes/shinjinsho/

https://book.asahi.com/article/15065706


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実写版『ゴールデンカムイ』の“綺麗すぎな衣装”が「コスプレ」と波紋

2023-12-02 | アイヌ民族関連

女性自身2023年12月01日 06時00分

実写版『ゴールデンカムイ』の“綺麗すぎな衣装”が「コスプレ」と波紋の画像

’24年1月19日に公開予定の映画『ゴールデンカムイ』。漫画家・野田サトル氏による同名コミックを原作とし、明治後期の北海道を舞台に莫大な埋蔵金の争奪バトルを繰り広げるストーリーだ。

主人公・杉元佐一役を山崎賢人(29)が、アシリパ役を山田杏奈(22)が演じるほか、鶴見篤四郎役を玉木宏(43)、土方歳三役を舘ひろし(73)が務めるなど錚々たる俳優陣が脇を固めている。

続々とキャストや予告動画が解禁されるなか、11月6日には厳選された場面カットも公式サイトで一挙公開。雪原で佇む杉元とアシリパの姿などがおさめられており、衣装が綺麗な状態で写っているものもいくつかあった。

しかし、原作ファンの中にはこの衣装の綺麗さに“リアリティに欠けている”と感じた人もいるようで……。一部SNSではこんな声が上がっている。

《実写版金カム、俳優もアクションもいい感じなのに「メイクや衣装が綺麗すぎる」って点だけで期待値6割くらい持っていかれてる》

《金カムの実写のキャスティング不安だったけど、今度は衣装が新品すぎて胡散臭そうで違う方向に不安になってるよ》

《実写ゴールデンカムイ、面白そうなんだけどやっぱり普段から着てない感バリバリの小綺麗な衣装が気になる。汚したり皺つけたり出来なかったんだろうか》

《実写版ゴールデンカムイ頑張ってるようで衣装がいつもの新品コスプレでガン萎えなんだよな》

だがそのいっぽうで、他の作品を例に挙げて理解を示す声も。

《首見て思ったんだけど、どうする家康とかゴールデンカムイとか、衣装がある程度綺麗じゃないと今度は泥やら垢やらで汚れてるのに血で汚れていないのが物凄く不自然になり、血を描写するとなるとR指定がかかるので、綺麗な衣装はなるべくみんなが見れるようにっていう配慮なのかもしれないな…》

《ゴールデンカムイの衣装の件、確かに新品感は目立つけど、その時代の縫い方とパーツで一から作ったっていう点はめちゃくちゃ良いと思いました!》

累計発行部数は2500万部を突破し、アニメ化もされた超人気漫画の『ゴールデンカムイ』。それゆえ実写化決定時から、誰がキャストに起用されるか注目を集めていた。

「今年8月にキャストが解禁され、ファンの間ではおおむね“イメージ通り”との反響でした。ただ杉元役の山崎さんは、数々の名作漫画の実写映画化で主演を務めてきたため賛否を呼ぶことに。ですが公開されたティザービジュアルには、再現度の高さを称える声が多数上がっていました。

時代背景や戦闘シーンが多いことから、衣服に汚れなどがついている方がリアリティを感じることができるでしょう。しかし激しい残酷描写が目立つと、鑑賞年齢を制限するR指定を受けてしまう可能性も。

また俳優たちが身に纏う衣装には、作者の野田さんの思いが込められているようです。本映画は9月にXの公式アカウントで、《#アシリパの衣装は #野田サトル先生から 「原作ではこのようにしているが、 実写ではこうして欲しい」といった提案も》と明かしていました。アシリパの鉢巻きや手甲も、アイヌ工芸家の方が刺繡を施しているそうです。リアリティの追求よりも、少しでも多くの人にアイヌ文化や歴史に触れてもらいたいとの思いがあるのかもしれません」(映画ライター)

公開まで残すところあと1カ月半あまり。衣装にまで注目が集まるのは、多くのファンが期待しているということだろう。

https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12268-2677401/


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北米のカリブーが半分以下に、「ただごとではない」謎の激減、一体何が起きている?

2023-12-02 | 先住民族関連

ナショナルジオグラフィック12/1(金) 16:30配信

99%も減った絶滅寸前の群れも、およそ20年間で約500万頭から200万頭に

「ウェスタン・アークティック」と呼ばれるカリブーの群れ。夏は蚊に刺されないよう、風が強い山腹に集まる。近年、著しく頭数が減っているが、原因はわかっていない。(PHOTOGRAPH BYKATIE ORLINSKY)

 何千年もの間、大群をなして北米を移動していたカリブー(トナカイ)の姿が消えようとしている。

ギャラリー:どこに消えた?北米のカリブー

 1990年代末から2018年にかけて、カリブーの生息数は約500万頭から200万頭まで、およそ56%減った。その後もカナダとアラスカ州にいる約13の主要な群れの大半で頭数が減り続けた。少なくとも「バサースト」と呼ばれる群れは2年以内に絶滅するおそれがある。この大規模な生息数の減少の要因については、専門家の間でも一致した見解はない。

「要因が一つだけなら、すでに解明されていると思いますよ」と、カナダの生物学者ヤン・アダムチェウスキーは言う。「でも、カリブーに影響を及ぼしている可能性がある要因を列挙すると、とても長大なリストになるのに、それらに対してとれる対策を挙げると、とても短いリストになってしまうのです」

 アダムチェウスキーはカナダ・ノースウェスト準州の政府所属の学者だ。この準州には、少なくとも1年のうちの一時期だけ滞在する移動性のツンドラカリブーの群れが七つある。その一つが「バサースト」だ。この群れの頭数は、1986年には47万2000頭だったが、そこから徐々に減り始め、ついには破滅的な状況に転じ、2021年までに99%も減ってしまった。

 この減り方はただごとではない。一体何が起きているのかとアダムチェウスキーに聞くと、彼はため息をついた。気候変動が原因だという声をよく聞くが、気候変動は漠然とした用語で、その影響を詳しく分析するのは難しいという。

 気候変動より、もっと身近で、具体的な要因の方が目を向けやすいと、アダムチェウスキーは言う。たとえば、オオカミは悪者に仕立てやすい。猟師の乱獲が原因だと主張する人もいる。そして、ノースウェスト準州の人口の半分近くを占め、カリブー減少の影響をもろに受ける先住民の間では、しばしば鉱山開発が最大の脅威と見なされる。

 ノースウェスト準州の経済は鉱山に大きく依存している。そのため、アダムチェウスキーによれば、準州当局といくつかの先住民族は、採掘を停止する以外の方法で、バサーストの頭数激減を止める手立てを探ろうとしたという。カリブー猟の規制については激しい論争が起きたが、2015年に当局は、地元の先住民の村々の支持を得て禁止に踏み切った。また、飛行機から銃で撃つなどして、オオカミの数を減らす試みも行われた。だがそれでも、バサーストの頭数は減り続けた。

※ナショナル ジオグラフィック日本版12月号特集「カリブーはどこへ行った?」より抜粋。

文=ニール・シェイ(ジャーナリスト)

https://news.yahoo.co.jp/articles/b9371662db75070a10a66bd36d6471d0806b8f61


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木質ペレット】カナダの森林専門家や環境NGOら、経産省に輸入バイオマス支援中止を求める

2023-12-02 | 先住民族関連

CTI2023年12月01日

 国際環境NGO FoE Japanによると、日本のバイオマス発電促進による燃料需要の拡大により、カナダの原生林の伐採が進んでいる実状を訴えるために来日したカナダの森林専門家らが、2023年11月29日、輸入燃料を使ったバイオマス発電の支援中止を求める公開書簡を経済産業省に提出した。書簡には、日本、カナダ、アメリカ、EU、インドネシア、マレーシア、オランダ、ガーナ、チリなどの世界各国から19の環境NGOが連名した。
 公開書簡を提出したのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州で活動する森林攪乱生態学者のミシェル・コノリー氏ら。コノリー氏は、先住民族コミュニティとともに野生生物と気候に配慮した森林施業の構築に取り組むかたわら、環境NGO「コンサベーション・ノース」を運営している。
 コノリー氏は、「木質ペレットの生産のため、ブリティッシュコロンビア州の豊かな原生林が伐採されている。カリブー(トナカイの仲間)を含む多様な野生生物の生息地が脅かされている。人工林への転換が進められているが、もとの天然林とはまったく別のものである。“持続可能”という言葉とかけ離れた実態に目を向けてほしい」と語った。
 また、同席したビクトリア在住のジャーナリストで資源政策アナリストのベン・パーフィット氏は、「カナダで生産された木質ペレットの55%は日本に輸出している。豊かな森林を切りつくし、森林資源が枯渇したため、伐採速度は減少してきている。森林を保護すべきだという市民の声も高まってきている。日本企業がこのままカナダの木質ペレットに依存し続けることは、リスクが高い」と指摘した。
 固定価格買取制度が導入された2012年以降、日本の木質ペレットの輸入量は急増している。2022年、日本はカナダから130万トン以上の木質ペレットを輸入した。
 書簡では、「燃料需要の拡大は森林の減少・劣化の原因となり、生物多様性を脅かすのみならず、森林や土壌の炭素貯留を減少させる」とし、気候や森林を破壊する輸入バイオマス燃料を使うバイオマス発電への支援を中止することなどを求めている。

https://www.ctiweb.co.jp/jp/news/8461-2023-12-01-foe.html


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COP28がドバイで開幕、気候変動対策の加速を呼びかけ

2023-12-02 | 先住民族関連

アラブニュース01 Dec 2023 01:12:06 GMT9

ドバイ:国連気候変動会議のためドバイに集まった8万人を超える代表団に、最大200人の世界的指導者が加わり、各国政府は地球温暖化の主因である化石燃料の段階的廃止に初めて合意するかどうかの交渉に備える。

COP28議長国は、サミット前日に、極端な洪水や持続的な干ばつなどの気候災害に見舞われている貧困国の損失や損害をカバーするための新しい国連基金の概要を正式に採択するよう、各国に提案した。

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COP28、気候災害基金の取り決めを正式承認

ドバイ:国連気候サミット(COP28)に出席した各国は木曜日、新たな気候災害基金に関する取り決めを正式に承認した。

この協定はCOP28の開会式後に採択され、参加者からはスタンディングオベーションが起こった。

先進国と途上国の代表は、今年の交渉で丹念に協定を作り上げた。この協定は、干ばつ、洪水、海面上昇など気候変動による被害への脆弱な国々の対処を支援するための基金を発足させるものである。

国連気象機関は、2023年は観測史上最も暑い年になると発表、今後更なる気候の極端化を警告している

ドバイ:国連気象機関は木曜日、2023年が記録上最も暑い年になることがほぼ確実であるとし、将来、洪水、山火事、氷河融解、熱波の増加を示唆する憂慮すべき傾向を警告した。

世界気象機関(WMO)はまた、2015年のパリ協定で定められた今世紀末の目標気温を10分の1度下回る、産業革命以前より1.4度上昇した平均気温になると警告した。

WMO事務総長は、今年初めにエルニーニョが発生したことで、来年の平均気温がパリ協定で設定された1.5℃を上回る可能性があると述べた。

動画:COP28開会式:国連気候変動会議

https://www.youtube.com/watch?v=kJhgEnRI4HU

気候変動に関する政府間パネルのジム・スキア議長は、「人間の活動は、何世紀、何千年もの間、前例のない規模の気候変動を引き起こしてきた」と発言した。

「すべてのセクターにおいて、即時かつ大幅な排出削減を実現しなければ、パリ協定の目標を達成することはできない。

我々の評価では、温室効果ガスの排出を削減し、気候変動に適応するための複数の選択肢を特定した。しかし、これらの選択肢は、政策や資金調達の拡大を通じて、規模を拡大し、主流化する必要がある。

IPCCの議長国として、科学界は、科学に基づく気候変動対策の形成において、COP28の成果を支援するために利用可能な資源を活用する態勢を整えている。しかし最後に、科学は行動に代わるものではないことを思い出してほしい」

10:51 グリニッジ標準時

「今日、私たちは、人類の気候変動対策の旅路において、かなり異なる立場にいる。私たちは小さな一歩を踏み出している」UNFCCC事務局長のサイモン・スチエル氏は、COP28の開幕式で次のように発言した。

「我々は気候変動対策を実行に移さなければならない。今年は人類にとって史上最も暑い年となった。多くの恐ろしい記録が破られた。私たちは人々の命と生活を犠牲にしているのです」

「私たちが知っている化石燃料時代の終焉を告げなければ、私たちは自らの終焉を迎えることとなる。それは、私たちは人々の命で支払うことを選ぶということです。この移行が公正なものでなければ、移行は実現しません。それはつまり、国内および国家間の公正を意味します。社会全体で利益を共有すること。女性、先住民、若者など、多様な人々が平等に移行から恩恵を受ける機会を得られるようにすることです」

「2024年、各国は初の隔年透明性報告書を提出します。そして、2025年の早い時期に、各国が新たな国別決定拠出金を提出しなければならないことを、これを最初の公式通知としましょう」

「科学によれば、1.5℃の制限を突破する前に地球の排出量への対応能力を使い果たすまで、あと6年ほどしかありません」とUNFCCC事務局長は述べた。

「これはこれまでで最大規模のCOPですが、COPに出席したからといって、その年の気候変動枠に入れるわけではありません。首のバッジを名誉のバッジに変え、何百万もの人々のためのライフベルトにしてください。気候変動対策を加速させましょう」

10:22 グリニッジ標準時

COP28議長に指名されたスルターン・アル・ジャーベル氏は、開会スピーチで、国連気候サミットで石油会社だけでなく、参加者にも協力するよう促した。同議長は、「このCOPでは可能な限り最も野心的なグローバル・ストックテイクを確実に実施しなければならない」と述べた。

同代表は、COP28は、グローバルサウスが開発と気候変動対策のどちらかを選択する必要がないよう、資金を確保することを約束すると強調した。

アル・ジャーベル氏は、各国の石油会社が率先して行動を起こしたことを評価する一方、「それだけでは十分ではない」と述べた。「彼らはもっとできるはずだ。すべての国、すべての部門、そして私たち一人ひとりが緊急の役割を担っているのです」

国営アブダビ国営石油会社のトップでもあるアル・ジャーベル氏は、「私たちは、緩和、適応、そして資金を含む実施手段を一つの傘の下に集めることができる」と述べた。

「このCOPを新しい考え方でスタートさせ、異なる考え方を採用し、柔軟性を持つようお願いする。最も野心的なグローバル・ストックテイクを確実に行うこと。このCOPを、勢いに乗って緩和を最大化するCOPにしたい」と述べた。

同代表は、「化石燃料の役割」は気候変動対策の一部でなければならないと強調した。UAE高官によれば、「いかなる問題もテーブルから外すことはできない」とし、「今回のCOPを、損失と損害に関する1000億ドルの約束を実現するCOPにしよう」と付け加えた。

石油・ガス会社と積極的に関わるという大胆な選択をした大統領府です。私たちは多くの厳しい議論をしてきました。それは容易なことではありませんでした。しかし今日、これらの企業の多くが、初めて2030年までにメタン排出ゼロを約束しました。そして今、多くの国営石油会社が初めてネットゼロの2050年目標を採択しました」とアル・ジャーベル氏はスピーチで述べた。

「これからの2週間は簡単ではありません。私たちの仕事は交渉文書だけでなく、人々の生活を改善することなのです」

10:16グリニッジ標準時

COP27議長であるシュクリー氏は、「先進国からの気候変動資金が増加するどころか、ニーズの高まりや途上国での資金調達の増加に対して、実際には減少している」と述べた。

ドバイで開催されたCOP28気候サミットは木曜日、ガザ紛争の犠牲者への黙祷で幕を開けた。

昨年エジプトで開催されたCOPの議長を務めたエジプト外相のサーミフ・シュクリー氏は、最近亡くなった2人の気候外交官を偲び、「ガザ紛争で亡くなったすべての市民と同様に」「黙祷を捧げる」よう代表団に呼びかけた。

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より貧しい国々が長年要求してきた損害賠償基金に関する早期の突破口は、2週間のサミット期間中になされるべき他の合意へむけて勢いを注ぐ助けとなるだろう。

国連とホスト国であるUAEは、COP28の協議は2015年のパリ以来最も重要なものになるとしている。

科学者たちは、世界はこれらの目標達成の軌道に乗っておらず、気候変動がもたらす最も悲惨な影響を回避するためには、各国がより早く、より深い排出削減を行う必要があると述べている。

中心的な焦点は、地球温暖化抑制に向けた世界の限定的な進捗状況の棚卸しである。

国連気候チーフのサイモン・スティル氏は水曜日、「今、私たちは、あるべき姿に到達するために飛躍的な進歩を遂げるべきところで、赤ちゃん返りをしている」と述べた。

COP28気候変動会議は、化石燃料の完全な「段階的廃止」を目指すべきだと、アントニオ・グテーレス国連事務総長は先に述べ、人類の現在の進行具合では「完全な災害」になると警告した。

グテーレス事務総長は、「私は明らかに、合理的な時間的枠組みを伴った(段階的な)廃止を含む文言に強く賛成する」と述べた。

気候変動は、アフリカと世界の他の地域における人間の健康に対する最大の脅威であると、アフリカ大陸の公衆衛生機関のトップは述べた。

アフリカ疾病予防管理センターのジャン・カセヤ事務局長は、ドバイで開催されるCOP28気候サミットに向かう際、このリスクを軽減することが最優先課題であると語った。

https://www.arabnews.jp/article/business/article_105943/


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「狼の化粧をした男の子が水たまりから出てきて…」このイメージに潜む意味は? 大人たちが見失った“子供時代の美しさ”

2023-12-02 | 先住民族関連

文春オンライン12/02 06:10 

 テクノロジーが発展した「太陽の王国」と、自然との結びつきを重んじる「月の王国」。敵対する2カ国から魔法の森にやってきたのは、秘密エージェントのクラエとブルーオ。巨人によって脅かされている魔法の森を守るため、少年たちは、渋々手を結び、森を救う謎の存在「ペルリンプス」を探し始める。長編アニメーション映画『ペルリンプスと秘密の森』は、前作『父を探して』がアカデミー賞にノミネートされるなど世界中で絶賛されたブラジルのアレ・アブレウ監督の最新作。製作に約7年もの時間がかかったという本作はどのように生まれたのか。

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「前作の製作が終わってすぐに『ペルリンプス』の最初のイメージが浮かんできました。狼の化粧をした男の子が水たまりから出てきて、化粧が崩れてぐしゃぐしゃになった顔のまま森の中を歩き出す。私の頭に浮かんできたこのイメージの中に何が潜んでいるのか、それを探すことからすべては始まりました。やがて、これは1人の少年が子供の世界から出て大人になろうとしている瞬間だとわかってきた。それからは様々なイメージのピースを組み合わせながら物語を作っていきました」

 驚くのは画面いっぱいに溢れる多彩な色と豊かな音。セリフを排し極めてシンプルなドローイングによって作り上げた前作『父を探して』と比べ、その作風は大きく変化したように思える。

「『ペルリンプス』は『父を探して』の対極にあるような作品だと思います。前作は一つのイメージから出発し結末を決めないままほぼ1人で絵コンテを描き進めていきましたが、今回は予め物語をしっかり練り上げ、チームのみんなと一緒に製作していきました。もちろんクラエとブルーオの造形をはじめ、今回も主な画面設計は自分で手がけてはいますが、製作体制や色彩の数、費用の面では大きく飛躍しました。『父を探して』の成功が新たな道を拓いてくれたんだと思います」

 森を救おうと奔走する少年たちの冒険はやがて壮大な物語へと発展していく。巨人に破壊される美しき森。戦争によって引き裂かれる子供たち。背景にはアマゾンの森林破壊や世界各地で起きている戦争への警告があるのだろうか。

「実のところ、戦争や環境破壊をテーマにした映画を作ろうとは考えていませんでした。でもブラジル人として、アマゾンの破壊や先住民との関係性といった問題が常に身近にあるのは確かですし、世界の状況が表現の中に現れてくるのはごく自然なことですよね。

 考えていたのは、森とは子供時代そのものだということ。大人になるにつれ幼い頃の記憶はどんどん薄れていく。ここで描かれる戦争は子供時代の美しさを見失ってしまった大人の姿を表すものであり、物語の根底には、失われたものに対する郷愁(サウダージ)があります。そしてそれは、常にアーティストとしての私を引っ張っていってくれる大事な主題でもある。前作にもやはり共通する部分があると思います」

 子供だけでなく、かつて子供だった人々のための作品でもあるのだ。

「親子で対話をするにはぴったりの映画でしょうね。子供たちには『本当に大事なものを忘れないで』という思いを、大人たちには、ここに登場するある人のように『もう一度森に戻ってきて』というメッセージをこめています」

Alê Abreu/1971年、サンパウロ生まれ。1990年から短編アニメーションの製作を始め、2013年の長編映画『父を探して』がアヌシー国際アニメーション映画祭最高賞を受賞、また南米の長編アニメとして初めてアカデミー賞にノミネートされ大きな注目を集めた。

INFORMATION

映画『ペルリンプスと秘密の森』
(12月1日公開)
https://child-film.com/perlimps/

(月永 理絵/週刊文春 2023年12月7日号)

https://article.auone.jp/detail/1/5/9/136_9_r_20231202_1701465081763314


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