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北海道新聞2024年12月26日 4:00
少年は病弱で高校生活が1週間しか続かなかった。親に頼み、千葉・房総の農家で1年間くらす。東京育ちの彼はすっかり丈夫になり、初めて触れる山村の人々の生活に目を見開く▼この<異文化体験>が出発点となった。文化人類学者の川田順造さん。一人で思索するより、いろいろな生活をする他人と交わることで人間の生き方を探求する―。生涯を貫く研究のスタイルである▼渡仏し、さらに西アフリカの旧モシ王国で長く調査する。土地の人々のくらしに敬意を払い、<相手を驚かしたり乱したりしない最小限の装備でひっそり>と。のちに国内のすみずみに足を運び、北海道でもアイヌ民族の工芸や函館の和船といった伝統的なものづくりを研究した▼・・・・・・