(米国)ニューヨーク発
ジェトロ 2025年01月07日
米国のジョー・バイデン大統領は1月6日、米国の沿岸部において、新規の石油・ガス掘削を禁止する声明を発出した。対象となる海域は、東海岸全域、メキシコ湾東部、西海岸3州(ワシントン、オレゴン、カリフォルニア)の太平洋沿岸、およびアラスカ州北部ベーリング海の一部で、総面積は約6億2,500万エーカー(約253万平方キロメートル)に及ぶ。
バイデン政権が発表したファクトシートによると、今回の大統領令は1953年施行の「大陸棚土地法」第12条(a)項に基づいており、具体的に次の3地域が保護対象となる。
- 東部大西洋沿岸およびメキシコ湾東部:カナダ国境からフロリダ州南端に至る約3億3,400万エーカー(約135万平方キロメートル)。この海域では現在、石油・ガスの採掘権は設定されていない。
- 太平洋沿岸:カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州沖の約2億5,000万エーカー(約101万平方キロメートル)。カリフォルニア州は1969年から州管轄水域で新規の石油・ガス採掘権付与を停止している。連邦水域での石油・ガス採掘権の売却は1984年が最後。
- アラスカ州北部ベーリング海:先住民族の生活圏である約4,400万エーカー(約18万平方キロメートル)でクジラやセイウチなどの海洋生物の重要な回遊ルートとなっている。
米国の石油供給量の約15%を占めるメキシコ湾中部・西部は、今回の禁止措置の対象外となった。ただし、エネルギーコンサルティング会社クリアビュー・エナジー・パートナーズによると、今回の措置により米国の大陸棚における未発見の経済的に採掘可能な石油・ガス資源の約40%が影響を受ける。
この措置により、バイデン政権下での保護区域は累計で6億7,000万エーカー(約271万平方キロメートル)となり、ファクトシートによると、歴代大統領で最大規模となった。1月20日に就任予定のドナルド・トランプ次期大統領は、この決定を「米国民に対する政治的報復」と批判し、即座に禁止措置を解除する意向を示している。しかし、2019年の連邦裁判所判決では、バラク・オバマ元大統領が同法に基づいて実施した掘削禁止措置について、議会による法改正なしには撤回できないとの判断が示されている。
(藤田ゆり)
(米国)
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