20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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異界へ

2013年08月20日 | Weblog

           

 先日、従兄弟が今年の2月に亡くなったことを知りました。

 家族だけで密葬を行い、従兄弟の奥さんの意向で親戚には知らされず、先日の叔母の一周忌の法要の折り親戚中がはじめて知り、驚いたようです。

 従兄弟の中で一番年長で、71歳でした。心臓がお悪かったようです。それも知りませんでした。

 最近の動向で小耳に挟んでいたのは、弓道で段をとられていたこと・・・。

 

 お互いの親戚を束ねていた親たちが亡くなると、親戚もだんだん縁遠くなっていくものなのかと、少しさみしい気持ちがします。

 従兄弟は、とてもノーブルな雰囲気を漂わせた人で、少年時代はきりっとしたお顔立ちをしていました。

 夏になると、母に手をひかれ、八百屋さんでスイカを買って、毎年従兄弟たちの家を訪ねたものです。

 藤棚と、庭の隅には釣瓶竿のついた古井戸のある家でした。

 伯母手作りの海苔巻きやいなり寿司をご馳走になり、ひとしきりたつと、私たちは庭に飛び出します。

 そして従兄弟たちと、古井戸に石を投げ、深い穴を見つめました。するとしばしの時間が経ち「ポチャン!」とくぐもった音がします。

「この井戸が深いってことだよ」

 異界を覗かされたような、ぞわぞわした気持ちを抱えながら、従兄弟たちの顔を見たことを思い出します。

 そんなときも、その年長の従兄弟は、私たちから少しだけ距離をおき、小さい弟や妹そして同じく従兄弟である私や弟を見ていました。

 古井戸に落ちないように、用心深く見守りながら。

 

 従兄弟はいま、ほんものの、冥界という異界へ行ってしまいました。

 実感はまったくありませんが・・、ただただご冥福をお祈りしたいと思います。

コメント (2)
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