20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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水辺の哲学者たち

2015年10月12日 | Weblog

           

 水辺の止まり木に横一列に並び、カラスたちが思索しています。

 

 空が、青いな。

 空気が、澄んでいるな。

 今日は、なにを食べようか。

 これから、どこへ旅に出ようか。

 別れた彼女は、どうしているだろう。

 ほら、みてごらん。

 葉裏が日に照らされて、ビー玉みたいにひかってるよ。

 あの繁みには、なにかいいことがありそうだ。

 

「あんたたち~」

 そんな静けさを破ったのは、水辺のむこうの、知らないおばさんの声。

「ねぇ、なんで、わざわざ一列になんかに並んでるの? なにか相談? のってあげようか?」

 なんだよ、秋の感傷に浸っていたのにさ。

「それにさ、あんたたちは、思いっきり自由なのよ。なのにそんな軍隊みたいに、なんで並んでるの!

 はいはい。

 せっかく、俺たち哲学者になっていたのにな。

  それに、適当に相づちを打つのって、メンドー。

 あのぉ、そんなの、俺たちの勝手なんですけどぉ。

 水辺の哲学者たちは、たちまち荒くれ者になると、

「アホー」と、おばさんにひと鳴きしました。

 おしっこをひっかけようとしたヤツもいました。

 まてまてと、だれかにとめられましたが。

「さてと・・・、餌でも探しに行くか」

 そして、それぞれの方向に飛び立っていきました。

「また、集まろうぜ、ここに」

「うん、いつかな」

 そう言い合いながら。

(ちなみに、ここに登場するおばさんは、私ではありません。ここにお引っ越ししてきて、そういうちょっとお節介で心優しいおばさんに、おりおりに出会います。お買い物をしていたら、見知らぬ人に声をかけられたり、「選挙にいかなきゃだめよ」と、お母さんみたいな目でいわれたり・・・。きっと、あのおばさんたちは、カラスにもお節介をやいているような気がします。台風のあとは鳥たちの様子を見に、まっさきに自宅から走るらしいですから。そういうつぶやきを、公園を歩いていると耳にします。そのつど、なんだかすごく温かな気持ちになります。下町という風土が、他者に対して無関心ではない、おばさんたちを生み出しているのでしょうか?) 

コメント
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