『秘密のゴンズイクラブ』(広瀬寿子・国土社)
友人の作家、広瀬寿子さんの新刊です。
広瀬さんの作品はいつ拝読しても、その端正な文体に、唸らされます。
この作品もやはり期待を裏切らず、無駄のない文体に、ぐいぐい引き込まれて読まされてしまいました。
秀逸だったのが、主人公の少年が夏の間、預けられる宮野一郎さんという父さんの、子どもの頃の親友の描出。
小柄な宮野さんは、古ぼけた家に一人で暮らしているひとです。宮野さんは、となり町の研究所に毎日かよって考古学の研究をしているのです。
二千五百年から三千年くらい前の人が、土器で煮た、キビのオコゲの研究のために。
その設定だけでも度肝を抜かれますが、広瀬さんという作家は、奇をてらったところで勝負をかける人ではありません。
物語は、宮野さんの子ども時代。父さんの子ども時代。そして、霧の深い町で知り合った、「キツネ」と「小ブネ」、そしてふたりの少年が作っている秘密結社に加わり、「トール」が名乗ることになった「野ガラス」、その三人の不思議な冒険です。
霧の深い町。秘密結社。
そして、日々の暮らしを共に生きる、誠実で実直な大人の宮野さん。宮野さんの部屋にあった、「キツネ」と「小ブネ」の写真。
なにより、宮野さんの存在そのものが、この物語に光と影を放っています。
また、ゴンズイの木も、とても効果的に使われています。
それらが、この物語のなかで、どう絡んでいくのか・・・。
ぜひお読みになってご確認ください。
ラスト、泣きました。
やっぱり広瀬さんって、すごい!
『一年一組ミウの絵日記』(吉田純子・PHP研究所)
『大ドロボー五十五えもん』シリーズの吉田さんのはじめての幼年童話です。
五十五えもんの、発想の豊かさにも唸らされましたが、この作品でも、吉田さんは、実にユニークなキャラクターを作り上げています。
とにかく、ぴちぴちと物語がはじけています。
このはじけ感が、吉田純子さんだと思います。
なにに対しても、感謝の歌を作る子ども。
大根踊りをするおとな。
犬になってわんわんダイエットをしているおとな。
ユニークな人間をかかせたら、吉田純子さんの右にでる人はいないかもしれません。
とにかく、読むとちょっぴり元気になって、うれしい気持ちになれるご本です。
元気のお裾分けをいただきたい人は、ぜひお読みになってください。