先週の「山の辺の道」で大和の秋を、いたく気に入った丸さんから「紅葉が美しい手頃な山は?」とのお尋ねがありました。ちょうど一年ぶりに信貴山に行くつもりだったので、お誘いして急に一緒に行くことになりました。

10時、信貴山駐車場に車を入れて石段を登ります。はや参道の燃えるような紅葉が出迎えてくれました。(Photo by Mau-san)

絵馬堂の古い扁額などをみて、大寅の前で記念撮影して赤門を潜ります。境内はどこも紅葉や黄葉で美しく彩られています。

千手院へ下り、銭亀さんや夢叶う堂にお参りした後、なが~~いトラさんの胴体の中でお砂踏みをしました。胴体の両側に顔があり、どちらが入り「口」ということはありません。

石段を登って参道に帰り朝護孫寺本堂にお詣り。七福神の一神・毘沙門天王をお祀りしています。「朝護孫子寺」の名は、命運上人が醍醐天皇の勅命により毘沙門天に病気平癒を祈願したところ、たちまちに快癒したことによって「朝廟安穏・守護国土・子孫長久の祈願所」として賜った勅号です。

舞台作りの本堂からは東に斑鳩の町の向こうに大和青垣の山々、南には金剛・葛城と素晴らしい景色を眺めることができました。写真は本堂の階段を下る途中からの玉蔵院方面を見たところです。帰りに、ゆっくり参詣することにして山頂にある「空鉢護法堂」への参道に入ります。

大きく折り返しながら赤い鳥居が続く参道を登っていきます。お参りを終えて下ってくる人と挨拶しながら登り、しだいに汗ばんでくる頃、奥ノ院への分岐に着きました。

すぐ上の台地は「信貴山城址」。天正5年、松永久長が織田信長の大軍を相手に50日にわたる籠城戦を繰り広げたところです。山頂は寺域で立ち入れないためか、ここの木の枝に何枚か山名板が下がっていました。

山頂の空鉢護法堂では、信者の方が熱心にお祈りをしていました。台湾出身で大阪にお住いの若い女性も真剣にお参りしていました。お堂前の展望台のベンチで一休みして展望を楽しみます。曇り空の去年と打って変わって今日は素晴らしい快晴で、正面に二上山から葛城・金剛と続く山並みが一直線に並んで見えます。その左には大和平野の東を区切る連山や台高、右には遠く大峰の山々も霞んで素晴らしい展望でした。

奥ノ院分岐に引き返して高安山へ向かいます。急な坂道の途中で奥ノ院への道と別れ、少し笹原の水平道を歩きます。この辺りから細い道の両側にはイノシシの掘ったらしい跡がずっと続きます。弁財天の滝への道を分け掘割状の道を登ったり、雑木林の中を歩いたりしていくと右手に「高安城倉庫群址」があります。『日本書紀に出てくる高安城の城は「シロ」ではなく「キ」と読む。白村江の戦で敗れた天智天皇が唐・新羅軍の来攻に備えて全国に築かせた防衛のための砦の一つが「倭国の高安城」である。ここは1958年に発見され、礎石は倉庫の址と言われたが調査の結果、少し年代が下がるようで確証はない。』(去年の変愚院BLOG)今日は生駒山や矢田丘陵がきれいに見えました。ここまで大阪側から来たハイカー一人に出会っただけの、静かな道でした。

元の道に帰り、しばらく緩やかに登ると信貴生駒スカイラインを横断して向側の山腹を登ります。大阪側に入るとさっきまでの青空が嘘のように曇り空になりました。しばらくで「一元の宮」前の広場に出ました。右に行くと信貴生駒縦走路の十三峠への道になります。まっすぐ広くなった道を行くと「高安山気象レーダー観測所」を経て西信貴ケーブル・高安山駅への道。一元宮の囲いの後ろから急坂を登ると、サザンカの大木が美しい花を咲かせていました。以前より少し切り開かれて広くなった高安山山頂(487.4m)で記念写真を撮ってレーダー観測所へ。

ここで昼食のつもりが、今日は車が入って工事中だったので少し先のケーブル駅の方へ行ってみました。河内平野を見下しながら落ち葉を踏んで緩く下っていくと「開運橋」があり、下を潜って荒れた道を下ると信貴山下駅に出る標識がありました。その横に「イノブタに注意」の標識。先ほどから気になっていた「道荒らし」の正体はこの動物の仕業だったようです。どこから逃げ出して住み付いたのでしょうか?

開運橋から引き返して一元宮前の石垣に腰を下して昼食。何人かのハイカーが行き来します。じっとしていると寒くなり、食後のコーヒーで温まりました。同じ道をイノブタ談義をしながら引き返します。今掘ったばかりのような生々しい跡もありました。最後の急坂を上って奥ノ院分岐から、鳥居の道を下ります。信貴山に帰ると不思議なほどまた真っ青な空に帰りました。本堂近くまで降りると朝より参詣客の数がぐんと増えて賑わっていました。登りでお詣りし残した境内を巡ります。どこも紅葉の真っ盛り。これは変愚院の大好きな撮影スポット。弁天堂前の宝寿橋の上から見た池に写った紅葉です。

十三重塔へ下る途中の「千手の銀杏」。枝振りが千手観音の手に似ています。また銀杏が仏の合掌した手に似ているので「仏手白果」といいます。中国原産で日本ではここと高千穂神社にしかないそうです。

帰りは仁王門を出て千体地蔵を拝み、前の「曽我の家」でお土産の「寅饅頭」を買って駐車場に帰りました。ちょうど見頃の紅葉の山道を歩き、顔も赤く染まるような楽しい一日でした。