室堂~御前峰~御池巡り
廊下を行き来する人の気配で時計を見るとまだ3時半である。トイレを済ませ、雨具を着て水とカメラ、貴重品だけも持って外に出る。真っ暗で星も見えない。ヘッドライトの灯りが点々と山頂に向かって動いている。
4時、出発。長い列に加わって歩くうちに太鼓の音が聞こえ、日の出に間に合うか気は逸るが足は重く、若い人に追われがちになる。下駄を履いた神官とお付きの人、巫女らしい女性の3人が、声をかけて行列の横をすり抜けて登っていく。天地の境・青石は黒い影だったが、高天原を過ぎると次第に明るくなり、ジグザグの道を登る先行の人影も見えるようになる。三輪さんは体調がよくなく丸さんが付き添って途中から下山する。二人で登り続けるが勾配は更に強まり、足どりが遅れがちになる。
頂上の一角に着いた時は濃い霧の中で風もあり、寒さで手がかじかむほどだった。すでにお日の出の時間は数分過ぎている。大勢の人に交じって待つうちに霧が流れ、美しい橙色に染まった雲の間から真紅の真円が姿を現した。
期せずして感動のどよめきが起こり、やがて万歳三唱の声が暁を震わせた。
展望図台の前から見ると、白山神社奥宮社では神主さんが祝詞をあげ、お祓いを済ませたところだった。しばらく神妙に頭を下げて祝詞を聞いて、三角点に行く。
記念写真を撮る長い行列に並んで、後ろの人にシャッターを押してもらう。またガスが出てきて、殆どの人は登拝道を下って行った。頂上滞在1時間で予定通り御池巡りに出発する。
しばらくガスの稜線を北へ進み、風化した岩の道を急降下する。御宝庫を左に過ぎると、大汝峰を正面に、これから辿る尾根道の左に油ヶ池、右に紺屋が池を見下ろす絶好の展望地に出た。ここからジグザグの急坂を下るうちに、男女のペア、5人のグループと前後するようになる。
火口の底に降り立って、先ほどの2つの池を間近に見て少し登る。
雲が切れて剣岳が正面に、その左に白馬岳から続く後立山連峰の姿がくっきりと現れた。
1042年の白山爆発による代表的な火口湖・翠ヶ池は青々とした湖面と残雪のコントラストが美しかった。
満々と水をたたえた血の池を見て、千蛇ヶ池に来る。
白山開山の祖・泰澄が千匹の蛇を閉じ込め雪で蓋をしたという伝説の池は、多年性の雪渓で湖面全体が真っ白に覆われていた。ここで室堂に行く近道があるが、もう来ることが出来ないだろう私たちは、少し遠回りになるが「お花畑コース」に入る。
チングルマ(1)、コイワカガミ(2)、アオノツガザクラ(3)
ハクサンコザクラ(1)、オオヒョウタンボク(2)、キヌガサソウ(3)、ゴゼンタチバナ(4)などの花をカメラに収めながら、
最後は、見渡す限りのクロユリの大群落を見収めて室堂に帰る。山頂から約1時間半、楽しいハイキングだった。