1961年8月23日は、当時高校三年生で私の母校の山岳部に所属していた9歳違いの弟と、烏帽子から槍、常念、大滝へ縦走中でした。以下は山日記からの抜粋です。
20日。夜、おなじみの「ちくま」で大阪発。21日。七倉でバスを降り、軌道上の道を歩き、濁小屋で朝食。ブナ立尾根の登りはキビシイ。「ゴン太落し」などというところがあり、「これより 4時間」の道標に音をあげる。何度か休憩を重ねて、ついに三角点のある地点に出て昼食。
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稜線に出る頃、夕立となり、頂上はあきらめて小屋に入る。
22日 快調に三ツ岳へ登り、野口五郎への気持ちよい縦走路を飛ばす。
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ガスで何も見えないのが残念。槍も見えない。野口五郎から赤岳が近くなると、小うるさいピークが続く。鷲羽への登りはガラガラの石の上をわずかだがキツイ。
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(↑鷲羽岳の下り・三俣小屋を見下ろす)
予定の時間より大分早く着いたので、捲き道もあったが頂上へ登る。この登りで雨となる。せっかくの頂上もさっぱり。懐かしい双六小屋はやっぱりサービスが良かった。腹一杯喰って、満員の二階で寝る。
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23日。双六の小屋の前から、燕から餓鬼へ続く稜線が見渡せる。樅沢岳に登り、穂高から槍への大パノラマを楽しみ、西鎌尾根をよい調子で歩く。
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(千丈沢乗越より剣岳)
槍への登りも、千丈沢乗越から2ピッチで軽く山荘に着く。荷物を小屋の前に置き頂上へ。
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穂高の稜線からガスが湧いてきたが、昨日歩いてきた裏銀座、薬師、遠く立山、剣まで一望の下に見渡せる。いつまでも見飽きぬ展望に別れを告げ、宿泊予定地の西岳小屋に向かう。西岳への登りは下から見上げると相当なものだが、取りついてみるとそうでもない。ようやく小屋へ着いて今夜の宿を頼むと、出てきた眼光鈍いオッサンは「まだ日が高いからオテンショまで行け」という。仕方なく歩き出す牛首の麓の大天井ヒュッテに転がり込む。夕食のチキンライスは肉と卵が入っていて、珍しいことで感激する。
24日 大天井岳頂上へ往復するがガスで何も見えず、仕方なく小屋を発つ。横通岳までは全く申し分のよいハイウェイ。調子よく飛ばす。
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(東天井岳より常念岳)
いったん尾根を絡んで、すぐ横通岳を捲き、ちょっと登ると常念乗越へぐんぐん下る。乗越からかなり激しい登りを終えて、頂上かと思うと、次々に小さいピークが出てくる。穂高から見ると大きいだけで女性的な感じがしたが、なかなかどうして岩石の積み重なった堂々とした山容である。ガスで展望の効かぬのは残念。岩の上をぐんぐん心配なほど下る。小さいピークを一つ越すと、また下り、じめじめした森林帯の中を過ぎて、もう一つピークらしい所を越す。小さいコルのような所で休む。ここから蝶槍への登りは案外に簡単だった。槍を左に見て、すぐ蝶のだだっ広い頂上。ガスで何も見えないので、運が悪いとあきらめて小屋へ下る。
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小屋は新築で、時間が早いのでだれもいない。ゆっくり寝転んで手紙など書き、久しぶりにゆっくりする。夕食後、ガスが晴れたのですぐ近くの展望台に出かける。穂高の稜線に夕日が沈む。槍の穂先に次第に黄昏がせまる。すばらしかった。
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小屋は新築で、時間が早いのでだれもいない。ゆっくり寝転んで手紙など書き、久しぶりにゆっくりする。夕食後、ガスが晴れたのですぐ近くの展望台に出かける。穂高の稜線に夕日が沈む。槍の穂先に次第に黄昏がせまる。すばらしかった。
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(蝶槍と常念岳)
25日 晴。朝食前に展望台に登る。安曇野の雲海の上に登る荘厳なご来光。モルゲンロートに輝く穂高の峰々。この夏の最後を飾るにふさわしい夜明けだ!
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大滝山の稜線では折からのガスにはっきりとブロッケンまで見た。小屋の側の池にはサンショウウォがウジョウジョ。頂上で槍を背に記念写真を撮り、徳沢に下る。
明神池
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