*このシリーズは山行報告ではなく、私のこれまで登った奈良の山をエリアごとに、民話や伝説も加えて随筆風にご紹介しています。季節を変えたものや、かなり古いもの写真も含んでいます。コース状況は刻々変化しますので、山行の際は最新の情報を入手されますようお願いします。*
(136)荒神岳(こうじんたけ) <1280m> 「かまどの神をまつる神社の奥の院」
野迫川村立里。三角点峰は立里(たちり)荒神社を祀る北の峰(1240m)の南、600mの地点にあり、立里荒神社の奥の院にあたる峯で「古荒神」と呼ばれる。立里荒神への舗装林道から見ると、整った三角錐の美しい山容である。
荒神社は「かまど」の火を守る火産霊神(ほむすびのみこと)を祀り、「立里の荒神さん」として信仰されている。縁起では弘法大師空海が高野山を開山する際に勧請したと伝える古刹である。駐車場に車を置き、古い鳥居の並ぶ急な石段道を登る。10分近くで参詣道はほぼ直角に左に折れるが、その角が広場になりベンチも置いてある。スギ林の向こうに目指す荒神岳が見えるが、まずは三宝荒神社本殿に参詣する。本殿はこの北峰山頂に位置し、稜線伝いに最高峰の荒神岳に行けそうだが、一帯は社地の囲いがあって入ることができない。
先の広場にに降り、ヒノキ植林の踏み跡を下ってみる。勾配が弱まるところで山腹を捲く道があり、植林の中を辿るとジグザグの登りで稜線にでて、あとはだらだらと緩やかな道になる。クヌギ、ナラ、カエデなどの落ち葉を踏んで行く。広葉樹林に大きなブナやヒメシャラが混じるようになり、少し傾斜が強まると三等三角点のある山頂だった。展望はないがミヤコザサに囲まれた明るい感じの頂上である。帰りは荒神社のあるピークを正面に見ながら下る。右手に延びる尾根のピークに電波塔、その下に駐車場の建物が見える。往路で稜線にでたところの手前に、右に山腹を捲いて下る道を辿る。一部、崩壊して細いところもあるが間もなく車道に飛び出して、3分ほど下ると駐車場だった。