時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

荒神

2019-03-26 | 読書
元禄太平の世の半ば
東北の小藩の山村が
一夜にして壊滅状態となる
隣り合う二藩
永津野藩と香山藩の反目
香山藩のお家騒動
奇異な風土病など
様々な事情の交錯するこの土地に
その化け物
荒神は現れた

永津野藩主・竜崎高持の側近
御側番方衆筆頭・曽谷弾正と
その妹・朱音
朱音を慕う村人と
永津藩
名賀村に滞在している
榊田宗栄
香山藩内
仁谷村に暮らす少年・蓑吉
香山藩藩主の小姓
小日向直弥
相模藩御抱絵師・菊地圓秀
山のふもとに生きる北の人びとは
突如訪れた‘災い’に
何を思い
いかに立ち向かうのか

そして
化け物の正体とは一体何なのか



2018年2月
NHK BSプレミアム枠の
スペシャルドラマとして
ドラマ化された作品です
読もう読もうと
思いながら
長らく
手元に置いたままに
なっておりました

突如
現れた荒神は
永津野藩と香山藩の対立に
端を発する存在でした
香山に根付き
雨乞いや豊作を祈願する
‘祈る者’によって
つくりだされた存在
術は失敗に終わり
‘つちみかど’になり損ねた
醜い土の塊として
大平良山に埋められたが
土に帰ることなく
山の力を吸い込み生まれた
その身に
果たされることのなかった呪詛
永津野竜崎憎しの念を抱き…


荒神を倒すために
荒神を生み出した
‘祈る者’
瓜生柏原氏の血を引く朱音が
自らの背中に呪文を纏い
その命を贄として差し出した!

朱音を飲み込んだ荒神の体から
黒光りする鱗が消えていく
尻尾が消え鉤爪も消える
飛び出した脚の関節は平らになり
両足がつるりと伸びる
両手の五本指も伸びる
残ったのは



わたくしは兄と
間違いをいたしました
荒神‘つちみかどさま’は
兄とわたくしの生家
柏原の術が生み出したものでございます
あれは柏原の裔
兄とわたくしと
同じ血を継いだもの
あの怪物は
かつて
市ノ介だった頃の弾正と朱音の子…

朱音よ
これが儂ら兄妹の運命か!
ならば
言祝ごう
朱音よ
儂と共に
この山を総べよう
いいや
天下までも総べてやろうぞ


荒神は
朱音の兄である弾正に食らいつき
呑み込んだ

朱音の善良により
一度は
ひとかたになった
荒神が
弾正を呑み込んだことで
再び
その体に黒い鱗を
纏いはじめる

荒神の中で
善良と邪悪がもがく

最終的に
宗栄や蓑吉
蓑吉のじっちゃをはじめとする
永津野の番士らによって
倒された荒神は
灰となる

山の霊力によって蘇るなら
イメージ的には
『もののけ姫」
ダイダラボッチなんだけどなぁ~

元が
呪詛から作り出された
醜き土の塊だし
神すべてが
‘善’ではないから
展開的にはあり?

ファンタジー小説?
怪奇小説と時代小説の融合?
幅広い
ジャンルに精通していると言うか
宮部みゆき女史の
新たなジャンルの開拓精神
挑戦的な意思を感じる
作品です