同志社大学アーモスト館と本
明治時代末、日本に来て多くの西洋建築を設計し、メンソレータムを国内販売したことで知られるウィリアム・メレル・ヴォーリズの来日から亡くなるまでに題材を取った小説。
ヴォーリズが日本での大半を過ごした滋賀県近江八幡市に、去年は二度も旅行したので、面白く読みました。
旅行記はこちら。
https://blog.goo.ne.jp/kawashima134/e/b072e7473c489d37b2a3d787f414f1eb
初めは英語教師として来日、課外授業で聖書を教えたことでわずか二年で免職。そこからヴォーリズの奮闘が始まる。と言っても小説なので、小説として読まなければならないけど、百年以上の前のこと、ノンフィクションとうたっても著者の取捨選択はあるので、大した違いはないのかも。
話し八分目に楽しみながら読めばいいのだと思う。
初めは現場監督を任され、コストを掛けずに資材の調達ができることが評判になり、設計も引き受けるようになる。
おりしも時代は大正時代から第一次大戦後の好況期、西洋建築の需要増加の波にうまく乗れたのだろう。経営の才能もとてもある人だと思う。
設計したのは1,600もあるそうで、皆様も必ずやどこかで一棟くらいは見ているはずと思います。
私が見たのは軽井沢テニスクラブのクラブハウスと小さな教会。これは戦時中、外国人が半ば強制的に移住させられた時の作品。
京都では三条大橋袂の東華菜館、同志社大学のアーモスト館、芦屋の…名前は忘れたけど、朝ドラあさが来たの主人公の娘の住んだ洋館、福岡の牧師館、それから近江八幡の建物の数々など。
どれも親しみの持てる建物。軽井沢の教会や近江八幡の暮らしていた家、学校などは中に入るとほっとして、建物の優しい雰囲気に包まれる心地よさがありました。
日本社会に馴染もうと本人も苦労したでしょうし、戦争中、とうとう妻の養子に入る形で日本人になります。両親もアメリカから呼び寄せて面倒見ています。
この小説の中ではマッカーサーに天皇制存続を助言したり、昭和天皇と長々と話し合う場面もあります。小説には小説的結構が必要と著者は考えているのでしょうが、無理にまとめにかからなくても私はいいと思います。
昭和天皇に向かって私は屋根をかける人だったというくだり、小説だから何書いてもいいけれど、???と思わせてはいけませんと思います。これって某放送局の大河ドラマで主役が時代を動かしているような不自然さと同じ。
まあそこのところを除くと面白く読めました。建築と商売と二つの才能があり、建物には不思議な安らぎがある。結局は人が好きで、建物の中で人が幸せに暮らすことを願った人なのだと思う。
ヴォーリズさん、ありがとう~