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「神の子どもたちはみな踊る」 村上春樹

2019-11-01 | 読書

村上春樹の小説は、「ねじまき鳥クロニクル」を最後に読んでいなかった。30年近く前?

今回、久しぶりに読んで、大袈裟でない簡潔な表現力と、言葉で表さない奥まで読者に想像させる優れた小説の書き手だと、再認識した。

表現される人間関係は、日本的湿潤の対極にある。逆に言えば、地縁血縁の中で、自分に与えられた役割をこなして一生を終える人生ではなく、人が寄り集まった都会で、自分を探しながら、わずかな人と心を通わせながら、社会の片隅で生きていく今の時代の人の心に寄りそう昨品集だと思う。

短編小説が6編、背景には阪神淡路大震災を感じる。自分の立つ世界は不安定なもので、それを知った後も人は希望を探して生きて行くしかない。そういう読み方でいいのかな。小説の読み方は人それぞれでいいんですが。

あれからまた大きな地震があった。津波もあった。世界はいつも不安な要素で充満している。しかし、人は人の絆の中でだけ生きていける。

絆、絆とあの当時よく言われたけれど、人との関係、自分の生き方、大きな災厄はそれを見直すきっかけになり、より深く人生を生きられるのかなと思った。

アイロンのある風景、タイランド、蜂蜜パイなどが特に印象に残った。

タイランドの中で、飛行機に乗った病理医が例の「お客様の中にドクターはいらっしゃいませんか」と言う場面で名乗り出る。これは現実にはなかなかないと思う。

病理医は直接患者さんを診ないし、どの科にせよ、医療器具も薬品もない機内では、なかなか難しい問題です。

ヨーロッパに行くとき、一度その場面がありましたが、その人は軽症で、名乗り出たドクターもいたようですが、大事にならずに済んだようでした。よかった、よかった。

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