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著者は1930年広島生まれ、東大工学部を卒業、上智大学で教えていたと、この文庫本の紹介にある。
今年でちょうど90歳、2007年の八刷なので、今もご存命かどうか。
年取って体が不自由になった時の暮らしの知恵いろいろ。親本は1999年、筑摩書房刊。だから約20年前の情報と言うことになる。
読む本が無くなって、自分の本棚探すうち発掘。私も今より10歳以上若かったけど、こんな本読んでいたんだと感慨しみじみ。
理系の学者らしい分かりやすく過不足ない書き方、再び面白く読みました。
その時にはピンとこなかった内容も身近に感じられるし、逆にこの20年間で変わったこともある。
介護保険は始まったばかり、著者は64歳で骨粗しょう症から圧迫骨折を起し、3か月ほぼ自宅でねたきりのあと何とか体を動かせるまでに回復したそうです。その経験から、家の中を色々に変える話は体験者だけに説得力があった。
まだ充分に介護保険が認知されていなかった時代に、積極的に利用するよう勧めている。
若い人が持っている携帯電話は便利だから年寄りも使おうとか、メールだと相手に迷惑かけないとか時代を感じさせるのも面白かった。当時は電車の中で通話しても咎められなかったらしい。
介護保険で介護用品借りたり、家のリフォームしたりと、まだまだこの時代には広く認知されてなかったのだと思う。
参考になったのはバッグを軽く。中身含めて500gに収まるよう著者はしているそうで、この私も重くて硬いバッグ、普段は持ち歩かないようになった。
家のリフォームは姑様で体験済み。本人は一割負担、残りは介護保険から出るので低額のはずが、見積もり取ったら、夫が材料買って自分でつけた方が安いことが分かり、さっさとつけてしまいました。躯体がコンクリートなので、高くなるのかもしれず、他のお宅のことはわかりませんが。
介護専用の材料ではなく、ホームセンターで木材買い、取り付けは強力な接着剤で。
廊下や階段はこれでよくなったのですが、結局部屋の中で、ふわふわしたコタツ敷につまずいて大腿骨骨折、それから階段を下りて行くようにいろいろな事が悪くなりました。
部屋の手すりは壁際の本棚に取り付けていたのですが、本人はベッドから部屋の出口までの最短距離を歩いていました。
机なんか並べて取りついて歩いてもらえばと私がいくら言っても夫は聞かなかったのです。自分の親がそこまで衰えていると思いたくなかったのでしょう。
やかんの湯をかぶって、冬で厚着していたので大事にはなりませんでしたが、火傷したともあります。
ガスストーブの上に餅焼き網を取り付けて(なくなった姑様の工作)、冬はいつも大きなやかんで湯が沸いていました。危ないとケアマネさんに注意され、私も反対したのですが、これまた夫が大丈夫と高をくくってていたら、よろけて手をついたとか。
その頃は一人で生活、一人で調理もしていたけど、危ないことは前もってやめてもらうべきでしたね。もっと強く言えばよかったと、この本読んでもう一度反省しました。
小さな段差、床に敷いた摩擦の多いもの、ストーブややかんは怪我の元。引き取って我が家で面倒見ればよかったのですが、そこまでなかなか決心がつかなかった。気丈な人だったので、息子の家で遠慮するのも潔しとしなかったのです。想像ですが。
へりくだって、人に助けを求める気持ちも大切とこの本にもありますが、結局は最後はそうですね。
昨日、施設を覗いた夫によると、ご飯こぼしながら手づかみで食べていたそうです。施設では手がかかるので、そうなっても自分で食べさせるようで、夫は「お腹すいたら人間どうやっても食べる」と淡々としていました。
あの姑様がと思うと寂しいけど、長生きすれは誰もが行く道。それでも生きているのはそういう運命だから。いつか私もそうなるかも。