面白かった。今年に読んだ本の中では「暁の宇品」に次いで面白く読んだ。
何よりも展開がスリリングで、上野公園でふと知り合った喜和子さんという老女の一生をみんなで謎を解いていくのが一つの物語としてあり、もう一つは明治の初め、西洋にならって日本で初めての図書館、湯島の聖堂につくられた書籍(しょじゃく)館から現在の国会図書館までの歴史が語られる。
歴史は単なる通史ではなく、図書館に心があるならば時代の変遷、図書館の危機、出入りする人たちの姿など、面白い読み物になっている。
語り手はフリーライターでのちに作家になる私。子ども図書館ができてその取材に行き喜和子さんと知り合う。
喜和子さんは独り暮らしの老女、自由に生きてかつ物知り。図書館の小説を書きたいと言いながら、書きあぐね、私に描くようにと勧める。
喜和子さんの周りには、愛人だった元大学教授、女装趣味の芸大生、ハンサムなホームレス、古本屋の主人、と個性的で多士済々な人が集まっている。
しばらく会わずに古い長屋を訪ねると建物は消滅していて、つてを頼って老人ホームにいることが分かり訪ねて行く。
「としょかんのこじ」・・・喜和子さんは子供の頃に読んだ童話を探していて、そこに子供時代、家を出て東京に出てくるまでの前半生の秘密がある。後半では性格のきつい娘に自立心旺盛の孫娘が出て来て、喜和子さんの終戦(敗戦)を挟んだ、知られざる数年間が次第に明らかになる。
戦後すぐの上野で、二人の復員兵と暮らしていた喜和子さん、一人は女装して女役のセックスワーカー、そのあたりの猥雑さが、とてもよく書けているのはこの作家の大いなる技。直木賞の「小さなおうち」も戦中の東京の暮らしがリアルに再現されていた。
封建的な婚家を逃げ出して、図書館の中に夢と自由があるという子供のころの童話を求める後半生の生き方はすっきりとして共感できる。人生に何が大切かと言えば、見栄や体裁ではなく、人に心を開き、好きなことをして自分が幸せになり、周りも幸せにする、そのことを喜和子さんは身をもって体現していた・・・と、私なりに強引にまとめてみました。
帝国図書館に出入りする人もよく書けているけれど、中でも9日間で仕上げた戦後日本国憲法の草案、その中の女性の権利条項の部分を担当した22歳のアメリカ女性の話は、よかった。アメリカでも出来てなかった民主的な条文、日本女性は彼女に感謝しないといけないけど、ほとんど知られていないんてすよね。名前はべアテ・シロタ。
最後は幼い喜和子が、預けられた親戚に居づらくて上野の図書館前まで逃げて来て、復員兵に拾われる場面で終わる。
ストーリーが大変によくできていると思った。そして、中島さんの小説の中では立場、階層、年齢を超えて人が集まって反発したり、理解したりする場面が私は特に好きです。風通しがよくて、人間っていいものだなあと思わされる場面。
全然関係ないけど、20年以上前のスカーフ、夫に頼んでオークション出したらすぐ売れたそうでびっくり。
一時、流行りましたよね、このタイプ。
手放す前に一度使えばよかったかなと思ったけどそれも詮無いこと。せめて画像をば。
四隅に楽器があって、ギリシャ神話みたいな人物がいて、蔦、樫、オリーブなど。
うーーーむ、はっきりした柄がこの顔にはもう合わない。
20年くらい、押し入れの、壁と衣装ケースの間の隙間に、箱に入れて突っ込んでいた。
紺と緑の組み合わせは嫌いだったけど、オレンジはシックで好きだった。
フランス人って、本来は派手な色をシックにするのが得意。日本の伝統的な色名では何というのでしょうか。