神戸港で私らは客船「みどり丸」へ
乗船しました。今から思うと日本の
神戸港と満洲大連港は近く感じられますが
当時は、船で一泊して翌朝大連港へ着く予定
でした…
従って、船では一室設けられていました。
船室から甲板へ出てみると、京都から一緒に
やって来た近所の人々が見送りデッキに見えます
やがて、出港の時間が来て、銅鑼が鳴らされます
「ジャン…ジャン」と港に響き渡ります…
見送りの人々から私らに、数本のテープが
投げられました
我が母親も港のデッキに向かって
テープを投げました…
銅鑼の音が止むと、
私らの乗った客船「みどり丸」は
いつの間にか、静かに港を離れていました。
船が港から離れていくにつれて
お互いに手に持ったテープがピンと張り詰めます
港の近所の人々がテープを離したのでしょう
テープは私の手に残って、風に吹かれて
ヒラヒラなびいていました…
… … …
横で一緒に見送りを受けていた母親は
「しばらく日本とお別れね…」といいました。