満洲國新京特別市は空気が乾燥
していて、雨が少ないところでした。
空気が乾燥しているせいか、近くに
見える大きな建物が実は遠くにあること
が、わかってきました。…
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家のまわりの野原の向こうに
白っぽい大きな建物がありました。
夕方前のある日、一度行ってみようと
広い高梁畑(こうりゃん)の畦道を通って
歩いて出掛けました
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歩けども歩けどもその、
白い大きな建物は遠ざかっていきます。
やっとたどり着いて標識を見ると
サナトリアムでした
空気が澄んでいるので結核療養所が
出来たのでしょう。
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家から遠くに満鉄(まんてつ)の
線路が通っています。毎夕6時頃になると
流線型の特急列車アジア號(蒸気機関車)が
フォーンと汽笛を鳴らして走っていきます。
その線路脇に
満鉄駅・蒙家屯(もうかとん)が
ありました。…
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その蒙家屯駅の近くに
大きな養鶏場があって新鮮な卵を
販売していました。
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時々、母親に頼まれたお使いで
卵を買いに行っていました。
養鶏場の門は閉ざされていて
門の脇のインターフォンで
「卵を買いに来ました…」と告げると
門を開けてくれる不思議なところでした。