治療家をやっていても、家族のことはおざなりにしていることが多いものです。
先日、母88歳から、実はこの3か月ほど立てなくなっていると聞かされました。絨毯の上にぺたんと座ってしまった場合は、その姿勢から立ち上がる力がなくなってしまったというのです。
普段は椅子に座って見ている分には、すっと立ち上がれるのだが、うっかりと座り込んでしまった時は、孫たちに脇の下に腕を入れて持ち上げてもらって立ち上がっているというのです。
先日、誰もいないときに無理をして立ち上がろうとしたら、よろけてベットのふちに脇腹を打ち付けてあざを作ってしまったことから、事態が発覚しました。
彼女も我慢強い世代の老人ですし、東北出身ということでなかなか痛い苦しいといわないので、まったく気づきませんでした。
私は、ほぼ毎朝、この母親を近くのトレーダージョーやセーフウェイなどのマーケットに連れて行って歩かせていますので、一見健脚に見えました。
まさか、地べたに座り込んだら立ち上がれなくなっているとは気づきませんでした。迂闊でしたね。。
そこでお灸で虚を補ってやることにいたしました。
ツボは足三里と腎兪(じんゆ)を選びました。実際は足三里だけでよいのですが、せっかくですので、もう一種類をたしました。
これはツボの位置がよく示されたHPの一例です。
http://tsubo-hayami.com/name/name_02/
足三里のツボは、松尾芭蕉(元禄二年、一六八九年)の「奥の細道」にも出てくる、疲労回復と健脚のツボです。
この序章では「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。…(中略)…もも引の破をつづり、笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより、松島の月先心にかかりて…」とあるとおりです。
毎日お灸をして、10日ほどしますと、ゆるゆると補助なしで立ち上がれるようになりました。2か月はかかるとみていたのですが、思ったよりずっと早く結果が出ました。やはりお灸の効果は抜群ですね。
私は一応プロなので、直接灸という方法を使いましたが、皆様が行うときは、せんねん灸などのインスタント灸で十分です。
足三里と腎兪を使いましたが、お一人でなさるときは自分でとどかない腎兪はやめて、足三里のみでも十分効果が期待できます。
お灸は苦手だという場合、漢方薬でも同じ効果を期待することができます。
1.六味地黄丸(ろくみじおうがん)普通の体質の方。
2.八味地黄丸(はちみじおうがん)寒がりの方。
3.明目地黄丸(めいもくじおうがん)或は杞菊地黄丸 (こぎくじおうがん)
両薬ともほぼ同じ効果です。どちらも視力減退の治療も一緒に行いたいとお
考えの方に使う方剤です。
これらの方剤は、下半身をしっかりとさせて、中年以降の虚を補う力があります。とくに朝起きた時に腰が重だるかったり痛いという症状があれば、この方剤の出番です。
三里のお灸と併用してもたいへんよろしいです。