私はかなりの期間抗がん剤の探索をしており、新しいがん治療法には気を配っていました。その一つが少し前から注目していた、ナノ粒子を用いたがん治療です。
このブログでも何回か書いたように、現在の抗がん剤のほとんどは、がん細胞と正常細胞を増殖速度という違いだけで区別しています。ですからどうしてもある程度は正常細胞にも働いてしまい、副作用がかなり出てしまいます。どうやってがん細胞だけに効果を出すかが、いろいろ試みられているわけです。
その一つがナノ粒子という、非常に小さな粒子の利用で、東京大学の先生を中心に進められていました。現在はこういった極微細なナノ粒子を安定に作成し、その粒子の中にいろいろな物質を閉じ込める、といった技術も進歩してきました。
基本的な理論は、50ナノ程度の粒子を作ってやると、毛細血管は5~10ナノ程度の太さですので、通り抜けることはできません。ところががん細胞が、栄養や酸素などの補給のために作り出す血管は、100ナノ程度の太さを持っています。したがって50ナノの粒子は正常細胞には入り込めませんが、がん細胞には到達することができるわけです。そこでこの大きさのナノ粒子に、リン酸カルシウムなどを含ませると、がん細胞内は弱酸性のため(これは私も知りませんでした)、これが溶け出すことによって、粒子の中身が出てくるといことになります。
当然最初は、この粒子内に抗がん剤を封入したものを試みたようです。こうすると、がん細胞内にだけ抗がん剤が接触することになります。理論的にはがん選択的抗がん剤治療になるはずですが、どうもあまり良い結果が出なかったようです。
そこでこのナノ粒子に閉じ込める物質を、ガドリニウムという物質に交換しました。このガドリニウムは、MRIを測定するときの造影剤として用いられており、この物質自身は何の作用も持っていません。ところがこれに熱中性子線を照射すると、ガンマ線を放出するという性質を持っています。つまりこのガドリニウムを内包したナノ粒子を投与し、がん細胞に集めると、ナノ粒子が壊れガドリニウムががん細胞中に出てきます。そこに生体には安全な熱中性子線をあてると、がん細胞周辺にだけガンマ線が発生し、がん細胞だけを殺すことができるという物です。
この効果はがん細胞を移植したマウスでは、がん細胞の縮小が観察されたようです。まだ動物実験で成功したという段階ですので、人間に応用するまでには数多くのステップがありますが、新しいがん治療法として、注目しています。
このブログでも何回か書いたように、現在の抗がん剤のほとんどは、がん細胞と正常細胞を増殖速度という違いだけで区別しています。ですからどうしてもある程度は正常細胞にも働いてしまい、副作用がかなり出てしまいます。どうやってがん細胞だけに効果を出すかが、いろいろ試みられているわけです。
その一つがナノ粒子という、非常に小さな粒子の利用で、東京大学の先生を中心に進められていました。現在はこういった極微細なナノ粒子を安定に作成し、その粒子の中にいろいろな物質を閉じ込める、といった技術も進歩してきました。
基本的な理論は、50ナノ程度の粒子を作ってやると、毛細血管は5~10ナノ程度の太さですので、通り抜けることはできません。ところががん細胞が、栄養や酸素などの補給のために作り出す血管は、100ナノ程度の太さを持っています。したがって50ナノの粒子は正常細胞には入り込めませんが、がん細胞には到達することができるわけです。そこでこの大きさのナノ粒子に、リン酸カルシウムなどを含ませると、がん細胞内は弱酸性のため(これは私も知りませんでした)、これが溶け出すことによって、粒子の中身が出てくるといことになります。
当然最初は、この粒子内に抗がん剤を封入したものを試みたようです。こうすると、がん細胞内にだけ抗がん剤が接触することになります。理論的にはがん選択的抗がん剤治療になるはずですが、どうもあまり良い結果が出なかったようです。
そこでこのナノ粒子に閉じ込める物質を、ガドリニウムという物質に交換しました。このガドリニウムは、MRIを測定するときの造影剤として用いられており、この物質自身は何の作用も持っていません。ところがこれに熱中性子線を照射すると、ガンマ線を放出するという性質を持っています。つまりこのガドリニウムを内包したナノ粒子を投与し、がん細胞に集めると、ナノ粒子が壊れガドリニウムががん細胞中に出てきます。そこに生体には安全な熱中性子線をあてると、がん細胞周辺にだけガンマ線が発生し、がん細胞だけを殺すことができるという物です。
この効果はがん細胞を移植したマウスでは、がん細胞の縮小が観察されたようです。まだ動物実験で成功したという段階ですので、人間に応用するまでには数多くのステップがありますが、新しいがん治療法として、注目しています。