ごっとさんのブログ

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祝 大村先生ノーベル賞受賞 続

2015-10-14 10:20:04 | 時事
前回は私事ばかりになってしまいましたので、ノーベル賞の受賞対象となったイベルミクチンについて書いてみます。

大村先生は微生物の生産物として、その前駆体であるアベルメクチンを発見されました。受賞決定後のインタビューで、先生がこの微生物は伊豆のゴルフ場の土から分離したとのことでしたが、かなり怪しいところです。

このように微生物の生産物を探索するためには、その生産微生物を探すことから始まります。最も微生物が多く生育しているのは土壌ですので、色々なところに行ってはスプーン1杯程度の土を持ち帰るのです。私の会社も出張で出かけたときは、国内外を問わず何カ所かの土を持って帰るというキャンペーンをやっていました。

この土壌から微生物を単離するという作業は、かなり時間がかかり大変なものです。簡単に紹介しますと、まず土に水を入れ、その上澄みを何段階かに希釈し、目的とする微生物(この場合は放線菌です)がよく生育するシャーレに捲き、何日か培養します。そうすると生育した微生物の塊、通常丸くコロニーといいますが出てきます。種類の違っていそうなコロニーから、微生物を取り出し、各々をシャーレに植え継いでいきます。これを繰り返して、微生物を純粋培養するわけです。一種類の土壌から慣れた人がやると、数十の菌を分離することができます。

大体10カ所ぐらいの土を並行してやりますので、純粋になった菌株のシャーレは数百枚となるわけです。このように純粋になった菌を液体培養して、培養液中に生理活性物質があるかどうかを評価していくわけです。

大村先生の場合は、医薬品に関しては当社と提携し、農薬をアメリカメルク社と提携されていました。この農薬探索の中から、放線菌といわれる微生物の生産物の中に、線虫に有効な物質が見つかり、アベルメクチンと命名されました。これはマクロライド系といわれる化合物の仲間で、大きな環状ラクトンとメチル化糖が2個付いた構造を持っています。

マクロライドには抗生物質も多数あり、エリスロマイシンなど人間用に現在も使用されています。このアベルメクチンにどういう欠点があったのかは分かりませんが、メルク社によって化学変換され、二重結合が還元された化合物がより良い性質を持つことがわかり、これがイベルメクチンとして開発されたのです。このイベルメクチンの農薬としての作用や、後に人間用にも重要な役割を果たしましたが、また次回に続きます。