ごっとさんのブログ

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脳卒中のダメージをクモの毒で抑える

2017-04-04 10:40:16 | 健康・医療
オーストラリアのクイーンズランド大学などの研究グループが、クモの毒を使って脳卒中のダメージを最小限に抑えることができると発表しました。

この毒グモはオーストラリアに生育するジョウゴグモで、致死性の毒に含まれるタンパク質が有効ということでした。このクモは漏斗状の巣を作り、シドニー周辺に分布しているようですが、体長は4センチほどで足を延ばすと10センチほどになるという大型のクモです。

また各脚や腹部に剛毛を備えるため、タランチュラに似た趣と量感があるようです。この毒性は非常に強く最強の毒グモと呼ばれ、毒の成分はロブストキシンと呼ばれていますが、詳しいことはわかっていないようです。面白いことにこの毒はヒトやサルなどの動物には効果があるのですが、外敵となるトカゲや鳥類、またエサになる昆虫類には効かないため、何のために毒を持っているのかよく分からないようです。

研究グループは、捕獲したこのクモの牙に当たる鋏角に電流を通して筋肉を収縮させ毒を抽出しました。この中から低分子タンパク質であるHi1aを単離しました。これが毒の成分であるロブストキシンと同一物かははっきりしませんが、クモなどの毒はタンパク質であることが多いので、これが毒の本体かもしれません。

研究グループはマウスを使った実験で、このHi1aタンパク質が、脳卒中後の脳損傷の主要な推進要因となる酸感受性イオンチャンネルを遮断することを見出しました。この酸感受性イオンチャンネルというのは、組織のpH低下によって直接開く陽イオンチャンネルです。

炎症、虚血、腫瘍などでpHが低下し、このチャンネルを介して障害受容性疼痛が発生するとされています。そのためこのチャンネルは鎮痛薬探索のためのターゲットとなっていましたが、脳の損傷とどういう関係があるのかは、この記事ではよく分かりませんでした。

このチャンネルを遮断すれば脳の損傷が防げるというのであれば、すでに開発されている鎮痛薬なども効くような気もしますが、それほど簡単なことでは無いのかもしれません。このクモの毒は心筋に作用するとされていますが、これもこのチャンネルの遮断作用からきているのかもしれません。

研究グループは、脳卒中に起因する脳へのダメージを最小限にする方法を始めて発見したとしています。低分子タンパク質であるHi1aが将来的に治療法の確立につながるとして大きな期待を寄せています。