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日本人がノーベル物理学賞を受賞

2021-10-08 10:25:53 | 時事
ノーベル物理学賞が発表になりましたが、何と日本人が気象学という物理学では珍しい分野で受賞が決まりました。

このところ受賞者の真鍋淑郎氏の話題で盛り上がっていますが、どうも業績を詳しく報じている記事があまりありませんでした。

「温暖化研究の父」と呼ばれ、地球温暖化研究の先駆者とされていますが、基本的なものは1969年ですのでまだ地球温暖化が問題となっていなかったころです。

現在では大気や海洋のデータをコンピュータに入力し、大規模なシミュレーションを行うことで、高精度な予測が可能になっています。真鍋氏がその基礎となる気候モデルを開発するまでは不可能でした。

開発の第一歩は、1967年に発表した「1次元大気モデル」で、大気を地上から上空まで1本の柱と考え、大気の対流や地表からの放射熱などの影響によって、高度ごとの気温がどうなるかを予測するプログラムでした。

これを使って大気の気温分布のシミュレーションを行うと、地上から数十キロまでの対流圏では高度が上がるにつれ徐々に気温が下がる一方、それを超えた成層圏では逆に高度が増すごとに気温が上がるという、実際に地球を取り囲む状態を再現できました。

このときふと思いついて大気中の二酸化炭素濃度の設定を2倍にすると、地上の気温が2.3℃上がるという結果が出ました。これを発表したところ反響が非常に大きく、温暖化研究を本格化させることになりました。

1969年にはシミュレーションの要素に海洋の影響も加えた「大気・海洋結合モデル」を発表し、大気の気温上昇は地表から放射される熱だけではなく、地球の表面の7割を占める海洋が放射する熱の影響が大きいことを示しました。

この仕組みを基本にさまざまな条件や設定の見直しを続け、1989年に大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、全地球的な気温上昇を引き起こすことを気候モデルで示した論文を発表しました。

これがIPPCに取り上げられ、世界中で温暖化研究が活発化し、各国で二酸化炭素排出量の削減への取り組みが始まりました。これが地球温暖化に関する真鍋氏の業績ですが、これ以外にも気候モデルでの成果は多いようです。

私はこのブログでも何回か書いているように、地球が温暖化することによって大気中の二酸化炭素が増加しているという立場をとっています。

それとは別に現在どこでもやっている気候シミュレーションの基礎を築いたという点では、ノーベル物理学賞に値する立派な業績と言えると思っています。

このすべてがアメリカで行われたのはやや残念ですが、日本人が受賞したことは喜んでいます。