ごっとさんのブログ

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酵母が巨大な多細胞体に進化

2021-10-22 10:27:09 | 自然
人間を含む動植物は多細胞体ですが、微生物は単細胞で活動しています。

原始の生命が生まれたときは当然単細胞のはずですが、これがいかにして多細胞生物に進化したのかは現在でも謎とされています。この手掛かりとなるような研究成果が、ジョージア工科大学の研究チームから発表されました。

研究チームは試験管の中で本来は単細胞生物の酵母が、肉眼で見えるほどの巨大なクラスター(集合体)にまで進化する様子を観察し、複雑な多細胞構造の起源を探る研究への道筋を付けました。

実験で得られた酵母のクラスターは大きさが直径2ミリで、およそ45万個の細胞を含んでいました。研究チームは2,012年には単細胞生物の酵母が、雪の結晶のような形に多細胞化する「スノーフレーク酵母」を発見し報告しています。

この変異株は、母細胞から出芽した娘細胞は母親にくっついたまま枝分かれして増え、小さなクラスターを形成します。しかし細胞の数が数百個まで増えて大きくなると二つに分裂しました。

スノーフレーク酵母のように、シンプルな多細胞性を進化させることはいくつかあるものの、どうやって数十万個あるいはそれ以上の細胞のクラスターを安定的に生み出せるのかが問題でした。

研究チームはスノーフレーク酵母を作るにあたり、さまざまな培養法を試みましたが、細胞が300〜400個まで増えると成長が止まるという壁にぶつかっていました。そこで原始地球では酸素濃度が不安定だったことにより、無酸素、低酸素、有酸素の状態で実験を行いました。

実験開始から約200日後、無酸素状態での試験官に肉眼でも確認できるほど大きなクラスターができはじめたのです。600日後無酸素状態の酵母のクラスターは、平均45万個の細胞を持つまでに成長しました。

また最も大きなクラスターの細胞が細長くなり、元の球状から大きく変化していました。成長したクラスターは、木のように固くなっており、形成する枝が複雑に絡み合っていることが分かりました。

このような大きなクラスターになると、内部の奥深くにある細胞には栄養が行きにくくなりますが、これにどう対処するのかなどが今後の課題としてあるようです。今回作製した酵母の巨大クラスターは、単なる集合体であり多細胞生物とは全く異なるものです。

しかしこれが単細胞生物から多細胞生物への進化の謎を解き明かす一歩となる可能性は十分あるといえそうです。

こういった研究は生成日数からも分かるように、非常に時間がかかる実験となっています。研究チームは何十年かかっても多細胞化の謎の解明に取り組むと意欲を示しています。