ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

睡眠時間の短さは認知症のリスク

2021-10-29 10:27:54 | 健康・医療
寝ている間にも脳はある程度活動し、記憶の整理などをやっていることは知られています。

それと共に脳内に蓄積した老廃物(アミロイドなども含む)も除去していることは推測されていましたが、この通り道であるリンパ管は最近まで見つかりませんでした。

体内では不要になったタンパク質や脂肪、その断片などの老廃物は細胞外に排出されます。老廃物は細胞と細胞の間を満たしている体液(細胞間質液)の中に出ます。細胞間質液は元々血管から染み出た血液成分なので、次から次へと供給されます。

老廃物を含んだ細胞間質液は押し流され、体中に張り巡らされたリンパ管を通って最終的には血管に戻され、腎臓を経て尿や便の中へと排出されます。これが体内の老廃物の除去ですが、脳内でも当然同じようなことが起こっているはずです。

ところが長い間脳内でそれらしきリンパ管は見つかりませんでした。脳には大きく分けて「神経細胞」と「グリア細胞」の2種類の細胞があります。そのうちグリア細胞が脳内の動脈の周囲を包み込み、血管の外側に狭い隙間を作っています。

脳を包む液体(脳脊髄液)がこの隙間を伝って脳の細胞に入り込み、神経細胞の周囲にリンパ液としてしみだして、老廃物を洗い流しています。老廃物を含んだリンパ液は、やはりグリア細胞によって静脈の周囲に作られた隙間に沿って脳外へと流れ出るのです。

2010年になりロチェスター大学の研究チームが、この脳内のリンパ系が主にグリア細胞で作られていることを発見し、「グリンパティックシステム」と命名しました。

さて睡眠と脳内のリンパ系の働きが、密接にかかわっていることも明らかになっています。

脳は神経細胞やグリア細胞、その他の組織などで埋め尽くされているため、なかなかリンパ液が流れにくくなっていますが、睡眠中には神経細胞間の隙間が大きく広がり、脳内リンパ液が流れやすくなることが分かりました。

睡眠中に細胞の体積が縮む様なのですが、このメカニズムはまだ分かっていません。その後の研究で、深く眠った時に脳波活動が遅くなることや心拍数が低下することが、脳内のリンパ液の流れを活発にすることも分かりました。

アルツハイマー病の患者を対象にした臨床研究で、アミロイドの濃度が睡眠時間が長いほど低くなることが分かりました。つまり睡眠によってアミロイドを効率よく洗い流せていることを意味しています。

このようにグリンパティックシステムの発見により、睡眠中にアミロイドなどの老廃物が起きている時よりもよく排出され、認知症の予防にも十分な睡眠に効果があることが分かりました。

若い時から睡眠習慣を正すことが必要なようです。