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貴金属すべての合金で性質一変

2022-05-03 10:25:32 | 化学
古くから金属を混ぜ合わせて新しい性質を持った金属を作る合金は行われており、5000年前に銅とスズの合金である青銅がその始まりとされています。

私はこういった無機化学はあまり良く分からないのですが、京都大学と信州大学などの研究チームが貴金属8種を全て混ぜた新しい合金を作ることに成功したと発表しました。

これ以前に研究チームは、混ざらないとされていた貴金属のロジウムと銀の合金を作り、元素の周期律表で両者に挟まれたパラジウムの性質を持たせられないかの研究を行いました。

ロジウムと銀を溶かしてイオンの状態にして200度に熱した還元剤のトリエチレングリコールに噴霧します。トリエチレングリコールから電子を与えられたロジウムイオンと銀イオンが原子に還元され、これを急速に冷やすとロジウムと銀は分離せず原子レベルで混ざった綺麗な合金ができました。

この様に作った合金は、パラジウムと同じように水素を吸収する性質を持っており、2010年に発表し大きな注目を集めました。このような手法で研究チームは2014年にはルテニウムとパラジウムから本物より安価で高性能の人工ロジウムを合成しました。

また2020年には白金族6元素をすべて混合した合金の作製にも成功しています。研究チームは、金属を原子レベルで混ぜると全く違う性質となることから、貴金属すべてを原子レベルで混ぜたら「スーパー貴金属」ができると考えました。

多種の元素でできた合金の性質は、各元素のもとの性質の単純な足し算ではなく、特に電子の状態にも着目しました。今回は白金族のルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金の5元素に加え、残りの貴金属3元素であるオスミウム、金と銀を添加しました。

白金族の元素及びその合金は、水素を発生しますが貴金属3元素はこの能力を持っていません。ところがこの8種を混合した合金は、水素発生で白金族5種の合金の4倍以上の圧倒的に高い性能を示しました。

研究チームは多くの元素が混ざったことで、元の原子の電子状態が大きく変わりいわば「原子が生まれ変わった」とみています。

この合金の結晶構造や電子の状態を詳しく調べたところ、もともとの電子の状態が大きく変わり全く新しい性質を持ち、別の元素のようになっていることが分かりました。

この新しい貴金属合金は何かの化学反応の触媒となる可能性は十分考えられますが、大部分は研究者の遊び心のような気がしています。

現在はすべての元素の7割以上が原子レベルで混ぜ合わされていないようですので、今後どんな合金ができてくるのかはなかなか面白いところと言えそうです。


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