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認知症の新薬は治療戦略の分岐点になるのか

2023-06-23 10:34:53 | 
認知症の患者数は数百万人といわれており、今後増加すると予想されています。私の親世代では何人もの発症者を見てきましたが、やはり介護が必要になるという点も含めて今後問題になることは確実です。

私の母は80代前半で発症しましたが、特に何の治療もしませんでした。認知症の難しさはいわゆる波があり、良い時と悪くなる時があることと、刺激があると一見正常に戻ることです。

例えばケアマネージャーが見えていろいろ検査を兼ねた質問などにはほぼ正常に回答できるのですが、帰ってしばらくすると、その事実を完全に忘れてしまうのです。

たぶんこういった状況が認知症の治療薬の効果判定を非常に難しくして、多くの臨床試験の失敗につながったのではないかと思っています。日本のエーザイが開発した「レカネバブ」が米国で迅速承認され、日本でも審査が行われていますので、多分承認されるでしょう。

これが承認され使用されるようになれば、認知症の治療戦略が大きく変わるターニングポイントになるといった意見が専門家から出ていますが、私は大いに疑問を持っています。

現在使われている「アリセプト」などは、認知症の原因が「アセチルコリン」の減少によるものであるという間違った仮説のもとに開発された薬剤です。現在はアルツハイマー病はアミロイドなどの異常タンパク質の蓄積によるという説が主流になっています。

従ってアセチルコリンの減少を抑制する薬に効果があるとは考えられませんが、未だに認知症にはアリセプトなどが処方されています。その点レカネバブはアミロイドの蓄積を抑えるという、最新の説に従った治療薬です。

ところが認知症は、発症の20年も前からアミロイドの蓄積が始まり、これによって神経細胞が破壊されるとされています。発症してからレカネバブを投与しても、破壊された神経細胞が復活するわけではありません。

良くても病気の進行を止める効果ですが、これも臨床試験では27%抑制という結果が出ています。つまり病気の進行が抑えられるのは、10人のうち3人未満となるわけです。しかもレカネバブは抗体医薬ですので、かなり高価な薬価となるでしょう。

投与方法も飲むことはできませんので、点滴静注という事になりそうです。こういった使いにくく高価な薬が、数百万人もいる患者の治療薬となるのでしょうか。

確かにレカネバブは、病気のメカニズムに働きかける初の治療薬で、この登場によって難治性だった神経変性疾患という病気のグループが積極的な治療の対象となります。

しかし実際問題としてはたとえ承認されたとしても、認知症になったらあきらめるという状況は変わらないような気がします。


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