ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

新しい「抗うつ薬」が4年ぶりに登場

2020-04-25 10:25:38 | 
最近はうつ病にかかる人が増えているようで、知人にも何人かうつ病と診断されて人がいます。

ただ会社を何か月か休み、その間気分転換に海外旅行に行ったりしているのが、本当に病気なのか疑問にも感じています。

昨年11月に発売された「ポルチオキセチン」は、約4年ぶりに新しく登場した抗うつ薬で、最大の特徴は副作用が少ないところです。従来の抗うつ薬は、三環性抗うつ薬や四環性抗うつ薬で、副作用の少ないSSRI、NaSSAが使用されていました。

しかしSSRIを服用すると50%くらいの人に性機能障害が起こり、薬を飲んでいる間続くという副作用がありました。さらに病院に行けず薬が切れてしまったとき、非常につらい副作用も生じます。

これは船酔いのようなつらさで、顔の向きを変えただけで激しいめまいや強い吐き気に襲われ、頭の中で電気が流れるような感覚が出現することもあるようです。またNaSSAには食欲増進の副作用があり、2週間で数キロ太ることも珍しくありません。

うつ病はセロトニンをはじめとする脳の神経伝達物質の不足が関係していると考えられています。SSRIなどはセロトニンの再取り込みをする物質の働きを阻害してセロトニンを増加させますが、性機能障害を招きます。

そこで新薬はこの再取り込みの阻害の作用を弱めました。セロトニンはセロトニン受容体と結合して鎮静・睡眠・感情の調節をします。

セロトニン受容体は十数種類あり、それぞれ働きが異なり、新薬は様々なセロトニン受容体を刺激あるいは遮断し、セロトニンのほかアセチルコリン、ヒスタミンなどの神経伝達物質が神経終末から遊離するのを促します。

日本より早く承認された海外では、新薬の認知機能改善にも期待が寄せられています。うつ病では認知機能が落ちるため、職場復帰しても発症前のように仕事がこなせないケースがあります。

新薬では認知機能に関係するアセチルコリン、ヒスタミンも増加するので、認知機能を改善することが期待されています。ただうつ病治療において薬は一つの手段で、トータルな対策が必要なようです。

例えばうつ病に悪影響を及ぼすストレスフルな環境に身を置いたままでは、うつ病は良くなりません。抗うつ薬は一般的に症状が良くなっても飲み続けることが必要で、再発リスクを避けるために、初発の場合は半年間、再発例では2年以上が目安とされています。

この様にいったん発病するとなかなか完治が難しい病気ですが、うつ病にならないように精神面を鍛えるといったことは、古い考え方なのかもしれません。

新型コロナ、待望のワクチン

2020-04-24 10:24:39 | その他
新型コロナウイルスは相変わらず世界中で猛威を振るっていますが、これに対抗する武器として最も期待されているのがワクチンです。

製薬会社や大学などの研究機関は、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発を急いでおり、世界保健機構(WHO)によると、現在少なくとも62件の研究が進められているようです。

大いに注目を集めているのがアメリカの企業で、新型コロナウイルスの遺伝子配列が発表されてからわずか42日後に、臨床試験を開始できる新たなワクチンを開発したとしています。

バイオ技術に基づくこうしたワクチンの基礎研究は30年近く前からあるものの、これまでのところ人間の病気に有効なワクチンは作られていません。過去の事例を参考にすると、新型コロナウイルスのワクチンを世界の人が手にできるのは、1年後かそれよりかなり先になりそうです。

史上最速で承認されたといわれるおたふくかぜのワクチンでさえ、ウイルスサンプルの収集からワクチンの許可までに4年を要しています。ワクチン開発の臨床試験には3つの段階があり、現在のコロナウイルスワクチン試験はその第1段階です。

それが完了するのは今年の秋か2021年春、あるいはそれよりも後になりそうです。こうした安全性確認の時間を取ることには、それなりの理由があります。

例えば類似のコロナウイルスが原因で発症するSARSのために開発された候補ワクチンは、動物モデル実験において逆に病気のリスクを高める結果となっています。

従来の天然痘、はしか、インフルエンザなどのワクチンは、ウイルスそのものを弱らせたり不活性化させて作られています。最近はウイルスそのものではなく、そのうちの1種類のタンパク質を用いることで、免疫系の反応を引き起こせることが分かりました。

こういったワクチンは製造が容易で安価なことより、医療従事者が使用する最も一般的なワクチンになっています。

問題は類似のコロナウイルスによって、2002年にSARS、2012年にMERSが流行し、約1600人の死者が出ているにもかかわらず、未だにヒトコロナウイルスに対し有効なワクチンが存在しないことです。

これはSARSはワクチンの臨床試験が行われる前に流行が終わり、MERSは症例数が少なすぎたため、開発者に持続的な資金が提供されなかったためのようです。

現在はタンパク質ワクチンから遺伝子ワクチンへと進化しているようですが、まだ人体での有効性を証明できていないようです。

新型コロナウイルスは、こういったワクチン開発の条件が十分に整っていますので、一刻も早いワクチン開発を祈っています。

ガンの自由診療を規制できるか

2020-04-23 10:23:56 | 健康・医療
インターネットにはガンの自由診療の広告があふれています。

糖質を摂取しなければガンが小さくなる、ニンジンジュースには抗ガン作用がある、血液クレンジングはガン予防に有効といった、効果が期待できないようなものがほとんどです。

こういったことを信じてしまい、怪しいクリニックに大金を払ってしまったりして命を危険にさらす患者が後を絶たないようです。

私の持論である「病気を治すのは自分自身」という点からは、科学的根拠がなくても、高額だから効くはずという思い込みで効果が出るような気もします。といっても非常に多くの怪しげな治療法があることは確かで、ある程度の規制は必要な気もします。

国民の2人に1人が生涯のうち一度はガンになる時代になり、ガンは身近な病気になりました。しかしガンについて学ぶ機会はほとんどなく、仮にガンと告知され心身ともに弱り切った状態でも、怪しい治療法を避け正しい治療法を選ぶ必要があります。

簡単に言えば標準治療が最善で最良の治療であり、保険が適用されるので安価に受けられるという事になります。しかし保険適用以外に特別な治療があり、お金を出せばもっといい治療が受けられるのではないかと考える人がいても当然のような気がします。

そこにつけ込むのが自由診療です。自由診療とは一般にクリニックなどの医療機関で自費で行われる治療のことを指します。

日本のガン医療は、自由診療に対して十分な法規制をかけていないため、実施するのが医師であれば、全く科学的根拠がなくても基本的に患者に提供することができ、価格設定も自由となっています。

自由診療の中でガンに有効であるという科学的根拠が充分なものは基本的にないはずで、根拠があるならば標準治療として保険適用になっているはずだからです。

自由診療の例として、ガンに対するビタミンC療法があります。インターネットで検索すると300件以上の医療施設(クリニックなど)が見つかります。

ガンに対するビタミンCの効果については、古くから多数の研究が行われており、細胞や動物実験ではある程度効果があることが分かっています。ガン患者にビタミンCが効くのかを厳密に調べた研究もありますが、ビタミンC療法の有効性は証明されませんでした。

ビタミンC療法は概して副作用が少ないのですが、腎不全や溶血の作用も報告されています。日本では未承認治療は臨床研究として行うべきとする臨床研究法が2017年4月に公布されましたが、まだほとんどの自由診療は規制対象になっていないようです。

私は標準治療をやめたりしないのであれば、何でも試したいと思う患者の気持ちを受け入れても良いと思いますが、ある程度の規制は必要な気もしています。

新型コロナウイルスの基礎知識

2020-04-22 10:30:01 | 自然
世界中で猛威を振るっている新型コロナの記事が多くなっていますが、今回はこのウイルスの基礎知識的なことをまとめてみます。

正式名称はSARS-CoV-2となっていますが、ここでは新型コロナで書いていきます。新型コロナは遺伝情報としてRNAを持つウイルスの仲間です。

分類上はコロナウイルス科のオルソコロナウイルス亜科に属し、さらにその下の分類の属のうちベータコロナウイルス属となっています。ヒトに感染するものとしてはこれまで6種類が知られており、今回が7種類目となっています。

このうち4種類はいわゆる風邪を起こすウイルスで、風邪の10〜15%程度、流行期では35%程度はこのコロナウイルスによるものと言われています。残りの2種がSARSとMARSを引き起こし、それに今回の新型が加わったことになります。

コロナウイルスはすべてウイルス学的にはプラス鎖の一本鎖RNAをゲノムとするウイルスで、大きさは100〜120ナノメートルぐらいの球形で、表面の突起(スパイクタンパク質)が王冠のように見えることからコロナウイルスと名付けられました。

ウイルスの表面はエンベロープと呼ばれる脂質二重膜でできた成分が覆っています。このエンベロープがあるという事は、一般にアルコール消毒や界面活性剤(石鹸など)に弱いという事になります。

新型コロナの設計図であるRNAには、複数のタンパク質となる情報が書き込まれており、サイズは約30kb(塩基が3万つながっている)で、これはRNAウイルスとしては最も大きい部類です。

今回の流行に際して、ゲノム情報は非常に速く解読・解析がなされ、2020年1月にはデータベースサイトに公開されています。スパイクタンパク質はワクチンのターゲットとなり、ウイルス自身の酵素などは抗ウイルス薬のターゲットになります。

現在臨床試験中の薬もこのRNAポリメラーゼをターゲットとしています。新型コロナは表面に突きだしているスパイクタンパク質が、細胞の表面にある受容体に結合することから侵入を開始します。

この受容体は新型コロナの場合には、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という分子であることが分かっています。これはコロナウイルス全般が認識する受容体のようです。

コロナウイルスの遺伝情報を比較すると、類似度の高いコロナウイルスがコウモリやセンザンコウなどから見つかっています。従って今回の新型コロナの祖先は、コウモリなどの野生動物に感染するコロナウイルスであろうと考えられます。

こういった基礎情報を基に、早く治療薬が開発されることを祈っています。

ガンが抑えていた免疫を細菌感染で活性化

2020-04-21 10:27:48 | 健康・医療
ガン治療では、ガン遺伝子パネル検査が導入され、遺伝情報を調べることで治療薬の選択に役立たれています。

遺伝情報を調べることは敵を知るうえで重要で、原発不明ガンと免疫のかかわりについての遺伝情報の研究も進められようとしています。

ガン細胞は免疫チェックポイントという仕組みで、免疫に攻撃されないようになっています。遺伝情報の解読技術を使えば、個々の患者の免疫細胞の状態を調べることができます。ガンと免疫についてはいろいろ面白い現象が起きているようです。

肺ガンが身体中の皮膚に転移して皮膚を破って大きく成長し、それに続いて細菌感染も生じて潰瘍を伴い、患者に激しい痛みをもたらしていました。

ところが細菌感染が起こってしばらくすると、体中に転移していた肺ガンが、原発巣も転移巣も両方ともあっという間に小さくなって、消えてしまいました。これはガン細胞が抑えていた免疫機能が、細菌感染によって再び活性化したのではないかと考えられます。

この様に何らかのきっかけで、免疫機能が活性化すると、抑えていたガン細胞まで攻撃できるようになるようです。免疫がガンによってどのように封じ込められているのか、まだよくわかっていません。

免疫チェックポイントは、免疫が相手を敵として認識しなくなる仕組みで、ガン細胞がこれを悪用するのを阻害し、免疫が攻撃できるようにするのが免疫チェックポイント阻害剤です。

しかし免疫チェックポイント阻害剤がよく効くといわれる様なガンでも、効果のある人は2〜3割といわれています。複数の薬剤との併用療法の研究も進められていますが、まだ万能とは言えません。

こういった点からも免疫チェックポイント以外にも、ガン細胞が免疫をおとなしくさせる仕組みがあるかもしれません。細胞や組織はいくつものシグナルが絡み合う、複雑なネットワークを形成するような仕組みを持っており、ガン細胞と免疫の関係も単純ではないようです。

現在ガンを攻撃する免疫細胞であるT細胞も色々な種類があり、抗体を作るB細胞についてもいろいろ研究されています。

今回のように細菌感染によって、ガン細胞までも駆逐するような作用が、免疫のどのような仕組みで活性化されたのかが判明すれば、新たなガン免疫治療法への道が開けるのかもしれません。

遺伝情報の解析や、免疫システムの解明と調べなければいけない課題は多いのですが、免疫を使ってガンを治療するのが最も患者にやさしい治療法だと思っています。

これだけの情報では新たな取り組みの道筋は見えませんが、大きな可能性があるような気がしています。