ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

二酸化炭素から高濃度メタンを合成

2021-03-21 10:28:26 | 化学
地球温暖化につながる温室効果ガスの排出が実質ゼロである脱炭素社会の実現に向けて動き出しています。

二酸化炭素を出さない社会を目指すとともに、大気中の二酸化炭素を有用な物質に変換するCO2回収利用技術(CCU)の開発も進んでいます。

産業技術総合研究所などの国際研究グループが、大気中より希薄な二酸化炭素からメタンを高濃度に合成する技術を開発したと発表しました。

CO2を吸着する性質を持つナトリウムやカリウム、カルシウムなどと、ニッケルを組み合わせた触媒を活用する研究が進んでいます。この触媒は2段階の働きを持ち、まず気体の成分のCO2を吸着し、続いて水素を与えるとニッケル触媒作用により吸着していたCO2と反応してメタンと水ができます。

従来の研究では発電所の排ガスなど産業界から生じる比較的高濃度のCO2を含む気体が対象となってきました。研究グループはCO2を低濃度しか含まない大気などでも機能するよう、この触媒に独自の調整を追加し、様々な濃度のCO2を含む気体を使って触媒の性能を確かめる実験を行いました。

具体的な濃度は、1.再業界の排ガスに相当する5〜13%、2.大気中を想定した400ppm、3.大気中よりさらに希薄な100ppmとしました。反応速度を高めるため実験は450℃で行いましたが、この辺りには少し問題があるかもしれません。

反応装置を450℃まで加熱するためには相当なエネルギーが必要で、このためにCO2が出てしまっては何の意味もないことになります。

さて最も厳しい100ppmの条件でも、開始から40分後まで排気口からCO2は検出されませんでした。容器から元の気体を抜いたのち、水素を入れたところメタンが発生し、通常の反応に比べ1000倍以上もの高い濃度に達しました。

吸着されたCO2のうち90%以上を直接メタンに変換できていました。大気中からのCO2回収に実用化されることを想定し、大気と同じ20%の酸素を含む気体でも実験しました。ニッケルは酸素に触れて酸化されると、触媒としての性質を損ねてしまうことになります。

実験では性能がやや低下したものの、CO2の吸着とメタンへの変換に成功しました。従来のCCU技術では一般にCO2を変換する前に、吸収材でCO2濃度を100%近くに高める処理が必要で、多くのエネルギーを使用しました。

今回の実験で使用した触媒を使うとその必要がなく、エネルギー使用での利点があります。それでも大気中の薄いCO2を変換させるためには、膨大な作業が必要となりますので、やはり産業界の高濃度排ガスに利用するのが現実的なようです。

CO2の再利用は色々試みられていますが、都市ガスなどに利用できるメタンへの変換というのは実用的と言えるのかもしれません。

試験管で作られた脳から脳波が検出

2021-03-20 10:25:13 | その他
生命の根幹は「脳」であるという考え方が浸透しつつあるようです。

「生きている」とはどういうことかという問いに、息をしているや心臓が動いているから、脳が活動しているが主流になるのかもしれません。

アメリカの研究グループが、死後4時間で取り出したブタの脳に特殊な装置を用いて代用血液を送り込むことで、一部の脳機能を回復させることに成功したと発表しています。この研究結果は、心臓が止まった後も脳は生き続けているかもしれないということを示唆しています。

動物の死は、呼吸が止まってしまうことと定義されてきました。医学の技術が発展することで、電気ショックや薬剤を用いて、一度停止してしまった呼吸や心臓の働きを甦生することが可能になりました。

これにより動物の不可逆的な「死=心臓の停止」という常識は、徐々に変化してきています。人間にとって本当の意味での死は、脳の死ではないかという議論が起こり、現在でも賛否両論があります。

脳が活動しているときには、微弱な電流が発生します。したがって電気的な活動がみられると「脳が活動している=脳が生きている」とも捉えられます。脳の神経細胞の集合的な電気活動は、脳波として知られています。

脳波を測ることで、脳や体がどういう状態にあるかをある程度知ることができます。アメリカの研究グループが、2018年に試験管の中で人工的な脳を作り、その脳から「発達中の胎児に似た脳波」を記録したと発表しました。

組織的な脳活動が観測されたということは、単なる細胞の寄せ集めではなく、「働き」を持った脳組織を作り出すことができたということを意味します。

一方コンピュータの進歩も目覚ましく、正確で速い演算ができるようになっており、人工知能(AI)と呼ばれています。この人工知能は「脳」になれるのでしょうか。色々な観点から脳とコンピュータは類似しており、回路とニューラルネットワークが比較されたりしています。

詳細は省略しますが、コンピュータ上で脳が再現されるという研究もあります。こういった点も含めて「脳が生きていること」の定義を改めて問うような事例といえます。

脳の中で電気的活動を行っている脳細胞をニューロンと呼んでいます。これまで脳の研究ではニューロンの活動を知ることで、脳の働きを解き明かせると信じられてきました。ところがニューロン以外の脳が、脳の大切な働きを司っている可能性があるようです。

結局「生きている」という定義は、脳に電気的活動があるだけでは不十分なようです。生命の神秘という科学的でないことが入る余地があるほど、まだ生きていることの定義は難しいのかもしれません。

卵が血糖値改善と糖尿病リスク低減

2021-03-19 10:26:16 | 健康・医療
卵を摂取すべきかどうかは色々な論争が起きており、卵がコレステロールを上げ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを上げるといった研究結果をこのブログでも紹介しました。

ここでは逆に卵が血糖値を改善するという報告を紹介します。こういったときは解説者(医師が多いのですが)個人の見解だけでなく、いろいろな研究結果を例にあげますが、こういう調査もなかなか面白いものです。

これは私の感想ですが、調査研究を行う人に都合の良い結果が出るような気がします。これはもちろんデータを改ざんしたり都合の良いものを集めたりすることは全くないはずですが、研究者が予想したような結果が出ることが多いようです。

つまり全く逆の結果が出ることは多いのですが、それだけ難しい問題を扱っているということかもしれません。

さて卵については、コレステロール値を上げる食品の代表とされ摂取量を制限されていたのですが、それが間違った認識であることが判明したとしています。卵をたくさん食べるほど糖尿病のリスクが減るという調査報告が多数出ています。

例えば2013年に英国の科学雑誌に掲載された心血管疾患および糖尿病のリスクに関連する卵の消費という論文では、卵をたくさん食べると糖尿病のリスクが42%減少すると報告されています。

また2015年に東フィンランド大学の研究グループからは、週に約4個の卵を食べている人は、週に1個程度に比べ2型糖尿病の発症リスクが37%低下したという調査結果が報告されています。

解説者によると血糖値改善のためには、卵を1日3個食べることがよく、肉が苦手な人は5個を推奨しています。特に高齢者はコレステロール気にして控えてしまう傾向がありますが、筋肉量を維持して体の衰弱を防ぐため特に摂取を進めています。

悪玉コレステロールの原因は、脂質異常、高血糖、喫煙、ストレスで、卵は体に悪い影響は及ぼさないとしています。卵を手軽にたくさん食べるための方法として、ゆで卵を常備しておくことが良いようです。

時間がない朝に1〜2個、小腹が空いた時におやつとして食べるのもよさそうです。その他ここではコップ1杯の牛乳も進めており、カゼインとホエイプロテインの効能を述べています。

こういった議論は別にして、私はこのところ朝食に卵かけごはんを食べています。昔の朝食はクロワッサンとコーヒーという洋食派でしたが、数年前から卵かけごはんとみそ汁という和食に代わりました。

ここで卵1個を食べますので、多分私は1日2個ぐらいを食べているかもしれません。やはり食べ物は栄養や効能を考えるよりも、好きで食べたいものを食べることが良いような気がしています。

カイコ冬虫夏草から新物質を発見

2021-03-18 10:30:12 | 
「冬虫夏草」という言葉がどの程度一般的なのか分かりませんが、古来不老長寿の妙薬として珍重されてきました。

岩手大学発のベンチャー企業であるバイオコクーン研究所は、養蚕技術を活用して得られたカイコ冬虫夏草から新規物質「ナトリード」を発見し、マウスへの投与で認知機能のひとつである空間記憶の回復が認められたと発表しました。

研究所によると老化を促進させたマウスにナトリードを経口投与した結果、空間記憶に加え神経細胞の成長促進や抗炎症作用、体毛の回復が確認されたとしています。

冬虫夏草は虫や蛹になどに寄生して育つキノコの一種で、いろいろな薬効があるとされています。研究所は養蚕技術を生かして、カイコのサナギとハナサナギダケを用いて冬虫夏草を生産しています。

この冬虫夏草については子供のころ読んで以来(たぶん漫画ですが)、ずっと興味を持っていました。実際東洋医学では、鎮静、鎮咳薬として病後の衰弱、肺結核などに用いられてきました。

冬虫夏草はキノコが昆虫などに寄生し、体内に菌糸の集合体である菌核を形成し、昆虫の頭部や関節部などから棒状の子実体を形成したものの総称です。この名の由来は冬は虫で、夏になると草(キノコ)になると信じられたことから冬虫夏草という名がつけられたといわれています。

余談ですが、キノコ(担子菌)は薬などに対して動物と類似の代謝機能を示すことが知られています。動物に薬を投与すると有機化学的には合成が難しいような代謝物ができることがあります。

これをある程度の量作るために、キノコ(担子菌)を培養しそこに薬物を加えるという方法で、この代謝物を作る研究をしていました。ところがこの培養の時、子実体(いわゆるキノコ)ができてしまうと、薬物の変換がうまくいかなくなるのです。

この培養条件の検討の時、部下が冬虫夏草ができないかの実験をしてくれました。昆虫は何であったか忘れましたが、そのサナギに担子菌を植え付け子実体ができるかを調べたのですが、いわゆる冬虫夏草的なものができたのですが、それをどうしたのかは覚えていません。

サナギの首のあたりからキノコらしいものが出てくるという、かなり気持ちの悪いものという記憶があります。

さてこれまでの研究で、冬虫夏草が脳内で記憶や学習機能を担う海馬を修復させる作用を発見しています。ナトリードの活用で、認知症予防や症状改善につながる可能性を期待しています。

研究グループは認知症を改善する希望として、メカニズムの解明に繋げたいとしています。このナトリードの構造的な情報は全くありませんが、どんな化合物なのか興味深い知見と言えます。

足の親指の付け根に激痛、「痛風」発症のメカニズム

2021-03-17 10:27:50 | 健康・医療
血液中の尿酸値が上がり、主に足の親指の付け根が腫れて激痛に襲われるのが「痛風」で、その名の通り風が吹くだけでも痛く歩けなくなるようです。

私の血液検査の尿酸値は7を少し超えており、若干注意すべき数値となっています。尿酸は食事に含まれる「プリン体」が分解されてできる、最終代謝産物です。

尿酸値が一定の範囲を超えると、尿酸の一部が関節にしみ出して針状の結晶になります。この針のような結晶が神経を刺激して鋭い痛みが出るようです。また白血球が異物とみなして攻撃することで炎症が起き、痛みが出るとされています。

足先でよく起きるのは、この部分は体温が低く血流も少ないため、結晶が溜まりやすいからのようです。当然膝や手の関節でなどで炎症が起きる人もいます。

食事などで摂ったプリン体は通常尿によって排出されますが、これが多くなると排出しきれず血液中に溜まることになります。つまり痛風は尿酸の針状の結晶が出ることによる、物理的な現象による病気といえます。

そこで尿酸の物理化学的性質を調べてみると、溶解度は冷水では7mg/dlとされています。従って血液検査で尿酸値が7以上というのは、溶解度以上に溶けているため、いつ結晶化してもおかしくない濃度と言えるようです。

ただし血液は体温近くなっていますし、血液中には多くの物質が溶けていますので尿酸の溶解度はかなり高いと推定されます。

血液のpHは7.4程度とされていますので、尿酸は遊離では存在しておらずナトリウム塩となっていますので、析出(結晶化)の心配はそれほど高くないのかもしれません。

痛風の治療や予防には、痛みが出た場合は鎮痛薬などで炎症を抑えたのちに、尿酸値を下げる薬を飲みますが、尿酸への代謝を抑える薬と、排泄を促す薬があるようです。私が尿酸値が高くなったのは、やはり加齢により尿酸の排泄機能が衰えて来たからかもしれません。

プリン体はビールや魚卵に多いとされていますが、プリン体とは核酸の一種です。核酸はプリンとピリミジンという2種の核酸塩基という物質からできている、いわば生命の根源ともいえる物質です。

人間は動物、植物を問わず生物を食べて生きていますので、必ず核酸を摂取していることになります。従ってプリン体が多いといわれるものを避けても、ある程度入ってしまうことはやむを得ず、食事を食べ過ぎないようにするぐらいしか方法ないのかもしれません。

尿酸値が高いまま放置すると、尿路結石や腎機能の低下を招くとされており、アルコールやプリン体の多い食品の取りすぎにを避け、水分を十分に摂り適度な運動を心掛けるとされています。

結論としては、暴飲暴食を避けるというのが出来得る対策なのかもしれません。