二 汎東方アジア‐オセアニア域圏
(5)フィリピン
(ア)成立経緯
主権国家フィリピンを継承する領域圏。後述のように準領域圏を含む複合領域圏。
(イ)社会経済状況
積年の構造問題であったスペイン統治時代以来の半封建的な大土地所有制と少数の財閥による寡占的経済支配構造は、共産主義民衆革命により解消される。貨幣経済によらない持続可能的経済計画の導入により、経済を長年下支えしていた海外出稼ぎ労働も不要となる。
(ウ)政治制度
基本的には統合型の領域圏であるが、イスラーム教徒が多数を占めるミンダナオ島西部及びスールー諸島(バンサモロ地方)は高度の自治権を有する準領域圏として、全土民衆会議に固有の代議員議席が割り当てられる。
(エ)特記
大土地所有制が除去された農村の変革により、長年にわたる農村共産主義ゲリラ活動も収束する。
☆別の可能性
地主/財閥勢力の抵抗により民衆革命が不発に終わり、世界共同体に包摂されない可能性もある。一方で、情勢によってはバンサモロ地方が完全に分立する可能性もある。
(6)環海峡合同
(ア)成立経緯
主権国家マレーシアとボルネオ島(カリマンタン島)内の絶対君主小国ブルネイが合併して成立する連合領域圏に、シンガポールが加わって成立する合同領域圏。合同名の「海峡」とはマラッカ海峡を指す。
(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の2圏である。
○マレー‐ブルネイ
マレーシアの各州にブルネイを加えた準領域圏から成る連合領域圏。そのうちブルネイを含む10の準領域圏には独自の君主が存在するが、名目的な存在にとどまる。絶対王政のブルネイでも、民衆革命の結果、国王(スルタン)は名目的存在となり、民衆会議制度が確立される。
○シンガポール
主権国家シンガポールを継承する都市領域圏。長年の議会支配政党・人民行動党は解散する。
(ウ)社会経済状況
東南アジアでも最も高度な発展を見せていたマレーシア、シンガポールの資本主義的工業化を基礎に、持続可能的な計画経済に移行する。商業・金融立国であった都市国家シンガポールは貨幣経済の廃止に伴って経済的な基軸を喪失し、合同の共通経済計画を必要とすることが合同領域圏の成立につながる。
(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、マレー‐ブルネイ領域圏のブルネイに置かれる。
(オ)特記
東南アジアの中では資本主義的に最も成功を収めていた地域だけに、共産主義化には抵抗もあり、世界共同体連続革命の余波は遅れる可能性があるが、繁栄の陰に隠されていた富の偏在・格差拡大が共産主義民衆革命を後押しする要因となる。
☆別の可能性
独自性の強いブルネイはマレーシアと合併せず、単立の領域圏として合同に参加する可能性もある。また、かつてマレーシアから分離独立した経緯を持つシンガポールが合同に参加しない可能性もなくはない。