28日、日本で史上初めてとなる反原発環境政党・緑の党が結成された。欧州発の新しい政治潮流とはいえ、欧州に遅れることおよそ30年。きっかけとなったのは、間違いなく原発大事故であろう。
ただ、日本版緑の党が議会政党として成功・定着するかについては、いくつかの懸念がある。
まずは結党のタイミングである。大飯原発再稼動が大問題となっている渦中であるのは時宜に適っている。しかし、五輪期間中でメディアが五輪一色になるこの時期、平時でさえ無視されがちな小政党の動向がますます無視される懸念がある。
第二は選挙戦略。予定では2013年参院選で本格参入し、年内にも想定される衆院選では他団体・政党と連携して東京の比例区で候補を擁立するにとどめるという。しかし、13年の本格参入では原発事故から時間が経過しており、ホットなインパクトに欠ける恐れがある。
第三は党の基盤となる環境社会運動の分裂状況。緑の党が最も成功を収めているドイツでは多数の環境社会運動が横につながって結党し、党勢拡大にもつなげてきた。緑の党が環境社会運動のプラットフォームとしても機能している。ところが、日本ではあらゆる社会運動で観察されるバラバラの「蛸壺状況」が環境社会運動にも見られ、なかなか横につながれず、党の基盤が固まらない恐れがある。
第四は近年の日本政治で顕著な右傾化の進展。「維新の会」ブームに見られるように、大政党に支配された議会政治の行き詰まりの中で、欧州でも観察される極右政党が大衆的人気を集める情況がかの地以上に強まっているのだ。元来、緑の党は社会党(社民党)や共産党に並ぶ左派の座標系にある。その左派の座標系が現代日本では極端なほど先細っている中、緑の党がどこまで浸透するか。
最悪、緑の党自身が集票戦略上、右派の座標系に引き寄せられる危険すらある。実際、人気の高い石原東京都知事や維新の会も表面上「環境」の旗を掲げている中では、日本版緑の党がある種の「環境右派連合」に吸収される恐れもなしとしない。
第五は―無事、議会進出を果たしたとして―大政党との連立による理念後退の危険である。これは実際、社会民主主義政党との連立政権を経験したドイツとフランスの緑の党では起きていることである。元来、緑の党は資本主義の枠内での環境改革政党である点に限界があるわけだが、それが「現実主義」の大政党と連立を組むことで、いっそう現状保守的な「緑の資本主義」に傾斜してしまう恐れがあるのだ。
もっとも、保守二大政党化が進んだ日本では現状、緑の党の連立相手としてふさわしい大政党は見当たらない。しかし、緑の党が「権力への意志」を明確にすれば、保守系大政党との連立可能性も出てくるが、そうした場合の理念後退はドイツ・フランスのカウンターパートの比ではすまないだろう。
「権力への意志」を封じ、「万年野党」に徹することができるかどうかが日本版緑の党の課題となる。ただその場合、議員立法や質疑時間の厳格な制限といった小政党に不利な議会運営の壁が立ちはだかるだろう。
これらの懸念を乗り越えて日本版緑の党が成功すれば、滅びゆく議会政治に小さな清風を巻き起こす可能性はある。そこに、外野席からささやかな期待をしておきたい。