三 汎アメリカ‐カリブ域圏
(3)北アメリカ
(ア)成立経緯
アメリカ合衆国における革命の結果、カナダとの連合協議を経て成立する連合領域圏。その領域は、アメリカ合衆国本土48州のうち、メキシコに接する南西部4州(カリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス)がボーダーズアメリカ(後述)として分立したうえ、アメリカの飛地州だったアラスカ、現デンマーク領グリーンランドとともに極北領域圏として分立するカナダの準州及び単立領域圏として分立するケベック州を除いたカナダの領域を新たに加えて構成される。なお、ハワイ州を含む旧アメリカ合衆国海外領土は、すべて分立する。
(イ)社会経済状況
連合の持続可能的計画経済は、アメリカとカナダの産業基盤をもとに構築される。情報工学や各種学術に関しては、アメリカ及びカナダの先進性を継承し、世界共同体のリーディングな地位を持つ。リベラルなカナダと連合することで、アメリカ合衆国の保守性が緩和され、宿弊であった人種差別問題は解消に向かう。先住民保留地も解体され、先住民の統合も進む。また、カナダと連合することで、旧カナダ領域への人口移動が生じる。
(ウ)政治制度
連合民衆会議は、アメリカ合衆国本土州のうち上掲4州を除いた44州と、ケベックを除いたカナダの9州を継承する準領域圏、さらに準領域圏と同等の地位を付与される先住民族自治体から同数ずつ抽選された代議員で構成される。各準領域圏の代議員団長は連合代表者会議を構成し、連合全体に関わる重要議題の討議及び連合民衆会議が制定した連合共通法の施行を監督する。先住民族自治体を含む準領域圏は、独自の法体系を含む高度の自治権を持つ。連合代表都市はワシントンD.C.とオタワで4年おき交互に入れ替わる。フロリダ準領域圏の政治代表都市マイアミは、汎アメリカ‐カリブ域圏全体の政治代表都市でもある。
(エ)特記
革命前、世界最強を誇ったアメリカ合衆国軍隊は、常備軍の廃止を定める世界共同体憲章に基づき解体される。ただし、北アメリカは世界共同体平和維持巡視隊の主要な部隊を提供し、要員訓練センターも設置される。また、アメリカ合衆国の旧弊であった銃器の個人所有慣習は貨幣経済廃止を軸とする共産主義化に伴う治安の劇的な向上により、自然に消滅する。
☆別の可能性
カナダと連合せず、アメリカ合衆国の本土48州がそのまま連合領域圏に移行する可能性(その場合、カナダも別立ての連合領域園となる)、逆に、より確率は低いが、現行50州がすべて個別の領域圏として分立し、合衆国が完全に解体される可能性もなくはない。
(4)ボーダーズアメリカ
(ア)成立経緯
アメリカ合衆国のメキシコに接する南西部4州(カリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス)が分立し、それぞれを準領域圏として成立する連合領域圏。
(イ)社会経済状況
ボーダーズアメリカでは中南米にルーツを持つヒスパニック系人口が過半数を占め、準スペイン語圏となる。連合を構成する4つの準領域圏中、最大規模のカリフォルニアを中心に情報産業が集約されるほか、ハリウッドの映画産業も継承される。二番目に大きな準領域圏テキサスの石油産業は共産主義革命後、世界共同体の管理下に移行する一方、環境的に持続可能な集約的農業・牧畜業のモデル地域となる。また、当領域圏は北アメリカとメキシコの両隣接領域圏と経済協力協定を締結し、経済的に両者をつなぐ役割を果たす。
(ウ)政治制度
連合民衆会議の構成は北アメリカ領域圏と類似し、4つの準領域圏及び準領域圏と同等の地位を付与された先住民族自治体から同数ずつ抽選された代議員で構成される。英語とスペイン語の双方を対等な公用語とする。政治代表都市は、4つの準領域圏の主要都市で4年ごとに回り持つ。
(エ)特記
当領域圏のメキシコとの境界線は完全に開放されることはないが、警備は緩和され、原則として往来自由となる。
☆別の可能性
上述のように、4州を含むアメリカ合衆国本土48州がそのまま連合領域圏に移行する可能性もある。一方、より確率は低いが、4州は歴史的にメキシコの旧領土であった経緯から、南で隣接するメキシコと連合して、メキシコ領域圏に包摂される可能性もなくはない。