昨年の漢字は「暑」。記録的猛暑となったことが選字の理由のようであるが、昨年の猛暑は「暑」を越えた「熱」のほうがふさわしかっただろう。この異常気象の要因を人為的な気候変動にと見るか、あるいは一時的な異常気象に過ぎないと見るか、気象学上の論争が起こるだろう。
一方、政治の世界では、戦後初の完全なる政権交代が起きた一昨年2009年が「熱」であり、政権交代後初代の鳩山内閣が内紛から総辞職した昨年は「冷」であった。一年足らずでの総辞職は1993年の政権交代時の細川内閣を思い起こさせる。ともに「名門」出自の坊ちゃん宰相であった点でも、歴史を繰り返している。
菅首相の就任は、ある意味では民主党生みの親のご登場という意味もあり、本来の民主党政権となる可能性はあるが、そうなると、この党が持つ保革両義的な性格が濃厚になり、政策の焦点が定まらなくなる可能もある。今年の注目点になるだろう。
アメリカでも、2009年に熱狂の中、誕生したオバマ政権に対する中間審判となる上下両院選挙で、大統領与党の民主党が下院を落とし、上下院で「ねじれ」となった。早くもオバマのメッキが剥がれてきたか。
経済的な面では、2008年の世界大不況から一年余りを経て落ち着きを取り戻しつつあるように見えるが、そのダメージは何年も続くだろう。資本主義は新たな段階を迎えていると言える。
そうした中、長年温めてきた拙論『共産論』の草稿が完成した。これは、従来、旧ソ連の体制イデオロギーというプリズムを通した解釈されがちであった共産主義の概念について、ソ連のプリズムを除去して、一から再考・再定義する試みである。
ソヴィエト連邦解体からちょうど20周年を迎える節目に当たる今年は、この試みを公表するにふさわしい年度であると思う。その際、資本主義的著述の常道である商業出版は避け、ウェブ・ブログを通じた無償公開がふさわしいのではないかと考えているが、方法は考慮中である。