昨年最大の世界的な出来事は、中東ガザ戦争の勃発であることに異論はあるまい。同時に、これは今年も持ち越されて最大級の出来事になるだろう。対戦当事者はどちらも和平に向かう意思がなく、どちらかが滅亡するまで総力戦を続ける所存のようだからである。
この間、イスラエルは優位に立っているように見えるが、実際のところ、迷路のような地下通路が張り巡らされたハマースの地下要塞を攻めあぐねており、地上を壊滅させることで相手をあぶり出す作戦を取っているように見える。結果として、地上で大量犠牲者が出ているばかりか、救出すべきイスラエル人の人質にまで被害が及んでいる。
イスラエルがリスクの高い地下要塞攻めをためらい、地上壊滅作戦を継続すれば、意図しているとは言えなくとも、結果的にガザは更地となり、住民も排除されてジェノサイドに等しい事態となるが、第二次冷戦下にある分断された国際社会には、それを阻止するだけの力量はないだろう。
その第二次冷戦の契機となった一昨年来のウクライナ戦争も、解決の糸口は見えない。西側はウクライナ支持を口にしつつ、ウクライナに資金と兵器を供与して代理戦争を続けてきたが、ウクライナ軍単独でロシアを撃破することには無理があり、このままではウクライナでの戦争被害は拡大するばかりである。だが、西側首脳たちには、あえてロシアに宣戦布告して「欧州大戦」に発展させるような蛮勇はなさそうである。
一方、昨年の地球規模での最大事象と言えば、観測史上最も暑い夏、最も暑い日、最も暑い年というワースト「三冠」記録を達成する見込みとなったことである。その大きな要因として、昨年から続くパンデミック後のリバウンド過熱経済が拡大し、生産活動が極大化したことが想定される。化石燃料からの世界炭素排出量も過去最高を記録したことはそれを裏書きする。
その結果、地球環境の損傷にいっそうの拍車がかかった。地球環境の損傷は根治的に対処しなければ確実に進行して死に至る慢性疾患であるから、昨年は病気の進行度がさらに上がった年と言えるだろう。
しかし、世界の主流は依然として資本主義に固執し、それ以外のシステムを思考することすらしないから、地球の病気の進行を止める根治的な対策を打つ機運も生じない。昨年のCOP28での「エネルギーシステムにおける化石燃料からの漸次脱却」合意を含め、病気の進行を遅らせる対処を策しているに過ぎないから―その実効性すら怪しいが―、最終的な地球の死を防ぐことはできない。
外部環境的には資本主義はすでに終末期にあると言えるが、資本主義は強力な生命維持装置を装着したシステムであるから、本人や家族の同意なく生命維持装置の撤去はされないように、世界の大半の人々の同意なくして資本主義の生命維持装置も撤去されない。資本主義システムは今年もよろしく生き続けるだろう。