7 矯正センターと矯正スタッフ
矯正処遇の実施機関となるのが「矯正センター」であるが、「刑務所」とは異なり、もはや鉄格子も塀も備えず、建物外観はともかく、内部構造上は治療施設に類似したような施設となる。
とはいえ、「矯正処遇」は自由を拘束する処遇であるから、「矯正センター」入所者は許可なく外出することは禁じられ、無断外出者に対しては追跡と拘束が行われるが、無断外出自体を改めて逃走の犯則に問うことはなく、単にペナルティーとして必要的な処遇更新事由(処遇期間の延長)とされるにすぎない。
同様に、センター内での各種規律違反に対しても、それが新たな暴行、傷害その他の犯則に当たるような場合は別として、原則として譴責以上の処分は科せられず、ただ違反の内容に応じて処遇更新事由とされるにすぎない。
センター内での生活は個室で営まれ、入所者同士の接触に伴ういわゆる悪風感染や暴力行為を防止する一方、外部者との面会については、例えば加入していた反社会組織メンバーとの面会のように、矯正の妨げとなることが明らかな場合を除いては原則自由とする。また、読書や外部との通信も自由で、インターネットの利用も一定の有害サイトフィルター付きで認められる。
なお、矯正センターは純粋に処遇の実施のみを担い、同センターの申請に基づいて上述の更新を決定したり、また「終身監置」を司法機関に請求したりするのは、矯正に関する知見を有する有識者や法律家で構成する「矯正審査会」である。
「矯正センター」とは別個独立に設けられる同審査会は、上記の任務のほかに、矯正処遇対象者からの各種苦情申立ての審査と是正勧告も行うオンブズマン機能も備えた中立的な機関である。
「矯正処遇」の現場となる「矯正センター」で入所者の矯正に当たるのは「矯正員」である。矯正員はいわゆる「看守」ではなく、純粋に矯正実務の専門家、矯正科学の実践家である。前章でも見たとおり、「矯正処遇」は現行自由刑とは比較にならないほど科学的な観点から効果的な矯正を目指す制度であるから、矯正員は矯正科学に関する十分な素養を持つことが要求されるのである。
一方、矯正センターには一定の所内秩序の維持が必要であるが、そうした所内秩序の維持=警備と矯正の機能は完全に分離され、センター内の警備業務に当たるのは矯正員とは別枠で採用される「警務員」である。
ところで、矯正処遇では矯正員を中心に、チームで矯正が行われるが、このような処遇チームに参画するスタッフとして、臨床心理士や医師の資格を有する「処遇専門員」が常勤する。
これら処遇専門員は、特に治療的処遇が行われる第三種矯正処遇において、処遇チーム内の専門的な討議を通じて、処遇対象者の矯正に従事する。その他、処遇専門員は必要に応じて、第一種及び第二種矯正処遇においても、処遇対象者の個別矯正に関わることがある。