州に影響を及ぼさない通常の法案
【第75条】
1 第74条または第76条で設けられている手続きが適用される法案以外の法案を国民議会が可決したときは、その法案は全州評議会に付託され、以下の手続きに従って処理されなければならない。
(a)評議会は‐
(ⅰ) その法案を可決しなければならない。
(ⅱ) 評議会によって提案された修正を施して可決し、または
(ⅲ) その法案を否決しなければならない。
(b)評議会が修正を提案せず法案を可決した場合は、その法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(c)評議会が法案を否決し、または修正を施して可決した場合は、議会は評議会によって提起されたあらゆる修正を考慮に入れつつ、法案を再審議したうえ‐
(ⅰ) 修正するかしないかのいずれかをもって、その法案を再可決しなければな
らない。または
(ⅱ) その法案を廃案としなければならない。
d. c号の定めるところにより議会によって可決された法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
2 全州評議会が本条の定めるところにより議題について議決するときは、第65条は適用せず‐
(a)州を代表する各代議員は、一票を有する。
(b)当該議題について議決するには、代議員の三分の一以上の出席を必要とする。
(c)当該議題は、多数決によって決する。ただし、賛否が同数の場合は、主宰代議員が決定票を投じなければならない。
本条は憲法修正法案または次条に定める州に影響を及ぼす法案以外の通常法案に関する議決の手続きを定めている。衆議院に相当する国民議会の優越が保障されている。全州評議会では、州代議員団ごとに投票する原則は排除され、代議員一人一票制が適用される。
州に影響を及ぼす通常法案
【第76条】
1 国民議会が第4項、第4項または第5項で言及される法案を可決したときは、その法案は全州評議会に付託され、以下の手続きに従って処理されなければならない。
(a)評議会は‐
(ⅰ) その法案を可決しなければならない。
(ⅱ) 修正法案を可決し、または
(ⅲ) その法案を否決しなければならない。
(b)評議会が修正せず法案を可決した場合は、その法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(c)評議会が修正法案を可決した場合は、その修正法案は議会に付託され、議会が可決した場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(d)評議会が法案を否決し、または議会がc号の規定で言及された修正法案の可決を拒否した場合は、その法案及び該当する限り修正法案も、次の事項について合意すべく両院調整委員会に付託されなければならない。
(ⅰ) 議会によって可決された法案
(ⅱ) 評議会によって可決されたとおりの修正法案、または
(ⅲ) 別の修正法案
(e)両院調整委員会は法案が付託された後30日以内に合意できない場合は、その法案は議会がその議員の3分の2以上の賛成で再可決しない限り、失効する。
(f)両院調整委員会が議会によって可決されたとおりの法案で合意した場合は、その法案は評議会に付託されなければならず、評議会がその法案を可決した場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(g)両院調整委員会が評議会によって可決されたとおりの修正法案で合意した場合は、その法案は議会に付託されなければならず、議会によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(h)両院調整委員会が別の修正法案で合意した場合は、その修正法案は議会と評議会の双方に付託されなければならず、両院で可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(i)f号またはh号の定めるところにより評議会に付託された法案が評議会で可決されなかった場合は、その法案は議会がその議員の3分の2以上の賛成で可決しない限り、失効する。
(j)g号またはh号の定めるところにより議会に付託された法案が議会で可決されなかった場合は、その法案は失効する。ただし、議会によって可決された原法案は、その議員の3分の2以上の賛成により再可決されることができる。
(k)e号、i号またはj号の定めるところにより議会により可決された法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
2 全州評議会が第3項で言及される法案を可決したときは、その法案は国民議会に付託され、以下の手続きに従って処理されなければならない。
(a)議会は‐
(ⅰ) その法案を可決しなければならない。
(ⅱ) 修正法案を可決し、または
(ⅲ) 法案を否決しなければならない。
(b)a号の定めるところにより議会によって可決された法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(c)議会が修正法案を可決した場合は、その法案は評議会に付託されなければならず、評議会が可決した場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(d)議会が法案を否決し、または評議会がc号の定めるところにより付託された修正法案の可決を拒否した場合は、その法案、及び該当する限り修正法案は次の事項について合意すべく両院調整委員会に付託されなければならない。
(ⅰ) 評議会によって可決されたとおりの法案
(ⅱ) 議会によって可決されたとおりの法案、または
(ⅲ) 別の修正法案
(e)両院調整委員会が法案を付託された後30日以内に合意できない場合は、その法案は失効する。
(f)両院調整委員会が評議会によって可決された法案で合意した場合は、その法案は議会に付託されなければならず、議会によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(g)両院調整委員会が議会によって可決されたとおりの修正法案で合意した場合は、その法案は評議会に付託され、評議会によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(h)両院調整委員会が別の修正法案で合意した場合は、その修正法案は評議会及び議会の双方に付託されなければならず、両院によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。
(i)f号またはh号の定めるところにより議会に付託された法案が議会によって可決されなかった場合は、その法案は失効する。
3 附則第4条に掲げられた権能領域に含まれ、または以下の条項のいずれかで想定された法制度を規定する法案は、第1項か第2項のいずれかによって設けられた手続きに従って処理されなければならない。
(a)第65条第2項
(b)第163条
(c)第182条
(d)第195条第3項及び第4項
(e)第196条並びに
(f)第197条
4 以下の条項で想定された法制度を規定する法案は、第1項によって設けられた手続きに従って処理されなければならない。
(a)第44条第2項もしくは第220条第3項または
(b)第13章、かつ州の統治領域の財政的利益に影響を及ぼすもの
[b号は2003年第11次憲法修正法第1条により改正]
5 第42条第6項で想定される法案は、第1項によって設けられた手続きに従って処理しなければならない。ただし‐
(a)国民議会がその法案について議決する際は、第53条第1項は適用されない。この場合、その法案は国民議会議員の過半数の賛成による限り、可決されることができる。
(b)その法案が両院調整委員会に付託された場合は、以下の規定が適用される。
(ⅰ) 国民議会が第1項g号またはh号で想定される法案を可決した場合は、そ
の法案は議員の過半数の賛成による限り、可決されることができる。
(ⅱ) 国民議会が第1項e号、i号もしくはj号で想定される法案を審議し、また
は再審議する場合は、その法案は議員の3分の2以上の賛成による限り、
可決されることができる。
6 本条は、財政法案には適用されない。
前条に対して、本条は州に影響を及ぼす法案の処理に関する特則である。連邦国家として州の利益を最大限度保障するため、種々の場合に分けて、両院での調整を含め、事細かに手続きが定められていることから、極めて長大な条文となっている。ただし、ここでも国民議会の優越が保障されている。
財政法案
【第77条】
1 以下の内容の法案は、財政法案である。
(a)資金を充当すること。
(b)国税、負担金、徴収金または課徴金を課すこと。
(c)国税、負担金、徴収金もしくは課徴金を廃止し、減額し、または免除すること。
(d)国庫基金からの直接支出を授権すること。ただし、直接支出を授権する第214条で想定される法案を除く。
2 財政法案は、以下の事項を除く他のいかなる問題も扱わない。
(a)資金の充当に付随する副次的な問題
(b)国税、負担金、徴収金もしくは課徴金の賦課、廃止または減額
(c)国税、負担金、徴収金もしくは課徴金の免除、または
(d)国庫基金からの直接支出の授権
3 およそ財政法案は、第75条によって設けられた手続きに従って審議されなければならない。国会に上程された財政法案を修正する手続きは、国会の法律によって規定されなければならない。
[第77条は2001年第7次憲法修正法第2条により改正]
本条は、予算や国税等の財政に関わる法案の議決手続きに関する特則である。財政法案はその専門性の高さから、財産担当閣僚のみが発議権を持ち、かつ第75条の通常法案に準じた扱いがなされる。ただし、その内容は本条で定められたものに限定される。