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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第36回)

2022-12-25 | 南アフリカ憲法照覧

119. 法案の発議

州行政府の閣僚または州議会の委員会もしくは州議会議員のみが議会に法案を発議することができる。 ただし、州の財政問題を担当する州行政府の閣僚のみが、議会に財政法案を提出することができる。

 法案の発議と題する本条によれば、州議会における発議権を有するのは、州政府閣僚と州議会の委員会または議員個人である。ただし、財政法案の発議権は、州の財政担当大臣にのみ存する。

120. 財政法案

1. 以下の内容の法案は、財政法案である。

  a. 資金を充当すること。

    b. 州税、負担金、徴収金または課徴金を課すこと。

    c. 州税、負担金、徴収金もしくは課徴金を廃止し、減額し、または免除すること。

    d. 州庫基金からの直接支出を授権すること。

2. 財政法案は、以下の事項を除く他のいかなる問題も扱わない。

 a. 資金の充当に付随する副次的な問題。

 b. 州税、負担金、徴収金もしくは課徴金の賦課、廃止または減額。

 c. 州税、負担金、徴収金もしくは課徴金の免除、または

 d. 州庫基金からの直接支出の授権。

3. 州法は州議会が財政法案を修正するための手続きを定めなければならない。

 財政法案と題する本条は、前条但し書きを受ける形で、財政法案の定義及び範囲、さらに州議会による修正の手続きの法定について規定している。国の財政法案に関する77条にほぼ準じた内容である。

[第120条は2001年第7次憲法修正法により置換]

121. 法案への同意

1. 州首相は、この章の定めるところにより可決された法案に同意し、署名するか、または州首相が当該法案の憲法適合性に関して留保するときは、それを再審議のため国民議会に差し戻すかしなければならない。

2. 再審議の後、法案が州首相の留保に完全に対応しているときは、州首相は法案に同意し、署名しなければならない。そうでないときは、次のいずれかを選択しなければならない。

 a. 法案に同意し、署名する。

 b. 憲法適合性に関する決定を求めて、憲法裁判所に付託する。

3. 憲法裁判所が当該法案を合憲と決定したときは、州首相はそれに同意し、署名しなければならない。

 法案への同意と題する本条によれば、州首相が法案を保留にできるのは憲法違反を理由とする場合のみである(第1項)。その場合でも、憲法裁判所が合憲判断を下せば、州首相は法案に同意・署名をしなければならない(第3項)。

122. 州議会議員による憲法裁判所への訴願

1. 州議会議員は、州の法律の全部または一部が憲法に違反する旨を宣言する決定を得るため、憲法裁判所に訴願することができる。

2. 訴願は‐

 a. 州議会議員の20パーセント以上の賛成がなければならず、かつ

 b. 州首相が当該法律に同意し、署名した日から30日以内になされなければならない。

3. 憲法裁判所は、第1項で定める訴願の対象である法律の全部または一部は裁判所が訴願に関して次の点を決定するまでは効力を持たないことを宣言することができる。

 a. 司法的公正さがそれを要求すること、かつ

 b. 訴願が成功する合理的な見込みがあること。

4. 訴願が不成功であり、かつ成功する合理的見込みを欠いたときは、憲法裁判所は訴願者に対して費用の負担を命ずることができる。

 州議会議員による憲法裁判所への訴願と題する本条は、国会(国民議会)にも同様の規定(第80条)にほぼ準じているが、法律の違憲性訴願に必要な議員数は20パーセントと国会(三分の一)より緩和されている。

123. 州法の公刊

州首相によって同意され、署名された法案は法律となり、直ちに公刊されなければならず、公刊された時、またはその法律の定めるところにより決定された日に発効する。

 州法の公刊と題する本条は、国法に関する同様の規定(第81条)に準じている。

124. 州法の保管

州法の署名入り謄本は、その法律の諸条項の決定的な証拠であり、公刊後は、保管のため憲法裁判所に寄託されなければならない。

 州法の保管と題する本条によれば、公刊後の州法は憲法裁判所が保管する。これも国法に関する同様の規定(第82条)に準じている。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第35回)

2022-10-16 | 南アフリカ憲法照覧

114. 州議会の権限

1. 立法権を行使するに当たり、州議会は‐

 a. 議会に上程されたいかなる法律をも審議し、可決し、修正し、または否決することができる。

 b. 立法を開始し、または準備することができる。ただし、財政法案についてはこの限りでない。

2. 州議会は以下のような目的を持つ仕組みを定めなければならない。

 a. 州内の国の全地方行政機関が議会に責任を負うよう保証すること。

 b. 以下の事項への監督を維持すること。

  i. 法律の適用を含む州における州行政権の行使

  ii. 国のあらゆる地方行政機関

 州議会の権限と題する本条は、その表題どおり州議会の権限を定めている。その中心は言うまでもなく州法案の発議・審議と可決・修正にあるが、第2項で州法が国の地方行政機関の活動への監督の仕組みを定めるべきことを特に規定している。連邦制を徹底する趣旨と思われる。

115. 州議会に提出される証拠または情報

州議会またはそのいかなる委員会も‐

 a. 宣誓もしくは誓約に基づき証言し、または文書を提出するため、あらゆる人を召喚することができる。

 b. あらゆる個人または州の組織に対して議会への報告を求めることができる。

 c.  国の法律もしくは規則及び命令の定めるところにより、あらゆる個人もしくは組織に対して、a号もしくはb号に定める召喚または要求に応じるよう強制することができる。

 d.  利害関係を持つあらゆる個人もしくは組織から請願、説明または上申を受けることができる。

 州議会に提出される証拠及び情報と題する本条a号乃至c号は、州議会の調査権について定めている。d号は、州議会に対する個人や組織からの請願権に匹敵する内容である。
 以下、第118条までの内容は、国民議会に関する同種規定の準用に近く、州議会が国会の相似形的な地位を持つことを示している。

116. 州議会の内部的協議、議事及び手続き

1. 州議会は‐

 a. 内部的な協議、議事及び手続きを決定し、統制することができる。

 b. 代議的かつ参加的民主主義、説明責任、透明性及び公衆関与に適正な配慮をしつつ、その任務に関する規則及び命令を作成することできる。

2.州議会の規則及び命令は以下のことを定めなければならない。

 a. 委員会の設立、構成、権限、機能、手続き及び存続期間

 b. 議会の少数政党が議会及び委員会の議事に民主主義にかなった方法でする参加

 c. 議会に議席を持つ各党及びその党首が議会でその役割を有効に果たせるようにするための議席割合に応じた財政的及び事務的支援

 d. 議会における最大野党党首の野党首班としての認知

 議会の内部的な調整、進行及び手続き題する本条は、州議会の自律的な運営に関する規則制定権を定めている。その際、第一項b号にあるように、代議的かつ参加的民主主義、説明責任、透明性そして公衆関与が立法基準となる。また第二項c号にあるように、議会参加政党に対する財政支援に関しても、州議会規則で定められる。

117. 特権

1. 州議会議員及び全州評議会の州常任議員は‐

 a. 議会及び委員会において、その規則及び命令に従い、言論の自由を有する。

 b. 次のことを理由に、民事もしくは刑事の起訴、逮捕、投獄または損害賠償の責任を負わない。

  i. 議会もしくはそのあらゆる委員会において発言し、提示し、または上申した事柄

  ii. 議会もしくはそのあらゆる委員会において発言し、提示し、または上申した事柄の結果として明らかにされた事柄

2. その他の州議会及び議員の特権及び免責事項については、国の法律によって定めることができる。

3. 州議会議員に支払われる報酬、手当及び給付は、州庫基金の直接負担である。

 特権と題する本条は、州議会議員及び全州代表会議常任議員の討論の自由、不逮捕特権、免責特権に代表される諸特権に関する規定である。第三項は、州議会議員の報酬等が州庫からの直接払いであることを規定する。

118. 州議会への公衆のアクセス及び関与

1. 州議会は‐

 a. 議会と委員会の立法及びその他の手続きへの公衆の関与を促進しなければならない。

 b. その任務を開かれた方法で行い、かつ議会及び委員会の議事を公開しなければならない。ただし、次の目的のために合理的な措置を取ることができる。

  i. メディアの取材を含む公衆の議会及び委員会へのアクセスを規制すること。

  ii. 特定の人を捜索し、及び適切な場合は特定の人の入場を禁止し、または強制退場させること。

2.  州議会は、開かれた民主社会において合理性及び正当性が認められない限り、メディアを含む公衆を委員会の議事から排除しない。

 州議会への公衆のアクセス及び関与と題する本条は、州議会の立法過程への公衆の参加に関する一般的な規定である。ただし、第一項b号ⅱでメディア取材等のアクセス制限の要件が不明確な点は、国会に関する対応規定と同様である。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第34回)

2022-06-19 | 南アフリカ憲法照覧

108. 州議会の期間

1. 州議会は5年の任期で選出される。

2. 州議会が第109条に基づいて解散した場合、またはその任期が満了した場合、州首相は、公示により、選挙の日程を宣明し、設定しなければならない。選挙は、議会の解散または任期満了の日から90日以内に行われなければならない。選挙日程を宣明し、設定する公示は、州議会の任期満了前または満了後のいずれかに発せられる。

[第2項は1999年第4次憲法修正法第1条により置換]

3. 州議会の選挙結果が第190条に示された期間内に発表されなかった場合、または選挙が裁判所によって取り消された場合、大統領は、公示により、別の選挙日程を宣明し、設定しなければならない。この選挙は、第190条の期間が満了し、または選挙が取り消された日から90日以内に執行されなければならない。 

4. 州議会は、議会が解散され、または任期が満了した時から次の議会の投票の初日の前日まで活動することができる。

 州議会の期間と題する本条は、州議会の期間について定める。州議会の任期は5年である(第1項)。州議会選挙の宣言や日程の設定は州首相の任務である(第3項)。

109. 任期満了前の州議会の解散

1. 州首相は、次の各場合に州議会を解散しなければならない。

 a. 議会が、その議員の過半数の賛成で解散する決議を採択した場合。

 b. 議会が選挙されてから3年が経過した場合。

2. 首相代行は、次の各場合に州議会を解散しなければならない。

 a. 首相が欠けた場合

 b. 首相が欠けた時から30日以内に議会が新しい首相を選出できない場合。

 任期満了前の州議会の解散と題する条は、州議会の解散に関する規定である。それによると、州議会の解散は州首相(一定の場合は首相代行)の権限であるが、解散できるのは選挙から3年経過後か州議会自身の多数決による場合に限られるので(第1項)、州首相の解散権は形式的かつ義務的である。

110. 会期及び休会期間

1. 選挙後、州議会の最初の会期は、首席裁判官によって指名された裁判官によって決定された日時に開催されなければならない。ただし、それは選挙結果が発表されてから14日以内でなければならない。 州議会は、他の会期の期間及び休会の期間を決定することができる。

[第1項は2001年第6次憲法修正法第8条により置換]

2. 州首相は、特別な任務を行うために、いつでも州議会を特別会期に召集することができる。

3. 州議会は、通常の開催場所を決定することができる。

 会期及び休会期間と題する本条は、州議会の開会と休会に関する規定である。選挙後最初の会期の日時は公正を期して首席裁判官に指名された裁判官が決定する(第一項)。他の会期と休会の期間等及び通常開催する場所に関しては、州議会自身が決定できる(第1項、第3項)。

111. 議長及び副議長

1. 選挙後の最初の会期において、または欠員を補充するために必要な場合、州議会はその議員の中から議長及び副議長を選挙しなければならない。

2. 首席裁判官によって指名された裁判官は、議長の選挙を主宰しなければならない。 議長は副議長の選挙を主宰する。

[第2項は2001年第6次憲法修正法第9条により置換]

3. 附則第3条A部に定められている手続きは、議長及び副議長の選挙に適用される。

4. 州議会は、決議により、その議長または副議長を解任することができる。 その決議が採択されるには、議会の議員の過半数が出席しなければならない。

5. その規則及び命令の定めるところにより、州議会は、その議員の中から、議長及び副議長を補佐するためにその他の役員を選挙することができる。

 議長及び副議長と題する本条は、州議会議長及び副議長、その他州議会役員の選挙に関する規定である。議長選出の手続きは公正を期して首席裁判官に指名された裁判官が主宰する(第2項)。

112. 決議

1. 憲法が別段の定めをしている場合を除き- 

 a. 法案または法案の修正案に投票する前に、州議会の議員の過半数が出席していなければならない。

 b. 議会に上程されたその他のいかなる議案に投票する前にも、議員の3分の1以上が出席していなければならない。

   c.  州議会に上程されたすべての議案は、過半数の賛成によって議決される。

2. 州議会の会議を主宰する議員は、審議投票を行わない。ただし-

 a. 議案に関して可否同数の場合は、決定票を投じなければならない。

 b. 議案が議員の3分の2以上の賛成で議決されなけければならない場合は、審議投票をすることができる。

 決議と題する本条は、州議会の決議に関する諸規定である。修正法案を含む法案の議決は議員の過半数、それ以外の議題の場合は議員の3分の1以上の出席かつ過半数の議決で決せられる(第1項)。州議会の議事を主宰する者(通常は議長)は、可否の投票権を原則として持たないが、可否同数の場合は義務的決裁権、3分の2以上の賛成議決を要する議題の場合は任意的な投票権を持つ(第2項)。

113. 州議会における常任議員団の権利

全州評議会の常任議員団は、州議会及びその委員会に出席し、発言することができる。ただし、投票することはできない。 議会は、特定の常任議員を議会またはその委員会に出席させることができる。

 州議会における常任議員団の権利と題する本条は、全州評議会常任議員団または議員の州議会(委員会を含む)への出席の権利及び義務を定める。限定的ながら、州にを代表する上院相当の全州評議会と州議会の連携を保証する規定である。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第33回)

2022-05-01 | 南アフリカ憲法照覧

州議会

104. 州の立法権

1.州の立法権はその州議会に与えられ、州議会に以下の権限を授権する。

 a. その州の憲法を可決すること、または第142条及び第143条の定めるところにより可決された憲法を改正すること。

 b. 以下に関してその州の法律を可決すること。

  i. 附則第4条に掲げられている権能領域内のあらゆる事項。

  ii. 附則第5条に掲げられている権能領域内のあらゆる事項。

  iii. これらの権能領域外の事項であって、国の法律によって州に明示的に委任されているもの。

  iv.憲法の規定が州法の制定を想定している事項。

 c.その立法権のいずれかをその州内の市評議会に委任すること。

2. 州議会は、その議員の少なくとも3分の2の賛成で採択された決議により、国会にその州の名称を変更することを求めることができる。

3. 州議会は、憲法にのみ拘束され、州の憲法を可決した場合はその憲法にも拘束され、憲法及び州憲法に従い、その範囲内で活動しなければならない。

4. 附則第4条に掲げられている事項に関する権限の有効な行使のため合理的に必要な、またはそれに付随する事項に関する州法は、附則第4条に掲げられている事項に関する法律とみなす。

5. 州議会は、その議会の権限の範囲外の事項に関して、または国会の法律が州の法律に優先する事項に関して、国民議会の立法に勧告することができる。

 本条は、州議会の権限に関する総則規定である。南アフリカは連邦制のため、各州が独自の憲法を持つが、州憲法の制定改正は州議会の重要な権限である(第2項)。第5項は、州議会がその権限外または国法が州法に優越するような問題についても、国民議会(国会下院)に対して提起することを認めている。

105. 州議会の構成及び選挙

1. 州議会は、選挙制度の定めるところにより、議員として選挙された女性及び男性で構成される。その選挙制度は‐

 a. 国の法律によって規定される。

 b. 全国の一般有権者名簿におけるその州の区分に基づく。

 c. 18歳以上を投票年齢とする。

 d. 選挙結果は原則として比例代表による。

[第1項は2003年第10次憲法修正法第3条及び2008年第14次憲法修正法第3条により改正]

2. 州議会は、30人乃至80人の議員で構成される。 議員の数は州ごとに異なり得るが、国の法律で規定された原則に基づいて決定されなければならない。

 本条は、州議会の構成と選挙制度に関する規定である。州議会の選挙制度は国法で定められるが、国の選挙人登録の区分に基づき、おおむね比例代表制による。定数は国法に定められた公式に従い、30議席乃至80議席の範囲内で州ごとに決められる。

106. 議員資格

‎1. 国民議会に投票する資格のあるすべての市民は、州議会の議員になることができる。ただし、以下の者はこの限りでない。

 a. 以下に規定される者以外で、国によって任命され、または州に勤務しており、その任命または奉仕に対して報酬を受け取っている者。

  i. 州の首相およびその他の州行政府の閣僚。

  ii. その権限が州議会の議員の権限と互換性があり、国の法律によってそれらの権限と互換性があると宣言されているその他の役職者。

 b. 国民議会の議員、全州評議会の常任議員、または市評議会の議員。

 c. 更生していない破産者。

 d. 共和国の裁判所によって精神障碍を宣告された者。

 e. この条項が発効した後、犯罪行為で有罪判決を受け、違反を構成する行為が違反であった場合、共和国内または犯罪を構成する行為が共和国でも犯罪とされる限り、共和国外で罰金の選択刑なしに12か月以上の拘禁刑を宣告された者。ただし、有罪判決に対する上訴または刑が決定されるまで、または上訴の期限を過ぎるまでは、何人も刑を宣告されたものとみなされない。この条項に基づく失格は、刑期が満了してから5年後に終了する。

2. 第1項a号またはb号の定めるところにより州議会の議員になる資格がない人は、国の法律によって定められた制限または条件に従って、議会の議員候補者になることができる。

3. 州議会議員は、以下の各場合に州議会の議席を失う。

 a. 議員資格を失った場合。

 b. 議会の規則及び命令が議席の喪失を規定している限り、許可なく議会を欠席した場合。

 c. その人を議員候補者として指名した政党の党員ではなくなった場合。

[第3項は2003年第10次憲法修正法第4条及び2008年第14次憲法修正法第4条により置換]

4. 議会の欠員は、国の法律の定めるところにより補充されなければならない。

 本条は、州議会議員の被選挙権に関する条件を定めている。第1項e号は、犯罪行為により有罪判決を受けた者を排除する規定だが、無罪推定原則を厳格に遵守し、判決が確定するか、上訴期間が満了するまでは有罪とみなされないことを明記している。国会議員に関しても、同様の規定が存在した(第47条第1項e号)。

107. 宣誓または誓約

州議会の議員は、議会でその職務を遂行し始める前に、附則第2条に従って、共和国への忠誠及び憲法の順守を宣誓し、または誓約しなければならない。

 本条は、国会議員、大統領をはじめ、公職者すべてに共通して課せられた任務遂行前の宣誓または誓約の義務である。

 

※本記事より、条文番号の表記を南アフリカ共和国憲法原典に従った形式にします。例えば、104. 州の立法権」は、第104条とその見出しを意味します。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第32回)

2022-01-30 | 南アフリカ憲法照覧

第六章 州

 南アは連邦国家であるため、州は国を構成する重要な要素である。九つの州はそれぞれ固有の憲法を持ち、独自の立法府と行政府が設置される。

諸州

第103条

1 共和国は、以下の州を持つ。

(a)東ケープ

(b)自由邦

(c)ハウテン

(d)クワズールー‐ナタール

(e)リンポポ

(f)ムプマランガ

(g)北ケープ

(h)北西

(i)西ケープ

[第1項は2003年第11次憲法修正法第3条及び2005年第12次憲法修正法第1条により改正]

2 それぞれの州の地理的領域は、附則1Aに掲げられた注で参照される種々の地図上に反映・表示された地理的範囲の総体を含む。

[第2項は2005年第12次憲法修正法第1条により改正]

3 
(a) ある州の地理的領域が憲法修正によって再決定されるときは必ず、国会の法律で当該再決定の法的、実際的及び他のあらゆる結果を調整する手段を合理的な期間内に定めるものとする。

(b) a号で想定される国会の法律は、そうした憲法修正が発効する前に制定され、施行されるものとする。ただし、いかなる州の権限、財産、権利、義務または責務も、憲法修正が発効した後に初めて、当該法律の定めるところにより委譲されるものとする。

[第3項は2005年第12次憲法修正第12条第1項により改正]

 本条は、共和国を構成する州の区分とその地理的領域の決定・再決定に関する総則的な規定である。南アの州の区分は政策的な観点から、憲法修正によって変動する部分が大きいことがわかる。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第31回)

2022-01-15 | 南アフリカ憲法照覧

州行政への国の介入

[見出しは2003年第11次憲法修正法第2条a項により修正]

第100条

1 州が憲法もしくは法律の定める行政上の義務を果たすことができず、または果たさないときは、国家行政府はその義務を果たさせるため、以下のことを含むあらゆる適切な手段を講じて介入することができる。

(a)その義務を果たしていない程度を適示し、その義務を満たすのに必要な何らかの手段を明示した州政府向けの指示を出すこと。

(b)以下のことを実施するのに必要な限度で、当該州において関連する義務を果たす責任を引き受けること。

 (ⅰ) サービスの提供のための基本的な全国基準を維持し、または確立された最
     低基準を満たすこと。  

 (ⅱ) 経済的統合を維持すること。

 (ⅲ) 国家の安全を維持すること。

 (ⅳ) 当該州が他の州または国全体の利益にとって害となる不合理な行動を採ることを抑止すること。

[第1項は2003年第11次憲法修正法第2条により修正]

2 国家行政府が第1項b号の定めるところにより、ある州に介入する場合は―

(a)その介入の開始後14日以内に、全州評議会に対して介入を通知する書面を提出しなければならない。

(b)評議会が介入開始後180日以内に介入を不承認とし、またはその期間の満了までに介入を承認しなかったときは、介入は終了しなければならない。

(c)評議会は、介入の継続中、定期的に介入を評価し、国家行政府に対して何らかの適切な提言をしなければならない。

[第2項は2003年第11次憲法修正法第2条により改正]

3 国の法律は、本条で設けられた過程を規制する。

[第100条は2003年第11次憲法修正法第2条により修正]

 本条は、連邦制を前提としつつ、連邦の行政府が一定の場合に州に介入することを認める規定である。修正前は、「監督」(supervision)という用語であったが、これをより緩和し、州の自治を尊重したものであろう。

行政決定

第101条

1 大統領による決定は、次の各場合には書面でなされなければならない。

(a)法律の定めによる場合

(b)法的な効果を持つ場合

2 大統領の書面による決定は、その決定が他の閣僚の権限に関わる場合は、他の閣僚によって副署されなければならない。

3 布告、規則及びその他の下位法の手段は、公衆が知り得るものでなければならない。

4 国の法律は、第3項で規定された手段の次の点に関する方法及び程度について具体化する。

(a)国会への上程

(b)国会による承認

 本条は、国家行政府の長たる大統領による行政決定を書面化し、かつその手段となる下位法の透明性と国会の関与について規定したものである。国会が関与しない秘密裏の行政決定を許さない趣旨である。

不信任

第102条

1 国民議会が、その議員の多数決により大統領を含む内閣に対する不信任を決議したときは、大統領は内閣を再構成しなければならない。

2 国民議会が、その議員の多数決により大統領に対する不信任を決議したときは、大統領及び内閣の他の閣僚並びにいかなる副大臣も辞職しなければならない。

 南アは大統領制ながら、大統領は議会が選出する複選制であるため、大統領は議会に対して責任を負い、議院内閣制に準じて内閣または大統領に対する不信任決議の制度が存在していることが特徴である。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第30回)

2022-01-02 | 南アフリカ憲法照覧

閣僚及び副大臣の行為

第96条

1 閣僚及び副大臣は、国の法律に規定された倫理規則に従って行為しなければならない。

2 閣僚及び副大臣は、以下のことをしてはならない。

(a)他の有償の仕事を引き受けること。

(b)その職務と矛盾する仕方で行為すること、もしくはその公的責任と私的利益との間で衝突が生じる危険を含む状況に自身をさらすこと、または

(c)自身を富ませるため、またはその他の者に不当な便益を供与するために、その地位もしくは託された情報を利用すること。

 本条は、閣僚及び副大臣の行為規制について定めている。第2項では、有償の副業や利益相反、地位利用行為の禁止が具体的に定められているのが特徴である。通常は、不文か政令等の下位法規で定めるにすぎない閣僚の倫理規定を憲法化している点で、先進的かつ厳格と言える。

職務の委譲

第97条

大統領は、布告によって、特定の閣僚に以下の事項を委譲することができる。

(a)他の閣僚に託されたあらゆる立法の監督

(b)法律によって他の閣僚に託されたあらゆる権限または職務

職務の一時的な委任

【第98条

大統領は、職務を離れ、またはその権限を行使できず、もしくはその職務を遂行できない他の閣僚の権限もしくは職務を特定の閣僚に委任することができる。

職務の委任

第99条

閣僚は、国会の法律の定めるところに従って行使され、または遂行されるべき権限もしくは職務を州政府閣僚もしくは市評議会議員に委任することができる。その委任は‐

(a)関係する閣僚と州政府閣僚または市評議会議員の間の合意の定めによらなければならない。

(b)その定めるところにより関係する権限もしくは職務が行使され、または遂行される国会の法律と合致していなければならない。

(c)大統領の布告によって発効する。

 第97条から第99条までは、大統領及び閣僚による行政権限または職務の委譲や委任についての細則である。第99条は、国の地方への介入を定めた続く第100条とは逆に、国から地方への権限または職務の委任に関する規定である。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第29回)

2021-12-12 | 南アフリカ憲法照覧

内閣

第91条

1 内閣は、その長たる大統領、副大統領及び大臣で構成する。

2 大統領は、副大統領及び大臣を任命し、その権限及び職務を委任し、かつ罷免することができる。

3 大統領は‐

(a)副大統領を国民議会議員の中から選任しなければならない。

(b)いかなる大臣も国民議会議員の中から選任することができる。

(c)2人を超えない大臣を議会外から選任することができる。

4 大統領は、閣僚の1人を国民議会における政府任務の首班として任命しなければならない。

5 副大統領は、政府の機能の遂行において、大統領を補佐しなければならない。

 本条は、大統領制下での内閣の構成について定めている。大統領は内閣の長を兼ね、副大統領及び大臣の任免権を掌握する強力な存在であるが、2人以内の大臣を除き、すべて下院に相当する国民議会の議員から選任することとされ、議会との連携を図っている。第4項の政府首班大臣は首相に近い存在であるが、議院内閣制下の首相とは異なり、あくまでも大統領の配下で政府任務を主導する存在にとどまる。

行為責任と結果責任

第92条

1 副大統領及び大臣は、大統領によって委任された行政の権限及び職務について責任を負う。

2 閣僚は、その権限の行使及び職務の遂行について、集団的及び個別的に議会に対して責任を負う。

3 閣僚は‐

(a)憲法に従って行為しなければならない。

(b)その管理下にある諸問題に関する完全かつ定期の報告を議会に提供しなければならない。

 第2項で、内閣は集団的にも議会に対して責任を負うとされるのは、議院内閣制下の責任内閣制に近い面を持つ。大統領制ながら議会を重視する南ア特有の構制の表れである。

副大臣

第93条

1 大統領は‐

(a)いかなる副大臣も国民議会議員の中から任命することができる。

(b)閣僚を補佐するため、2人を超えない副大臣を議会外から任命し、かつ罷免することができる。

2 第1項b号の定めるところにより任命された副大臣は、その権限の行使及び職務の遂行について、議会に対して責任を負う。

[第93条は2001年第6次憲法修正法第6条により修正]

 副大臣は内閣を構成しないが、やはり大統領が大臣に準じて任命(免)する。

選挙後の内閣の存続

第94条

国民議会の選挙が実施されたときは、内閣、副大統領、大臣及びいかなる副大臣も、次期議会によって選挙された大統領が就任するまで引き続き職務を行なう。

宣誓及び誓約

【第95条】

副大統領、大臣及び副大臣は、その職務を開始する前に、附則第2条に従い、共和国への忠誠及び憲法への服従を宣誓し、または誓約しなければならない。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第28回)

2021-11-21 | 南アフリカ憲法照覧

大統領の選挙

第86条

1 国民議会は、その選挙後最初の会期において、及び欠員を満たす必要があるときはいつでも、その議員の中から1名の女性または男性を大統領に選出しなければならない。

2 首席裁判官は、大統領の選挙を主宰し、または他の裁判官にそれを指示しなければならない。附則第3条A部に掲げられた手続き[訳出者注:公選公務員の選挙に関する共通規定]は、大統領の選挙に適用される。

[第2項は2001年第6次憲法修正法第6条により改正]

3 大統領職の空席を満たす選挙は、首席裁判官によって決められた日時に実施されなければならない。ただし、それは空席が生じてから30日を超えない日時とする。

[第3項は2001年第6次憲法修正法第6条により改正]

 大統領は国民議会議員の中から選挙されることとされ、議会中心主義が徹底されている。このような議会内選挙を原則として首席裁判官が主宰するのは、国民議会議長選挙と同様である。

大統領への就任

第87条

大統領に選出されたときは、議員は国民議会の議席を離れ、5日以内に、附則第2条に従い、共和国への忠誠及び及び憲法への服従を宣誓し、または誓約したうえで大統領に就任しなければならない。

 大統領に選出された議員が議員の地位を失う点では議院内閣制下の首相とは異なり、立法と行政が分離された大統領制の枠組みである。

大統領の任期

第88条

1 大統領の任期は就任により開始し、空席または次期大統領の就任により終了する。

2 何人も、二期を超えて大統領職を保持することはできない。ただし、空席を満たすために選出された場合は、当該選挙と次期大統領選挙の間の期間は任期とはみなされない。

大統領の罷免

【第89条】

1 国民議会は、以下の各理由に基づいてのみ、その3分の2以上が賛成する議決によって、大統領を罷免することができる。

(a)憲法または法への重大な違反

(b)重大な非行

(c)職務遂行上の無能

2 第1項a号またはb号の定めるところにより大統領を罷免された者は、大統領職に伴ういかなる利益をも享受してはならず、かついかなる公職を務めることもできない。

 大統領は三選禁止制を採り、かつ国民議会は一定の場合に大統領を罷免することができる。罷免事由はややあいまいではあるが、重大な法令違反や非行を理由として罷免された場合は、大統領職に伴う利益もその他の公職に就く権利も失うという厳しい制裁を受ける。

大統領代行

第90条

1 大統領が共和国に不在であるとき、もしくは他の理由で大統領としての職務を果たせないとき、または大統領職が空席の間は、以下の職にある者が大統領を代行する。

(a)副大統領

(b)大統領によって指名された大臣

(c)他の閣僚によって指名された大臣

(d)国民議会が他の議員を指名するまでは、議長

2 大統領代行は、大統領としての責任、権限及び職務を有する。

3 大統領代行は、大統領としての責任、権限及び職務を果たす前に、附則第2条に従い、共和国への忠誠及び憲法への服従を宣誓し、または誓約しなければならない。

4 すでに大統領代行として共和国への忠誠を宣誓し、または誓約した人は、次期大統領に選出された人が就任する時に終了する大統領代行としての続任期のために宣誓または誓約の手続きを繰り返す必要はない。

[第4項は1997年第1次憲法修正法第1条により置換]

 大統領代行者の順位や権限等を指示した規定である。副大統領等の自動昇格ではなく、あくまでも代行職である。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第27回)

2021-11-21 | 南アフリカ憲法照覧

第五章 大統領及び国家行政府

 第五章は、国家行政権に関する規定である。行政府の長は大統領であるが、アパルトヘイト時代から議会が大統領を選出する複選制を採用しているため、大統領は議会の信任に依拠する首相に近い側面を持つ。このような独特の構制は、南アが1961年に共和制に移行する以前、英連邦内で英国王を君主とする議院内閣制を採っていた名残かもしれない。

大統領

第83条

大統領は‐

(a)国家元首にして、国家行政府の長である。

(b)憲法を共和国の最高法規として支持し、擁護し、及び尊重しなければならない。

(c)国家の統一及び共和国を前進させるそれを推進する。

 本条では大統領の地位及び義務、任務が簡潔に示されている。要するに、大統領は国の長として、憲法尊重擁護義務と国家の統一維持の任務を負っている。

大統領の権限及び職務

第84条

1 大統領は、国家元首及び国家行政府の長の職務を果たすのに必要なものを含め、憲法及び立法によって託された権限を有する。

2 大統領は、以下のことについて責任を負う。

(a)法案に同意し、署名すること。

(b)法案の憲法適合性を再審議するため、法案を国民議会に差し戻すこと。

(c)法案の憲法適合性に関する決定を得るため、法案を憲法裁判所に付託すること。

(d)特別の任務を遂行するため、国民議会、全州評議会または国会の特別会を召集すること。

(e)国家行政府の長として以外に、憲法または立法が大統領に要求するあらゆる任命をすること。

(f)各種調査委員会を任命すること。

(g)国会の法律の定めるところにより、国民投票を実施すること。

(h)外国の外交使節及び領事を接受すること。

(i)大使、全権大使、その他の外交使節及び領事を任命すること。

(j)犯罪者を赦免し、あらゆる罰金、刑罰、没収を軽減すること。

(K)栄典を授与すること。

 本条は大統領の権限を列挙している。おおむね諸国の君主を含む国家元首の権限と同様であるが、b号やc号のように、憲法適合性の確保に関して大統領の役割が大きいのが特徴である。大統領に憲法擁護者としての役割が期待されていることが窺える。

共和国の行政権

第85条

1 共和国の行政権は、大統領に与えられる。

2 大統領は、以下の方法により、他の閣僚とともに、行政権を行使する。

(a)憲法または国会の法律が別に定める場合を除いて、国の法律を施行すること。

(b)国の政策を発展させ、施行すること。

(c)国の省庁の機能を調整すること。

(d)立法を準備し、開始すること。

(e)憲法または立法が規定するその他のあらゆる行政的職務を遂行すること。

 共和国の行政権は大統領の専権ではなく、閣僚と共同行使することとして、大統領独裁を抑止している。この点からも、南ア大統領は首相に近い地位を有することがわ窺える。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第26回)

2021-10-31 | 南アフリカ憲法照覧

両院調整委員会

第78条

1 両院調整委員会は、次の者で構成する。

(a)国民議会の規則及び命令によって規定され、かつ議会における各政党の議席配分と実質上同一の比率となるような手続きに従って議会が選挙した9人の国民議会議員

(b)全州評議会の各州代表によって任命された各1人の議員

2 両院調整委員会は、ある法案または議題が次の人数の賛成を得たときは、それに合意したものとする。

(a)国民議会代表の5人以上、かつ

(b)全州評議会代表の5人以上

 両院調整委員会は日本の両院協議会に相当する国会内調整機関である。委員の構成上、各党の議席配分が反映される仕組みになっている。

法案への同意

第79条

1 大統領はこの章の定めるところにより可決された法案に同意し、署名するか、または大統領が当該法案の憲法適合性に関して留保するならば、それを再審議のため国民議会に差し戻すかしなければならない。

2 国民議会による再審議及びその過程への全州評議会の参加の手続きは、両院合同の規則及び命令によって定められなければならない。

3 全州評議会は、以下の各場合に、大統領が国民議会に差し戻した法案の再審議に参加しなければならない。

(a)法案の憲法適合性に関する大統領の留保が、評議会に係る手続き上の問題に関連している場合

(b)第74条第1項、第2項、第3項または第76条が法案の可決に適用される場合

4 再審議の後、法案が大統領の留保に完全に対応しているときは、大統領は法案に同意し、署名しなければならない。そうでないときは、次のいずれかを選択しなければならない。

(a)法案に同意し、署名する。

(b)憲法適合性に関する決定を求めて、憲法裁判所に付託する。

5 憲法裁判所が当該法案を合憲と決定したときは、大統領はそれに同意し、署名しなければならない。

 大統領は法案の留保権(拒否権)を持つ。その場合、二度目の留保は認められない代わり、選択肢として憲法裁判所への付託という手段が与えられている点は革新的である。

国民議会議員による憲法裁判所への訴願

第80条

1 国民議会議員は、国会の法律の全部または一部が憲法に違反する旨を宣言する決定を得るため、憲法裁判所に訴願することができる。

2 訴願は‐

(a)国民議会議員の3分の1以上の賛成がなければならず、かつ

(b)大統領が当該法律に同意し、署名した日から30日以内になされなければならない。

3 憲法裁判所は、第1項で定める訴願の対象である法律の全部または一部は裁判所が訴願に関して次の点を決定するまでは効力を持たないことを宣言することができる。

(a)司法的公正さがそれを要求すること、かつ

(b)訴願が成功する合理的な見込みがあること。

4 訴願が不成功であり、かつ成功する合理的見込みを欠いたときは、憲法裁判所は訴願者に対して費用の負担を命ずることができる。

 憲法裁判所への訴願は、憲法裁判所制度の中心的な手続きである。国民議会による決議要件や期限の制約が厳しい点については、議論の余地があるかもしれない。

法律の公刊

【第81条】

大統領によって同意され、署名された法案は法律となり、直ちに公刊されなければならず、公刊された時、または法律の定めるところにより決定された日に発効する。

国会の法律の保管

【第82条】

国会の法律の署名入り謄本は、その法律の諸条項の決定的な証拠であり、公刊後は、保管のため憲法裁判所に寄託されなければならない。

 憲法裁判所は法律謄本の保管任務も負う。本条が国会に関する第四章の最終条である。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第25回)

2021-10-10 | 南アフリカ憲法照覧

州に影響を及ぼさない通常の法案

第75条

1 第74条または第76条で設けられている手続きが適用される法案以外の法案を国民議会が可決したときは、その法案は全州評議会に付託され、以下の手続きに従って処理されなければならない。

(a)評議会は‐

 (ⅰ) その法案を可決しなければならない。

 (ⅱ) 評議会によって提案された修正を施して可決し、または

 (ⅲ) その法案を否決しなければならない。

(b)評議会が修正を提案せず法案を可決した場合は、その法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(c)評議会が法案を否決し、または修正を施して可決した場合は、議会は評議会によって提起されたあらゆる修正を考慮に入れつつ、法案を再審議したうえ‐

 (ⅰ) 修正するかしないかのいずれかをもって、その法案を再可決しなければな
     らない。または

 (ⅱ) その法案を廃案としなければならない。

d. c号の定めるところにより議会によって可決された法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

2 全州評議会が本条の定めるところにより議題について議決するときは、第65条は適用せず‐

(a)州を代表する各代議員は、一票を有する。

(b)当該議題について議決するには、代議員の三分の一以上の出席を必要とする。

(c)当該議題は、多数決によって決する。ただし、賛否が同数の場合は、主宰代議員が決定票を投じなければならない。

 本条は憲法修正法案または次条に定める州に影響を及ぼす法案以外の通常法案に関する議決の手続きを定めている。衆議院に相当する国民議会の優越が保障されている。全州評議会では、州代議員団ごとに投票する原則は排除され、代議員一人一票制が適用される。

州に影響を及ぼす通常法案

【第76条】

1 国民議会が第4項、第4項または第5項で言及される法案を可決したときは、その法案は全州評議会に付託され、以下の手続きに従って処理されなければならない。

(a)評議会は‐

 (ⅰ) その法案を可決しなければならない。

 (ⅱ) 修正法案を可決し、または

 (ⅲ) その法案を否決しなければならない。

(b)評議会が修正せず法案を可決した場合は、その法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(c)評議会が修正法案を可決した場合は、その修正法案は議会に付託され、議会が可決した場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(d)評議会が法案を否決し、または議会がc号の規定で言及された修正法案の可決を拒否した場合は、その法案及び該当する限り修正法案も、次の事項について合意すべく両院調整委員会に付託されなければならない。

 (ⅰ) 議会によって可決された法案

 (ⅱ) 評議会によって可決されたとおりの修正法案、または

 (ⅲ) 別の修正法案

(e)両院調整委員会は法案が付託された後30日以内に合意できない場合は、その法案は議会がその議員の3分の2以上の賛成で再可決しない限り、失効する。

(f)両院調整委員会が議会によって可決されたとおりの法案で合意した場合は、その法案は評議会に付託されなければならず、評議会がその法案を可決した場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(g)両院調整委員会が評議会によって可決されたとおりの修正法案で合意した場合は、その法案は議会に付託されなければならず、議会によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(h)両院調整委員会が別の修正法案で合意した場合は、その修正法案は議会と評議会の双方に付託されなければならず、両院で可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(i)f号またはh号の定めるところにより評議会に付託された法案が評議会で可決されなかった場合は、その法案は議会がその議員の3分の2以上の賛成で可決しない限り、失効する。

(j)g号またはh号の定めるところにより議会に付託された法案が議会で可決されなかった場合は、その法案は失効する。ただし、議会によって可決された原法案は、その議員の3分の2以上の賛成により再可決されることができる。

(k)e号、i号またはj号の定めるところにより議会により可決された法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

2 全州評議会が第3項で言及される法案を可決したときは、その法案は国民議会に付託され、以下の手続きに従って処理されなければならない。

(a)議会は‐

 (ⅰ) その法案を可決しなければならない。

 (ⅱ) 修正法案を可決し、または

 (ⅲ) 法案を否決しなければならない。

(b)a号の定めるところにより議会によって可決された法案は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(c)議会が修正法案を可決した場合は、その法案は評議会に付託されなければならず、評議会が可決した場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(d)議会が法案を否決し、または評議会がc号の定めるところにより付託された修正法案の可決を拒否した場合は、その法案、及び該当する限り修正法案は次の事項について合意すべく両院調整委員会に付託されなければならない。

 (ⅰ) 評議会によって可決されたとおりの法案

 (ⅱ) 議会によって可決されたとおりの法案、または

 (ⅲ) 別の修正法案

(e)両院調整委員会が法案を付託された後30日以内に合意できない場合は、その法案は失効する。

(f)両院調整委員会が評議会によって可決された法案で合意した場合は、その法案は議会に付託されなければならず、議会によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(g)両院調整委員会が議会によって可決されたとおりの修正法案で合意した場合は、その法案は評議会に付託され、評議会によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(h)両院調整委員会が別の修正法案で合意した場合は、その修正法案は評議会及び議会の双方に付託されなければならず、両院によって可決された場合は、同意を得るため、大統領に回付されなければならない。

(i)f号またはh号の定めるところにより議会に付託された法案が議会によって可決されなかった場合は、その法案は失効する。

3 附則第4条に掲げられた権能領域に含まれ、または以下の条項のいずれかで想定された法制度を規定する法案は、第1項か第2項のいずれかによって設けられた手続きに従って処理されなければならない。

(a)第65条第2項

(b)第163条

(c)第182条

(d)第195条第3項及び第4項

(e)第196条並びに

(f)第197条

4 以下の条項で想定された法制度を規定する法案は、第1項によって設けられた手続きに従って処理されなければならない。

(a)第44条第2項もしくは第220条第3項または

(b)第13章、かつ州の統治領域の財政的利益に影響を及ぼすもの

[b号は2003年第11次憲法修正法第1条により改正]

5 第42条第6項で想定される法案は、第1項によって設けられた手続きに従って処理しなければならない。ただし‐

(a)国民議会がその法案について議決する際は、第53条第1項は適用されない。この場合、その法案は国民議会議員の過半数の賛成による限り、可決されることができる。

(b)その法案が両院調整委員会に付託された場合は、以下の規定が適用される。

 (ⅰ) 国民議会が第1項g号またはh号で想定される法案を可決した場合は、そ
     の法案は議員の過半数の賛成による限り、可決されることができる。

 (ⅱ) 国民議会が第1項e号、i号もしくはj号で想定される法案を審議し、また
     は再審議する場合は、その法案は議員の3分の2以上の賛成による限り、
     可決されることができる。

6 本条は、財政法案には適用されない。

 前条に対して、本条は州に影響を及ぼす法案の処理に関する特則である。連邦国家として州の利益を最大限度保障するため、種々の場合に分けて、両院での調整を含め、事細かに手続きが定められていることから、極めて長大な条文となっている。ただし、ここでも国民議会の優越が保障されている。

財政法案

第77条

1 以下の内容の法案は、財政法案である。

(a)資金を充当すること。

(b)国税、負担金、徴収金または課徴金を課すこと。

(c)国税、負担金、徴収金もしくは課徴金を廃止し、減額し、または免除すること。

(d)国庫基金からの直接支出を授権すること。ただし、直接支出を授権する第214条で想定される法案を除く。

2 財政法案は、以下の事項を除く他のいかなる問題も扱わない。

(a)資金の充当に付随する副次的な問題

(b)国税、負担金、徴収金もしくは課徴金の賦課、廃止または減額

(c)国税、負担金、徴収金もしくは課徴金の免除、または

(d)国庫基金からの直接支出の授権

3 およそ財政法案は、第75条によって設けられた手続きに従って審議されなければならない。国会に上程された財政法案を修正する手続きは、国会の法律によって規定されなければならない。

[第77条は2001年第7次憲法修正法第2条により改正]

 本条は、予算や国税等の財政に関わる法案の議決手続きに関する特則である。財政法案はその専門性の高さから、財産担当閣僚のみが発議権を持ち、かつ第75条の通常法案に準じた扱いがなされる。ただし、その内容は本条で定められたものに限定される。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第24回)

2021-09-19 | 南アフリカ憲法照覧

(第四章)国の立法過程

法案全般

第73条

1 いかなる法案も国民議会に発議される。

2 閣僚もしくは副大臣または国民議会議員もしくはその委員会のみが、国民議会に法案を発議することができる。ただし、次の法案については、国家財政問題を担当する閣僚のみが議会に発議することができる。

(a)財政法案

(b)第214条で想定される立法[訳出者注:国家歳入の地方への配分に関する立法]を規定する法案

[第2項は2001年法律第61号第一条a項により改正]

3 第76条で言及された法案については、本条第2項a号またはb号で言及された法案を除いて、全州評議会に発議される。

[第3項は2001年法律第61号第1条b項により改正]

4 全州評議会代議員またはその委員会のみが、評議会に法案を発議することができる。

5 国民議会で可決された法案は、全州評議会によって審議されなければならないときは、評議会に付託される。全州評議会で可決された法案は、国民議会に付託されなければならない。

 本条から第四章最終の第82条までは、立法過程に関する細目的な規定が並ぶ。本条はその総則に当たり、法案の発議を中心とした原則が示されている。予算案を中心とする財政法案と歳入配分法案については財政担当閣僚にのみ発議権が与えられていること、全州評議会は州の代表院であることから、発議権は全州評議会代議員またはその委員会の専権とされていることが特筆される。

憲法修正法案

第74条

1 第1条及び本項は、次の要件によって可決された法案によって修正される。

(a)国民議会における75パーセント以上の議員の賛成、かつ

(b)全州評議会における6州以上の賛成

2 第二章は、次の要件によって可決された法案によって修正される。

(a)国民議会における3分の2以上の議員の賛成、かつ

(b)全州評議会における6州以上の賛成

3 その他の憲法条項は、次の要件によって可決された法案によって修正される。

(a)国民議会における3分の2以上の議員の賛成、かつ

(b)修正内容が以下の場合、全州評議会における6州以上の賛成

 (ⅰ) 評議会に影響を及ぼす問題に関わる場合。

 (ⅱ) 州境、州の権限、機能もしくは制度を変更する場合、または

 (ⅲ) ある州の問題を特別に扱う条項を修正する場合。

4 憲法修正法案は、憲法修正及び修正と結びつく問題以外の条項を含まない。

5 第73条第2項の定めるところにより憲法修正法案が発議される少なくとも30日前に、法案を発議しようとする人または委員会は―

(a)国民議会の規則及び命令に従い、パブリックコメントを得るため、修正提案の明細を官報で公表しなければならない。

(b)国民議会の規則及び命令に従い、その見解を得るため、州議会に提案明細を提出しなければならない。

(c)提案された修正が全州評議会で可決される必要のない修正である場合、全州評議会の規則及び命令に従い、公開討議に供するため、評議会に提案明細を提出しなければならない。

6 憲法修正法案が発議されたときは、その法案を発議している人または委員会は、公衆及び州議会から受け取ったいかなる意見書も、次の者に提出しなければならない。

(a)国民議会に上程するため、その議長

(b)第1項、第2項または第3項b号で言及された修正に関しては、全州評議会に上程するため、その議長

7 憲法修正法案は、次の時点から30日以内は国民議会の投票に付されない。

(a)法案が発議された時に国民議会が開会中であるなら、その発議の時。または

(b)法案が発議された時に国民議会が休会中であるなら、議会に上程された時。

8 第3項b号で言及された法案または当該法案の一部が特定の州もしくは複数の州にのみ関わる場合は、全州評議会は関係する州もしくは複数の州の議会によって承認されない限り、当該法案を可決しない。

9 国民議会、及び該当する場合は全州評議会によって可決された憲法修正法案は、同意を得るため大統領に回付されなければならない。

 本条は、憲法修正法案の可決条件や発議手続きを中心とした規定である。南ア憲法は議会の法律によって修正(改正)が可能な反面、修正内容ごとに要件を細かく設定することで、安易な修正に歯止めをかけている。共和国の政体を定めた第1条と憲法改正要件に関する本条第1項の改正要件が最も厳格で、基本的人権に関する第二章の改正要件がそれに次ぐ。
 また憲法修正法案の発議に際しては、事前にその提案明細を公表し、公衆や州からも意見を聴取することが義務付けられるなど、憲法改正に関する透明性と社会的な論議の機会が保障されていることも特徴である。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第23回)

2021-09-05 | 南アフリカ憲法照覧

全州評議会の権限

【第68条】

立法権を行使するに当たり、全州評議会は‐

(a)この章に従い、全州評議会に上程されたあらゆる法案を審議し、可決し、修正し、修正案を提起し、または否決することができる。

(b)附則第4条に掲げられた権能領域内の立法もしくは第76条第3項で言及されたその他の立法を開始し、または準備することができる。ただし、財政法案についてはこの限りでない。

全州評議会に提出される証拠または情報

【第69条】

全州評議会またはそのいかなる委員会も‐

(a)宣誓もしくは誓約に基づき証言し、または文書を提出するため、あらゆる人を召喚することができる。

(b)あらゆる組織または個人に対して報告を求めることができる。

(c)国の法律もしくは規則及び命令の定めるところにより、あらゆる個人もしくは組織に対し、a号もしくはb号に規定する召喚または要求に応じるよう強制することができる。

(d)利害関係を有するあらゆる個人もしくは組織から、請願、説明または上申を受けることができる。

全州評議会の内部的協議、議事及び手続き

【第70条】

1 全州評議会は‐

(a)その内部的協議、議事及び手続きを決定し、統制することができる。

(b)代議的かつ参加的民主主義、説明責任、透明性及び公衆関与に適正な配慮をしつつ、その任務に関する規則を作成することできる。

2 全州評議会の規則及び命令は次のことを定めなければならない。

(a)委員会の設立、構成、権限、機能、手続き及び存続期間

(b)すべての州が評議会及び委員会の議事に民主主義にかなった方法でする参加

(c)ある議題が第75条に従って決定される場合に、評議会に議席を持つ少数政党が評議会及び委員会の議事に民主主義にかなった方法でする参加

特権

【第71条】

1 全州評議会代議員並びに第66条及び第67条で言及された人は―

(a)評議会及び委員会において、その規則及び命令に従い、言論の自由を有する。

(b)次のことを理由に、民事もしくは刑事の起訴、逮捕、投獄または損害賠償の責任を負わない。

 (ⅰ) 評議会もしくはそのあらゆる委員会において発言し、提示し、または上申した事柄

 (ⅱ) 評議会もしくはそのあらゆる委員会において発言し、提示し、または上申した事柄の結果として明らかにされた事柄

2 全州評議会、全州評議会代議員及び第66条及び第67条で言及された人のその他の特権並びに免責事項は、国の法律によって定められる。

3 全州評議会代議員に支払われる報酬、手当及び給付は、国庫基金の直接負担である。

評議会への公衆のアクセス及び関与

【第72条】

1 全州評議会は‐

(a)評議会及び委員会の立法並びにその他の手続きへの公衆の関与を促進しなければならない。

(b)その任務を開かれた方法で行い、かつ評議会及び委員会の議事を公開しなければならない。ただし、次の目的のために合理的な措置を取ることができる。

 (ⅰ) メディアの取材を含む公衆の評議会及び委員会へのアクセスを規制すること。

 (ⅱ) 特定の人を捜索し、及び適切な場合は特定の人の入場を禁止し、または強制退場させること。

2 全州評議会は、開かれた民主社会において合理性及び正当性が認められない限り、メディアを含む公衆を委員会の議事から排除しない。

 第68条から第72条までは、全州評議会の権限や代議員特権等に関する細則である。国民議会に関する第55条乃至第59条に相応する部分である。
 国民議会の場合と重なる点も多いが、権限に関しては国民議会にあった監督の権限は存在しない。また全州評議会は州の代表院であることから、その議事等は各州の平等な参加が確保されるように配慮される。

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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第22回)

2021-08-20 | 南アフリカ憲法照覧

全州評議会の会期

【第63条】

1 全州評議会は、会期及び休会の時期及び期間を定めることができる。

2 大統領は、特別の任務を行なうため、いつでも全州評議会を召集することができる。

3 全州評議会は、公益、治安及び便宜を理由としてのみ、かつ評議会の規則及び命令で定められている限り、国会の所在地以外の場所で開くことが許される。

議長及び副議長

【第64条】

1 全州評議会は、その代議員の中から1名の議長及び2名の副議長を選挙しなければならない。

2 議長及び副議長の1人は、その代議員としての任期がより早く満了しない限り、5年の任期で常任代議員の中から選挙される。

3 他の副議長は、1年任期で選挙され、すべての州が輪番で代表されるように、別の州選出の代議員によって継承されなければならない。

4 首席裁判官は議長の選挙を主宰し、または他の裁判官にそれを指示しなければならない。議長は副議長の選挙を主宰する。

[第4項は2001年法律第34号第5条により改正]

5 附則第3条A部に掲げられた手続きは、議長及び副議長の選挙に適用される。

6 全州評議会は、議長及び副議長を解任することができる。

7 その規則及び命令の定めるところにより、全州評議会はその代議員の中から議長及び副議長を補佐する他の役員を選挙することができる。

議決

【第65条】

1 この憲法が別に定めている場合を除き‐

a. 各州は一票を有し、それは議員団長により州を代表して投票される。

b. 全州評議会に上程されたすべての議案は、少なくとも五つの州がその議案に賛成票を投じたときに、合意される。

2 第76条第1項または第2項によって設けられた手続き[訳出者注:州に影響を及ぼす法案に関する特別手続]に従って制定される国会の法律は、州議会が自らを代表して投票する権限を代議員団に付与するための統一的な手続きを規定しなければならない。

国の高位行政官の参加

【第66条】

1 閣僚及び副大臣は、全州評議会に出席し、発言することができる。ただし、投票することはできない。

2 全州評議会は、閣僚、副大臣または国もしくは州の行政府の官僚に対し、評議会の会議または委員会に出席するよう求めることができる。

自治体代表者の参加

【第67条】

第163条に規定される自治体組織によって自治体の種々の部門を代表すべく選任された10人以内の非常任の代表者は、必要なときは、全州評議会の議事に参加することができる。ただし、投票することはできない。

 第63条から第67条までは、国民議会とともに二院制議会を構成する全州評議会の会期や議長以下の役員の選挙、議決方法や閣僚等の出席権等の細目が簡潔に定められている。国民議会に関する第51条乃至第54条に対応する部分である。
 内容的には、国民議会の場合と重なる点もあるが、全州評議会は各州の代表院であることから、その議決は州のために州代議員団ごとに行なう点が、国民議会と大きく異なる。また大統領は出席しない一方で、自治体代表者の参加が認められる点も異なる。

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