26日の安倍首相による靖国神社参拝は、国民向けの1日遅れのクリスマス・プレゼントとなった。だが、このプレゼントは世界から芳しくない評価を受けており、外交的孤立を懸念する声が政権筋からも出ている。
しかし、頼みの米国を含めた世界の反発を計算済みであえて敢行されたなら、これは外交的孤立も覚悟の一つの政治戦略―孤立化戦略である。その狙いは消費増税決定後の支持率低下を歯止め、政権発足1年の節目に当たり政権基盤を引き締めることである。その効果は一定出ており、ネット世論調査では参拝後、支持率急伸という結果も見られる。
外交的には戦略的な誤りを指摘する意見もあるが、安倍政権としては、普天間基地移設の早期解決で対米得点を稼ぎ、アジア政策は中国・韓国など反日感情の強い東アジアを飛び越えてインドや中東など西へ手を広げる戦略を進めれば孤立は一時的なものと踏んでいるのだろう。
こうした孤立化戦略は、世界が何を言おうが譲れないものがあるという国内向けの強い指導者像の演出によって国民の愛国心を刺激し、政権の求心力を高める統治術として、しばしば権力政治的に使われる。中国の一方的な防空識別圏設定や朝鮮のミサイル発射もそうした戦略の一つで、日本の靖国参拝がこれに加わり、近時の東アジアではこうした孤立化戦略の角突き合いが続いている。
日米同盟によって米国にくくりつけられているため孤立化戦略を取りにくい日本にとって、ほとんど唯一対米自立を演出できるのは、靖国参拝という「魂」の分野しかない状態なのであるが、それを高支持率維持のために有効活用する戦略は、小泉政権が前例を作っている。
もっとも、以上は安倍政権が世界の反発を予め計算に入れていた場合のことである。特に盟主・米国の否定的反応のトーンを読み違えていたのなら、まさに誤算の失策だったことになる。