一 汎西方アジア‐インド洋域圏
(13)アフガニスタン
(ア)成立経緯
主権国家アフガニスタンを継承する統合領域圏。ただし、現パキスタンの北西地域カイバル・パクトゥンクワ州が新たに編入される(後述)。
(イ)社会経済状況
20世紀後半以来の内戦の継続により、経済は崩壊状態に置かれていたが、持続可能的計画経済の導入によって復興する。持続可能的な農業開発により、アヘン原料となるケシ栽培に依存する必要もなくなる。社会経済の安定化に伴い、結果として、内戦の産物であったイスラーム過激主義勢力も衰亡し、自然消滅する。
(ウ)政治制度
内戦により台頭した軍閥の地方支配を排除するため、30以上に分岐している州を15の地方圏に整理したうえ、あえて集権性の強い統合領域圏として再編される。少数民族保護のため、民族問題オンブズマンが設置される。
(エ)特記
パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州は、元来アフガニスタンの多数民族であるパシュトゥン人が大半を占める地域であるが、19世紀に当時の英国が引いた人為的な境界線デュアランド・ラインによって旧英領インドに編入されて以来、分断されてきた。これが「返還」される形でアフガニスタンに編入されることで、ようやく植民地主義の歴史に終止符が打たれることになる。
☆別の可能性
イスラーム宗教勢力の支配が何らかの形で継続され、世界共同体に包摂されることなく、ある種の鎖国状態となる可能性もある。より望ましくない可能性として、世界共同体支持勢力との内戦状態となる可能性もなしとしない。
(14)イラン
(ア)成立経緯
主権国家イランを継承する統合領域圏。ただし、クルド系住民が多い北部のコルデスターン州は多民族クルディスタン領域圏に分立・編入される。
(イ)社会経済状況
イスラーム共和国時代の経済制裁による経済閉塞は、世界共同体に加入することで解消される。石油は世界共同体による共同管理体制に移され、主要産業ではなくなるが、元来多角的に発展していた工業力を基礎に、持続可能的計画経済下でも汎西方アジア‐インド洋域圏内ではパキンディアに次ぐ経済規模を持つ。
(ウ)政治制度
イスラーム共和国時代の宗教指導者を頂点とする祭政一致体制は解体され、他の領域圏と同様の民衆会議体制に移行する。30以上あった州を15の地方圏に整理再編したうえ、地方自治を強化する。
(エ)特記
シーア派の宗教的拠点マシュハドは、聖廟特別都市として、民衆会議体制の枠組み内で宗教指導者評議会によって自治的に統治される。
☆別の可能性
アフガニスタンと同様に、強力な宗教支配が継続し、世界共同体に包摂されない可能性もある。他方、世界共同体に包摂された場合は、州を準領域圏に格上げして自治権を強化し、多民族社会を基盤とした連合領域圏となる可能性もある。