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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第8回)

2023-12-24 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

一 汎西方アジア‐インド洋域圏

(13)アフガニスタン

(ア)成立経緯
主権国家アフガニスタンを継承する統合領域圏。ただし、現パキスタンの北西地域カイバル・パクトゥンクワ州が新たに編入される(後述)。

(イ)社会経済状況
20世紀後半以来の内戦の継続により、経済は崩壊状態に置かれていたが、持続可能的計画経済の導入によって復興する。持続可能的な農業開発により、アヘン原料となるケシ栽培に依存する必要もなくなる。社会経済の安定化に伴い、結果として、内戦の産物であったイスラーム過激主義勢力も衰亡し、自然消滅する。

(ウ)政治制度
内戦により台頭した軍閥の地方支配を排除するため、30以上に分岐している州を15の地方圏に整理したうえ、あえて集権性の強い統合領域圏として再編される。少数民族保護のため、民族問題オンブズマンが設置される。

(エ)特記
パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州は、元来アフガニスタンの多数民族であるパシュトゥン人が大半を占める地域であるが、19世紀に当時の英国が引いた人為的な境界線デュアランド・ラインによって旧英領インドに編入されて以来、分断されてきた。これが「返還」される形でアフガニスタンに編入されることで、ようやく植民地主義の歴史に終止符が打たれることになる。

☆別の可能性
イスラーム宗教勢力の支配が何らかの形で継続され、世界共同体に包摂されることなく、ある種の鎖国状態となる可能性もある。より望ましくない可能性として、世界共同体支持勢力との内戦状態となる可能性もなしとしない。


(14)イラン

(ア)成立経緯
主権国家イランを継承する統合領域圏。ただし、クルド系住民が多い北部のコルデスターン州は多民族クルディスタン領域圏に分立・編入される。

(イ)社会経済状況
イスラーム共和国時代の経済制裁による経済閉塞は、世界共同体に加入することで解消される。石油は世界共同体による共同管理体制に移され、主要産業ではなくなるが、元来多角的に発展していた工業力を基礎に、持続可能的計画経済下でも汎西方アジア‐インド洋域圏内ではパキンディアに次ぐ経済規模を持つ。

(ウ)政治制度
イスラーム共和国時代の宗教指導者を頂点とする祭政一致体制は解体され、他の領域圏と同様の民衆会議体制に移行する。30以上あった州を15の地方圏に整理再編したうえ、地方自治を強化する。

(エ)特記
シーア派の宗教的拠点マシュハドは、聖廟特別都市として、民衆会議体制の枠組み内で宗教指導者評議会によって自治的に統治される。

☆別の可能性
アフガニスタンと同様に、強力な宗教支配が継続し、世界共同体に包摂されない可能性もある。他方、世界共同体に包摂された場合は、州を準領域圏に格上げして自治権を強化し、多民族社会を基盤とした連合領域圏となる可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第7回)

2023-12-15 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

一 汎西方アジア‐インド洋域圏

(11)環ヒマラヤ合同

(ア)成立経緯
ヒマラヤ山脈を囲む主権国家のネパールとブータン、中国から分立するチベット、さらにインドから分立するシッキムが合同して成立する合同領域圏

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。

○ネパール
主権国家ネパールを継承する連合領域圏

シッキム
ネパールとブータンをつなぐ位置にあるインドのシッキム州が分立し成立する統合領域圏

○ブータン
主権国家ブータンを継承する統合領域圏

チベット
中国からチベット自治区が分立して成立する統合領域圏

(ウ)社会経済状況
経済的には圧倒的に農牧業が主軸となるが、貨幣経済の廃止と合同全域での環境的に持続可能な農牧業の施行により、貧困問題は解消される。電力事業は水力発電が盛んなブータンが担う。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設して、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ブータンのティンプーに置かれる。また、次項のパキンディアとの歴史的な結びつきの強さから、パキンディア連合民衆会議にオブザーバーを送る。ブータンの君主制は廃止されるが、王は精神的指導者としての地位を保持する。チベットでも、化身世襲制の宗教指導者ダライ・ラマは精神的指導者としての地位を保持する。

(オ)特記
ネパールとの合同化により、ブータンが抱えていた多数派チベット系住民と少数派ネパール系住民の民族紛争が解決される。

☆別の可能性
シッキム州はインドから分立せず、次項パキンディアに留まる可能性もある。また、チベット仏教を共有するチベットとブータンが一つの統合領域圏となる可能性もなくはない。一方、そもそも合同化せず、四つの領域圏が別個の領域圏として分立する可能性もあるが、その場合も何らかの協力機関が設置されることが望ましい。

 

(12)パキンディア

(ア)成立経緯
主権国家インドとパキスタンが統合して成立する連合領域圏。ただし、インドの西ベンガル州はベンガリスタンに、アフガン系住民の多いパキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州はアフガニスタンに編入される。名称パキンディアは、パキスタンとインドの英語名であるインディアを合成したもの。

(イ)社会経済状況
汎西方アジア‐インド洋圏内で最大の人口を擁する領域圏となる。インドとパキスタンは21世紀には共に資本主義的な経済成長を遂げ、新興国として台頭しつつも、人口爆発もあり、貧困問題を解決できずにいたが、貨幣経済の廃止と統合的な計画経済の導入により、貧困問題が解消される。それに伴い、特にパキスタンで跋扈していた宗教過激主義も収束する。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、ともに連邦国家であるインドとパキスタンの州を継承する準領域圏から100人、連合直轄圏から20人ずつ抽選された代議員で構成される。連合民衆会議は、インドのニューデリーとパキスタンのイスラマバードで一期ごと交互に開催される。多宗教社会のため、各派宗教指導者で構成される宗教評議会が常設され、宗教紛争の解決に当たる。

(エ)特記
ヒンドゥー系のインドとイスラーム系のパキスタンとして英国から分離独立して以来、両国はカシミール地方の領有権争いも絡み、常に緊張関係に立ってきたが、世界共同体の下に統合を果たし、長年の対立を解消する。世界共同体憲章の戦力保有禁止規定により、ともに非公認で保有していた核兵器も廃棄され、平和が回復される。

☆別の可能性
望ましいことではないが、印パの対立が解消されず、インドとパキスタンが分立したまま、別個の連合領域圏に移行する可能性もある。また、ブータンがパキンディアに加入する可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第6回)

2023-12-06 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

一 汎西方アジア‐インド洋域圏

(9)スリランカ

(ア)成立経緯
主権国家スリランカを継承する統合領域圏。前出環インド洋合同領域圏の招聘領域圏ともなる。

(イ)社会経済状況
21世紀以降、資本主義的経済成長を続けていたが、地域格差や絶対的貧困の問題を抱えていたところ、貨幣経済によらない計画経済の導入により、こうした問題は解消する。旧植民地プランテーションの流れを汲む茶の生産は環境的に持続可能な農業計画の下に再編される。

(ウ)政治制度
統合型領域圏であるが、主権国家時代からの地方分権化の取り組みを受け継ぎ、広域自治体である地方圏の自治権が広く認められる。

(エ)特記
かつて激しい内戦の要因ともなった多数派仏教徒シンハラ人と少数派ヒンドゥー教徒タミル人の抗争は、党派性のない抽選制による民衆会議制度の導入により止揚される。加えて、民族紛争や少数民族差別を防止するため、準司法的な機能を備えた民族問題弁務監の制度が常設される。

☆別の可能性
可能性としては高いと言えないが、インドを基軸とする南アジアという伝統的な地域区分を脱して、環インド洋合同領域圏の正式なメンバー領域圏となる可能性もある。

 

(10)ベンガリスタン

(ア)成立経緯
主権国家バングラデシュ継承しつつ、インドの西ベンガル州全域を編入して成立する統合領域圏

(イ)社会経済状況
主権国家バングラデシュの時代に構造的な問題となっていた絶対的貧困率の高さは、貨幣経済によらない計画経済の導入により解消される。主権国家時代に設立されたNGOも経済計画に参加する。インド時代にインド東部の経済的中心地となっていた西ベンガルの編入によって主権国家時代より領域面積が西に拡張されたことで、経済的な基盤が強化され、高い人口密度も緩和される。環境的に持続可能な計画農業の発展により、農村の貧困も解消され、海外出稼ぎ労働の必要もなくなる。

(ウ)政治制度
統合型領域圏であるが、中央集権制の強かった主権国家時代は名目的な地方区分にすぎなかった地方管区が自治的な地方圏に転換され、地方分権化が進められる。

(エ)特記
インドから編入される西ベンガルは元来、バングラデシュの主要民族であるベンガル人住民が多数を占めていた地域であり、編入によりベンガル人の分断が解消され、名称もベンガリスタンに変更される。

☆別の可能性
可能性としては高くないが、ベンガル系住民(ロヒンギャ)がイスラーム教徒少数派として民族浄化の標的となり、大量の難民を出してきたミャンマー側ラカイン州の現バングラデシュ国境に近い一部地域を分割編入することで、ロヒンギャ問題解決の一助となる可能性もなくはない。

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