フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

「REBORN!」ゴクツナ(ディノヒバ風味)小説②

2008年01月04日 | オタクな日々

 去年やると言ってやらなかったこと・・・書きかけのオリジナルJUNEを完成させる、HPを作り直す・・・ははは。果たして今年中にやれるのか?!
 去年やったこと・・・オフ活動からの引退・・・ははは。どうもあやしくなりそうな予感。冬コミでゲストじゃなく自分でコピー本とはいえ出してりゃ、もうだめじゃん、な気がしないでもないな!
 それでは「REBORN!」続き・完結です。

   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



「ふわ──っ、疲れたあ」
 シャワーを浴び、持参したパジャマに着替えたツナは、広いベッドに大の字に転がった。
「ちゃんとオレ、間違えずに言えたよな。そのあとも、へましてないよな?ずっと九代目と一緒だったし……」
 九代目と次期ボスに次々と挨拶にやって来る出席者たちの、名前と顔を覚える余裕などなく、張り付いた笑顔で握手を返すのが精一杯だった。その間に、同じく獄寺と山本も人々に囲まれてしまい、気がつくと二人の姿は見えなくなっていた。人々がそれぞれ歓談したり飲み始め、挨拶から解放された頃には、もう日付が変わっていた。
 ようやく挨拶しかできなかったディーノのところへ行き、互いの近況やヒバリの様子などを聞くことができて、ツナはほっと緊張がほぐれた。
「悪いな。恭弥はこの町までは連れてきたんだが、パーティーに出席させるのは無理だったぜ」
「いやそんな、いいですよ!ヒバリさんは誰にも動かされる人じゃないですから!」
「おいおい、その恭弥をお前はこれからうまく動かさなきゃいけないんだからな。というか、あいつが自ら動く気にさせないとな。…ま、今のところは大丈夫じゃないか?あいつはオレが突っ込んだ学校は勝手に退学してきたが、自分で選んだ学校にはちゃんと通ってるし、うちのシマの外で暴れて腕を磨いているし。──敵対中のファミリーを一人で壊滅させてきたときには、後始末が大変だったけどな」
 ディーノは苦笑いした。その後ろのロマーリオの渋い顔を見て、軽い口調ではあるが本当に大変だったのだと気づいて、ツナは縮み上がった。
「す、済みません!オ、オレ、知らなくて……!」
 ペコペコ謝るツナの肩をディーノは押さえた。
「やめろ。お前はもうボンゴレの後継者なんだから、他のファミリーのボスに軽々しく頭を下げるんじゃねぇよ。……で、相談なんだが、恭弥はお前の守護者だからお前の許可がほしい。今客人扱いの恭弥を、ボンゴレからキャバッローネへの助っ人の身分にしたい」
「え……どういうことですか……?」
「あいつの力が必要なんだ。あいつにもボンゴレにも悪いようにはしない。お前がいいと言えば、その先は九代目と話をつける」
「……わかりました。オレはディーノさんを信頼してますから」
「ありがとうよ!恩に着るぜ、ツナ」
 彼はツナの肩を叩いて、じゃ、と九代目と話をしに行った。
 他には知っている顔もなく(リボーンはこどもなので、お披露目が済むとすぐ就寝する、と部屋へ戻ってしまった)、ツナは九代目に断って部屋に引き上げた。
(二人で先に出てっちゃったのかな……。待っててくれると思ったのに)
 獄寺君は絶対最後までいると思ったのに……と考えてツナはドキンとした。
(バカ。図々しいぞ、オレってば、そんな勝手に自惚れて……)
 スーツにタイを締めて、値踏みされながらそれに負けじと笑い返して、握手に力を込める自分なんて、自分でなくなってしまいそうだった。こんなとき獄寺君がそばにいて、振り返ればニヤッと笑って(オレがついてますよ)と言ってくれれば、絶対大丈夫だと思っていたのに。
(だめだだめだ、そんなふうに人を頼ってばかりいるから、オレはいつまでたってもダメツナなんだ。こんなんじゃ十代目失格だ。獄寺君にも……)
 胸がずきりと痛んだ。ふら、とツナは体を起こして、パジャマの胸を握りしめた。
(……獄寺君に……嫌われちゃう……)
 昼間あんなに幸せで、不安なんて何一つなかったのは、自分の心に気づいていなかったからだ。こんなにも獄寺の存在で自分の心は晴れも曇りもすることに。なぜなら彼が、自分を「十代目」と呼んだあの日から、彼はいつもそばにいてくれたから。自分のために節を曲げても生きて帰ってきてくれて、彼が離れていく可能性なんて、いつの間にかみじんも考えなくなってしまっていた。
 人々の挨拶を受けながら、ちらりと見た獄寺は、山本に通訳してやっているのだろう、親しげに山本の肩に手を置き、大人びた表情で幹部の大人たちと談笑していた。孤立しがちでお世辞にも愛想がいいとは言えなかった、出会った頃の彼の面影はなく、ハンサムでスマートな、堂々たる幹部候補にしか見えなかった。そういえば彼はイタリアの名家の生まれで、頭も良くて、定期考査で学年トップを譲ったことはない。中学の教師も、彼が並盛高へ進むのはもったいないと嘆いてた。
(十代目と同じ学校以外、オレが行くところなんてないっス)
 さらりと言った彼の言葉の重みも知らず、ただ単純に、彼と三年間同じ学校に通えると喜んでいた自分。彼は本当はもっとすごい人なんだ、もっと上に行くべき人なのに、自分のせいで彼は……
 涙が流れ落ちる瞳をつむってしまわないように力をこめ、ツナは歯を食いしばった。
(オレは……君が誇れるような男になりたい……)
 いつまでそうしていたのか、彼はノックの音に気づいた。それは何度も鳴らされていたようで、ツナが慌てて室内履きをつっかけてドアに向かう間にも、また遠慮がちに叩かれる。
「Si、Si」
「……十代目、オレです」
「獄寺君?」
 ツナはもう一度目元を袖で拭ってからドアを開けた。そこにはまだスーツを着たままの獄寺が立っていた。
「すみません、お休みのところ……」
「獄寺君こそ、まだ休んでなかったの?」
「ちょっと、山本を介抱していたので…」
 ツナは獄寺を招き入れ、ソファに座った。
「山本?どうかしたの?」
「はあ。最初の一杯以外はジュースを飲んでいたんですが、うっかりカクテルを飲んじまったみたいで、酔っ払って倒れたんです。あいつ、アルコール全然だめらしくて、医者呼んだりとんだ騒ぎでしたよ」
「あ……そうだったんだ。オレ、全然気がつかなくてゴメン」
 それで途中から二人ともいなくなったのかと、ツナは無意識に目をこすった。
「……」
「それで山本は大丈夫なの?」
「注射打ってもらって、眠ってます。二日酔いくらいにはなるかもしれませんが、たいして飲んだわけじゃないので」
「よかった…。ありがとう、獄寺君」
「いえ。……ちょっと失礼します、十代目」
 獄寺は急に立ち上がると、上着を脱いで、ツナに羽織らせた。
「パジャマ一枚じゃ冷えます」
「あ…ありがとう……」
 獄寺の服からは、煙草の匂いがした。止めたわけではないようだが、彼は今はツナの前では吸わないようにしている。種類も変えたらしく、時々甘いバニラの匂いがした。ツナは煙草の煙もにおいも苦手だが、その匂いだけはそれほどいやではなかった。……だからそれに変えたのかもしれない。この服にも、その甘い香りがくゆっていた。
「……十代目」
「うん?」
「正直に……言ってほしいんです」
 獄寺は苦しそうに、眉を寄せた。
「十代目は、自分のためじゃなく、皆のために跡目を継ぐ決意をされたと言われた。そういうあなただからこそ、オレたちはついて行こうと思っています。ですが……逆に、オレたちが……いえ、山本たちは知らずにリングを受け取ったのだから、オレが……オレがあなたに十代目を継いでほしいと望まなければ……あなたを助けたいという気持ちに変わりはありません。でももし必ずしもボンゴレのボスになってほしいわけじゃないと言っていれば、あなたは十代目を継ごうとは思わなかったんじゃないですか?オレが……あなたに自分の望みを押しつけてしまった……そうじゃないですか?!」
「そんなこと……違……」
 違わない、とツナは言葉を呑み込んだ。九代目の期待、父の期待、リボーンの期待……自分が認められ、求められることが重荷ではなく喜びとなったことも、動機のひとつだった。だけど何より……獄寺が一生そばにいてくれると思わなかったとは……自分の気持ちに気づいてしまった今では、決して言えない。けれど……
「確かに……君が、オレを十代目として認めてくれなかったら、オレはなろうと思わなかったかもしれない。だけど!これはオレの意思なんだ。決めたのはオレ自身なんだから、君に押しつけられたわけじゃないよ」
「同じです……!オレは…!自分のために、あなたが本当は望んでいた普通の人生、争いだのマフィアだのとは無縁な生活を取り上げてしまった……!」
 立ち上がり、両の拳を震わせる獄寺に、たまらずツナも立ち上がる。
「違う!オレは君が望んだから……オレがボスになれば、君を失わずに済むと思って……。…ただの沢田綱吉のそばになんか、君はいてくれない。君はどこか他のボスを見つけてそこへ行ってしまう。こどもだった君はだめだったかもしれないけど、今の君なら、どこのファミリーだってほしがるよ!君は強くて…頭も良くて…なんでもできて……オレは……十代目になるって決めたけど、君が右腕になりたいと思えるようなボスになる自信なんて全然ない……。ボスになった動機だって、こんな……君を引き止める手段だなんて……オレは、ボンゴレ十代目失格だ……」
 言っているうちに情けなさと恥ずかしさで、涙が溢れ出すのを止めることができなくなった。獄寺の顔を見ることもできず、両手で顔を覆って立ち尽くす。
「……十代目……」
 獄寺の声は、かすれていた。
「オレがあなたに十代目になってほしいと思ったのは、もちろんあなたがそれにふさわしいとと思っているからですが、それだけじゃありません……。もしあなたがボスにならず、オレが他のボスに仕えたとしても、そのボスのために命をかけることはできない。それじゃファミリーの一員として失格です。だけど、オレにはもう、あなた以外の誰かのために死ぬことも、生きることもできない。オレが一生あなたのそばにいるためには、あなたにボンゴレのボスになってもらって、あなたの部下になるしかない。そう身勝手に考えたんです。オレは本当は、許されない……不遜な想いをあなたに抱いている……」
 ツナは、温かいものが自分を包み込むのを感じた。背中だけではなく、体中が甘い香りに包まれて、自分が抱きしめられていることを知る。
「あなたが……オレを欲しいと思ってくださることを嬉しいと思うオレを、許してください……。それがオレとは違う理由であっても……オレは今、最高に幸せです。ですから……無礼にもあなたに触れることを……今だけはお許しください……」
「獄寺君……」
(……違う理由って……どこが違うんだろう……?違うのはオレの方じゃないかって、また自惚れでしかないんじゃないかって、許してほしいのはオレの方なのに……)
 ツナは顔からはずした手を、おそるおそる、伸ばしかけては引き、触れようとしては止め、獄寺の背中側で宙にさまよわせていた。けれど、きっと無意識だったのだろう、ツナの髪に顔を埋めた獄寺が、苦しげな吐息とともに吐き出した小さなイタリア語の呟きが、彼に勇気を振り絞らせた。
 獄寺の背に回した両腕で、ツナは彼を抱きしめ返した。
「……好きだよ、獄寺君……」
 ビクリ、と獄寺の体が強張った。
「不遜な想いって……何……?」
「十…代目……」
 答えを聞くのが本当は怖くて、ツナは心臓が破れそうだった。自分の鼓動の音で、獄寺の声がよく聞きとれないくらいだった。
「……オレの方こそ…未熟で狭量で、器の小さい臆病者で…!ボンゴレ十代目の右腕だなんて、恥ずかしくて言えない…。あなたにふさわしい男はオレだと言えるようになるまで、自分の気持ちは隠しておこうなんて情けないことを考えたせいで、あなたを不安にさせて……申し訳ありません……!」
「獄寺…君…」
 胸が苦しいのは、息ができないほどきつく抱きしめられたせいだけじゃなく、この不安を喜びに変えていいのかどうか、叫び出したい激しい感情を必死で抑えこんでいるせいだ。
「……好き……です……」
 まるで言葉にすることを畏れるように、彼はツナを抱きしめたまま囁いた。それからばっと体を離し、ツナの両肩を?んでしっかりと彼を見つめながら、
「愛しています……!こんな言葉じゃ足りなさ過ぎるけど、他の言葉をオレは知らない……!」
 叫ぶ代わりに、涙が出た。
「じゅ、十代目?」
「信じられない……誰かが自分を命がけで好きになってくれることもだけど、それ以上に……オレがこんなに、死んでもいいくらい、誰かを好きになれるなんて……」
 獄寺の表情が、はっと真摯なものになる。
「君が好きになってくれたオレを……オレも信じたい。十年後、二十年後の君も、好きでいてくれるような男になっていたい。でもオレはすぐにくじけそうになってしまう。そんなときでも君は……」
「オレがついています。オレはいつもあなたのそばにいます」
「獄寺君……」
 肩を?んでいた獄寺君の左手が、そっとツナの首をたどり、耳元に添えられた。
「……唇に触れることを……許してくれますか……」
 ツナはかあっと全身が熱くなるのを感じた。
「う…うん…。でも、許可なんて、とらなくていいよ……」
 獄寺の頬も赤かった。
「……次からは、そうします」
 近づいてくる獄寺の瞳の方が先に閉じられ、ツナは自分だけじゃなく、獄寺もこれが初めての口づけなのだと気づいた。
 十二で出会った自分たちは、やっと十五歳で、まだ十五歳でしかなくて、なのにもう後戻りはできない。その長い道のりを、今ようやく共に歩き始めたのだ。

 大丈夫。君がいるからオレは大丈夫。
 ──オレがいます。いつもあなたのそばにいます──

        『 tu mio sole, tu sei qui con me 』 ・・・終  


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