( しじみ蝶 )
夏蝶狂ほし修司句集かな
不思議なもので、夏の蝶ことに黒揚羽を見ると
寺山修司を思い出す、忌日は5月だったと思う
もう彼が没してから20年も経っているのに、それほど
彼の俳句にふれた覚えもないのに
手元に一冊の修司の句集「花粉航海」がある
青森の高校時代15歳~18歳までを昭和50年に編纂した
ものだが、その才能は中学時代から学級新聞というメディアを
通じて自己表現をおこなっていた、ガリ版刷りの新聞には
小説、詩、短歌、俳句が発表されてたという
十五歳抱かれて花粉吹き散らす
チェホフ忌頬髭おしつけ籠桃抱き
流すべき流灯われの胸照らす
朝の麦踏むものすべて地上とし
暗室より水の音する母の情事
癌すすむ父や銅版画の寺院
母恋し鍛冶屋にあかき鉄仮面
大落暉わが愚者の船まなうらに
便所より青空見えて啄木忌
わが夏帽どこまで転べども故郷
巻末に「今こうして思うと顔赤らむ思い、句のわかれも
すみやかに果たしてしまいたい 何もかも捨ててしまい
たい 書くことによって 読むことによって」とある
私にとって三輪明宏、三島由紀夫、寺山修司は蝶のように
ことに夏蝶のように思われてならない