( 石榴の実 )
露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す 西東三鬼
石榴の実吸ふやたかだか四十年 辻桃子
石榴裂け吾が中に濃き鬼子母神 野見山ひふみ
昨日寸前今日また寸前熟れ石榴 林 翔
( 実石榴のどの面ざしも印象派 ころころ )
☆ 調べについて (俳句創作の世界・2章・平井照敏)
調和のとれたひびき
音楽の三つの要素はリズム、メロディーと和音だといわれます。
メロディーにあたるものは、俳句では何になるでしょうか。俳句は短いので
メロディーとよべるようなものを作り出す長さは有りませんが、しいて言えば
調べがそれにあたるのではないかと思います。和音はいくつかの音の調和の
とれた響きですから、季語のところでも触れてきたことがそれにあたるとも
言えましょう。そのほか句の言葉のもつ母音、子音の響きあいの美しさの
ことも考えられます。言葉の音色の調和ということですが、しかし、一句は一つの
有機体ですから、リズムも音色も、互いに助け合って、一句の調べを生み出す
のに役立っているはずです。私が何年か俳句を熱心に学び、かなり上達した
時に,師の加藤楸邨は「君がこれから考えなくてはならないのは,調べの問題
だ」と示唆されました。調べが俳句の高度な段階であることがわかります。