５月 ４日

　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　竹の皮・竹皮を脱ぐ・竹の皮散る　　）



実朝の墓で拾ひし竹の皮　　　　　　　　　　　　　細見綾子



竹皮を脱ぐひとときの無風かな 　　　　　　　　　　桂 信子



竹皮を脱ぐにあそべる烏骨鶏 　　　　　　　　　　　野沢節子



竹皮の終ひの一枚反りて付く　　　　　　　　　　　梅田　葵



竹皮を脱げり小町の化粧井戸　　　　　　　　　　　伊藤旅遊



竹の皮脱ぎ散らしたるけものみち　　　　　　　　　国枝隆生



竹皮を脱ぐ静けさの師弟句碑　　　　　　　　　　　大島知津



竹皮を脱ぐや清浄無垢の肌　　　　　　　　　　　　夏目隆夫



師の句碑へ竹つややかに皮脱げり　　　　　　　　　山本光江



竹の皮脱ぎし真竹に絹の雨　　　　　　　　　　　　高橋幸子



竹皮の散る音かすか綾子句碑　　　　　　　　　　　塩坂恵子



竹皮をぬぐや真青な露しづく　　　　　　　　　　　武田稜子






　　　　　　　　　　

５月 ３日 （憲法記念日）

　　　　　　　　　　　　（　　青葡萄　　）



婚近き教え子と食ぶ青葡萄　　　　　　　　　　　　栗田やすし



孤児の歯を抜いてついばむ青葡萄　　　　　　　　　沢木欣一



青ぶだうの中に一粒青錆びて　　　　　　　　　　　細見綾子



湧水の溢るる暮し青葡萄　　　　　　　　　　　　　中川幸子



教会の点字の聖書青葡萄　　　　　　　　　　　　　日野圭子



青葡萄一房ごとに影やどす　　　　　　　　　　　　牧　啓子



アルプスの風に粒立つ青葡萄　　　　　　　　　　　豊田紀久子



ボヘミアのガラス工房青ぶだう　　　　　　　　　　本多俊枝



日照雨あと光ごと摘む青葡萄　　　　　　　　　　　高岸弘子





　　　　　　　　　　



退職のたよりや憲法記念の日　　　　　　　　　　　片山浮葉



赤飯や憲法記念日の患者食　　　　　　　　　　　　井沢陽子

５月 ２日

　　　　　　　　　　　（　　五月・皐月・早苗月・聖五月　　）



赤ん坊掌より五月の朝動く　　　　　　　　　　　沢木欣一



五月の海底のみどりを巻き返す　　　　　　　　　細見綾子



五月来る小瓶の化粧水澄みて　　　　　　　　　　栗田やすし



教室の隅のいびきや早苗月　　　　　　　　　　　河原地英武



五月来るオールの飛沫光らせて　　　　　　　　　中野一灯



羊刈るバリカンの音五月来る　　　　　　　　　　武田稜子



江ノ島の潮路明るき五月かな　　　　　　　　　　森垣昭一



聖五月パンを焼く香に目覚めをり　　　　　　　　鈴木みすず



廊下まで響く産声聖五月　　　　　　　　　　　　桑原健次



乗鞍の雪より昏るる早苗月　　　　　　　　　　　若山智子



花嫁のゑくぼ光れり聖五月　　　　　　　　　　　福田邦子



伊根五月小さき波寄す舟屋口　　　　　　　　　　長江克江



海の碧ネモフィラの青聖五月　　　　　　　　　　武藤光晴