10月 22日

2020-10-21 14:33:04 | Weblog
                        菊 人 形


     飾られて菊人形の冷たき手           栗田やすし


     人形の兜被りて菊師来る            伊藤旅遊


     木曽殿の首抱へ来し老菊師           石原筑波


     雑兵は白ばかり着る菊人形           田畑 龍


     菊を結ふ藺草くはへて人形師          不破志づゑ


     手を触れて菊人形に語りかく          牧田 章


     菊人形姫の胸より小蜂飛ぶ           鈴木真理子


     濃姫の胸に白刺す老菊師            兼松 秀


     藁舐めて菊師つくろふ姫の衿          河村惠光


     横たはる菊人形の胸の骨            服部鏡子


     宗春の菊人形に蜂潜む             幸村富江


     菊人形鯱も小菊をまとひけり          河井久子



          



     菊人形莟ばかりの青ごろも           能村登四郎


     蛇口あり菊人形の傍らに            奥坂まや


     菊人形逢瀬を照らし出されたる         大串 章 


     陰謀の場を煌々と菊人形            鷹羽狩行


     菊人形胸もと菊のやや混みて          福永耕二


     頼りなき菊人形と別れけり           秋元不死男


     菊人形携帯電話を持つていた          金子兜太



           


     
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 21日

2020-10-20 14:54:25 | Weblog
                        草の花・草花・草花売・百草の花


     雑草の花のよろこび母子の座          細見綾子


     ショベルカー草の花ごと山崩す         河原地英武


     木曽馬の秣にまじる草の花           清水弓月


     碧住みし根岸の路地や草の花          栗田せつ子


     この道はふるさとに似て草の花         国枝洋子


     殉教の碑へあふれさす草の花          谷口千賀子


     風呂敷に包む喪服や草の花           武田稜子


     豆腐屋の喇叭古刹へ草の花           磯田なつえ


     戦あと見知らぬ草の花ばかり          森 靖子


     日時計の針が撫でゆく草の花          野島秀子


     ゴム長干す島の洗ひ場草の花          小田二三枝


     廃坑に途切れし鉄路草の花           ころころ




          



     噴湯よりゆで卵さげ草の花           滝沢伊代次


     草の花入江の見ゆる陶の家           飴山 實


     児が抱く小さきヴィオロン草の花        林 翔


     草の花猫に間合をはかられし          下鉢清子


     働きて汚れし手足草の花            後藤比奈夫


     草の花赤き瓦を積み濡らす           野澤節子


     草花や湖の水つく通ひ路            河東碧梧桐



          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 20日

2020-10-19 13:28:23 | Weblog
                        新蕎麦・走り蕎麦


     大津絵の鬼新蕎麦の湯気被る          上田博子


     芭蕉道あまた巡りて走り蕎麦          都合ナルミ


     ねぶた絵を飾る山家や走り蕎麦         矢野孝子


     走り蕎麦酒一合にほろ酔へり          鈴木みすず


     大食ひの番付表や走り蕎麦           森垣一成


     岡持で新蕎麦届く楽屋口            野島秀子


     打ちくれし長寿祝ひの走り蕎麦         青木信子


     走り蕎麦壁に城主の借用書           平松公代


     新蕎麦やそぞろ歩きの浅草寺          武長脩行


     板きれの献立表や新蕎麦屋           二村美伽



          

            川越 百丈



     新蕎麦を打つ昼酒のうまき頃          角川春樹


     ふるさとの味かくれなし走り蕎麦        細江大寒


     走り蕎麦老舗奥行深きかな           水原春郎


     能書きは要らぬ新蕎麦打たれけり        石田郷子


     新蕎麦のそば湯を棒のごとく注ぎ        鷹羽狩行


     新蕎麦や朱塗の膳は剥げしまま         田中冬二


     走り蕎麦銚子ふたつの長居なる         橋本榮治



          


          

            栃尾揚げ これをあてに蕎麦屋の熱燗が美味し
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 19日

2020-10-18 13:18:35 | Weblog
                        黄 葉


     雀らは何ついばむや萩黄葉            細見綾子


     倉庫裏銀杏黄葉が明るくす            沢木欣一


     無患子の黄葉明りに雀くる            栗田やすし


     欅黄葉観音様は留守なりし            磯田なつえ


     ぶな黄葉透かし津軽の海光る           船橋 良


     北大の楡より黄葉始まれり            倉田信子


     黄葉散る音のかそけき綾子句碑          坪野洋子


     みよしのの渓の深さよ葛黄葉           金田義子


     新宿の銀杏黄葉を浴びにけり           中川幸子


     幾万の墓碑へ黄葉づるモモタマナ         平松公代


     大銀杏黄葉して幹艶めけり            松本恵子


     師の逝きて銀杏黄葉散りやまず          澤田正子



          



     黄葉描く子に象を描く子が竝び          稲畑汀子


     アカシヤの黄葉まみれの巴里雀          林 翔 


     まんさく黄葉頭にしみる頭にしみる        金子兜太


     ひとむらの山吹黄葉心澄む            山口青邨


     黄葉を見よと硝子を拭きくるる          石田波郷


     村の灯は楮黄葉を照すなり            阿波野青畝


     保養所と標し白樺黄葉して            清崎敏郎



          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 18日

2020-10-17 15:56:43 | Weblog
                        秋時雨


     御像の鉄より黒し秋時雨            沢木欣一


     秋時雨昨日に似たる昼過ぎに          細見綾子


     秋時雨師の句碑となる石濡らす         栗田やすし


     秋しぐれ兵の名多き無縁墓           山下 護


     大津絵の泥の赤溶く秋しぐれ          若山智子


     秋しぐれからゆきさんの発ちし浦        倉田信子


     モンローの小さき手形や秋時雨         奥山比呂美


     秋しぐれ如来の首といふ巌           近藤文子


     信長の馬場の跡とや秋しぐれ          橋本紀子


     剪定の音とぎれたり秋時雨           黒田昌子


     廃業の貼り紙濡らす秋しぐれ          前田史江


     病院の薄きスリッパ秋時雨           和久利しずみ



          



     秋もはや日和しぐるる飯時分          正岡子規


     勤めより夜の勤めへ秋時雨           林 翔


     出てゆきし湖舟を迫うて秋時雨         松本たかし


     秋時雨女ばかりの客入り来           鈴木真砂女


     秋時雨返さぬままの男傘            谷口桂子


     怒濤よりほかに音なし秋時雨          中村汀女


     小安峡秋の時雨を誘ひこむ           佐藤鬼房



          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 17日

2020-10-16 16:49:39 | Weblog
                       菊・菊日和・菊の宿・菊作り・菊の香


     菊の香や加賀の鶴来の板庇           栗田やすし


     菜畑に黄菊一うね上越線            細見綾子


     漱石と話したきこと菊日和           河原地英武


     琵琶鳴らす指の白さよ菊日和          上杉美保子


     錻力屋の歪むガラス戸菊の鉢          佐藤とみお


     耳かきで花ととのふる菊師かな         鈴木みすず


     文字のなき吉次の墓や小菊咲く         森 靖子


     磯菊や藍深みたる伊豆の海           山本法子


     子の婚に集ふうからや菊薫る          武藤光晴


     浜菊や瀬戸の渦潮激ち合ふ           河本好恵


     耳長き籠大仏や菊香る             市川克代


     道問ふて溢るるほどの菊貰ふ          市江律子


     鑑真廟供華の白菊香りけり           石原進子



          

            野路菊


          

            浜菊


          

            磯菊


          

            粟黄金菊



     あまたなる菊の一つに日が当る         林 翔


     ふるさとに母は健やか菊咲けり         伊藤敬子


     廃れたる海苔粗朶裏の菊作り          能村登四郎


     菊畑や竹田の里の生薬屋            窪田桂堂


     つくばひをうつ鶺鴒や菊日和          水原秋櫻子


     こころもち懸崖菊の鉢廻す           橋本美代子


     抱かれてもかのひとを恋ふ夜の菊        谷口桂子




          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 16日

2020-10-15 17:01:11 | Weblog
                        ななかまど・七竃


     ななかまど蝦夷の夕日の飛びつけり       栗田やすし


     ほどけゆく霧の中よりななかまど        坪野洋子


     啄木の街の明るしななかまど          田畑 龍


     ななかまど湯町を風の吹き抜くる        武藤光晴


     ななかまど赤き実たわわ運河沿ひ        笹邉基子


     立山の日を弾きたるななかまど         兼松 秀


     ななかまど裏葉に緑残りをり          森 敏子


     ななかまど歩荷にゆづる休み石         中野一灯


     紅淡し湖を取り巻くななかまど         塩原純子


     朝靄の湖畔の小径ななかまど          高田栗主


     色薄き飯盛山のななかまど           近藤文子


     新しき木道の香やななかまど          磯田秀治



          



     七竃釧路駅裏並木なす             野見山ひふみ


     ななかまど岩から岩へ水折れて         櫻井博道


     ななかまど支笏の波は草に寄す         古舘曹人


     ななかまど赤しシベリヤ鉄道に         依田明倫


     みちのくの駅を拾つて七竃           宮 沢子


     ななかまど真つ赤盲学校の坂          佐藤淑子



          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 15日

2020-10-14 16:31:48 | Weblog
                        新酒・新走り・今年酒


     走りより句碑に新酒を注ぎあふ         栗田やすし


     湯上りの顔ほてらせて今年酒          河原地英武


     誕生日夫と新酒を酌み交はす          鈴木みすず


     ああ言へばかう言う新酒酌み交し        櫻井幹郎


     今年酒髷の亭主の出羽訛            佐藤とみお


     退院の友と酌み合ふ今年酒           岸本典子


     デカンショは遠き日のこと新酒酌む       小長哲郎


     今年酒備前の猪口で試し飲む          江口たけし


     神棚に新酒供ふる操舵室            関野さゑ子


     辛口の女城主といふ新酒            森 靖子


     新走り供へ米蔵閉ざしけり           篠田法子


     利き酒の升に膨らむ今年酒           ころころ



          



     杉玉にみどりの残る新酒蔵           佐藤信子


     登り窯新酒を小さく祀りたり          辻田克巳


     舟盛はいまだ崩さず今年酒           上林レイ子


     諏訪明神のわれも氏子よ新酒酌む        矢崎良子


     とつくんのあととくとくと今年酒        鷹羽狩行



          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 14日

2020-10-13 14:06:11 | Weblog
                        唐辛子・なんばん・蕃椒・鷹の爪・天井守


     軒下に暮れ残りたる唐辛子           渡辺慢房


     蔵の軒竿一本に鷹の爪             森田とみ


     唐辛子束ねて吊りし杣の軒           高平タミ


     鷹の爪干す三成の敗走路            上村龍子


     吊されて緋色濃くせり唐辛子          小原米子


     蔵窓に吊す小束の唐辛子            山本法子


     風に鳴る窯場の軒の唐辛子           八尋樹炎


     合掌家軒に吊るせし唐辛子           鳥居純子


     鷹の爪吊す軒端に憩ひけり           牧 啓子



          



     今日も干す昨日の色の唐辛子          林 翔


     すゝけたる軒端やなすび蕃椒          寺田寅彦


     細きかな縁切寺の唐辛子            有馬朗人


     唐辛子熟れきり更年期を怖る          菖蒲あや


     唐辛子一絲まとはず熟れにけり         田川飛旅子


     としよりの片言ぬくし唐辛子          鷲谷七菜子


     てのひらに時は過ぎゆく唐辛子         秋元不死男



          
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月 13日

2020-10-12 14:40:49 | Weblog
                       榠樝の実・かりん・花梨・唐梨・きぼけ


     くわりんの実教材につき盗るべからず       沢木欣一


     大くわりん風の葉ずれの傷のこる         細見綾子


     榠樝の実海を隔てし子に送る           栗田やすし


     歪みなきものは鬼つ子榠樝の実          伊藤旅遊   


     たわわなる榠樝の下に無縁仏           山本光江    


     くわりんの実捥ぎし指先ほの甘し         澤田正子  


     裏山に日の当たりをり榠樝の実          高橋 毅    


     理科室の窓辺に熟るるくわりんの実        本多俊枝


     朝靄にくわりんの落ちし音響く          山下喜久


     手びねりの茶碗いびつやくわりんの実       長崎眞由美



          



     黄のかりん仏頂面をころがしぬ          野村光子


     一笑の塚に音立てくわりん落つ          茂里正治


     花梨の実高きにあれば高き風           池上樵人


     青かりん大きな滝に供へけり           岸本尚毅


     文机にかりん置かれて木にはなし         森田 峠


     奥伊予や瀬音に太る花梨の実           稲瀬奈加枝


     かりんの実どれも歪めば安心す          鍵和田釉子




          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする