５月 ２１日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　楝の花・花楝・栴檀の花


　　　　　吉野川青き流れの花楝　　　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　栴檀の花や高空曇りがち　　　　　　　　　　　　　梅田　葵


　　　　　青空にまぎるる淡さ花樗　　　　　　　　　　　　　清水弓月


　　　　　でこぼこの溶岩に降り継ぐ花楝　　　　　　　　　　角田勝代


　　　　　栴檀の匂ひ満ちたる毛利墓所　　　　　　　　　　　上杉和雄


　　　　　肩組める予科練像や花楝　　　　　　　　　　　　　岩上登代


　　　　　湧水の流るる大社花楝　　　　　　　　　　　　　　野島秀子


　　　　　雨やんで楝の花のけぶりをり　　　　　　　　　　　牧　啓子



　　　　　　　　　　



　　　　　見返るや門の樗の見えぬ迄　　　　　　　　　　　　正岡子規


　　　　　栴檀の花のさかりの睡き昼　　　　　　　　　　　　日野草城


　　　　　ひろがりて雲もむらさき花樗　　　　　　　　　　　古賀まり子


　　　　　かつて世にありしやさしさ花樗　　　　　　　　　　森 　澄雄


　　　　　家計簿の妻の頬杖花楝　　　　　　　　　　　　　　柴田美代子


　　　　　花樗まばたきまばたき花殖す　　　　　　　　　　　能村登四郎


　　　　　樗咲き子が借りにくるわが机　　　　　　　　　　　福永耕二



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
　　　　　　　　ご自分と大切なご家族を守るために三密を忘れなく　密閉、密集、密接を避けましょう
　　　　　　　　手洗い、うがい、マスクの着用　を　日常に



　　　　　

５月 ２０日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　椎の花・花椎


　　　　　椎匂ふビードロ茶屋に招き猫　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　夜勤の父待つ街裏に椎匂う　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　花椎のけだるき匂ひ舟屋路地　　　　　　　　　　　岸本典子


　　　　　コロナ禍の街暮れてゆく椎の花　　　　　　　　　　栗田せつ子


　　　　　国分寺や鴟尾の真上の椎の花　　　　　　　　　　　清水弓月


　　　　　筆塚の筆に降り積む椎の花　　　　　　　　　　　　倉田信子


　　　　　雨あとの花椎匂ふ登城口　　　　　　　　　　　　　熊澤和代


　　　　　花椎を映すガラスの美術館　　　　　　　　　　　　安藤幸子


　　　　　椎の花湖を見下ろす天守跡　　　　　　　　　　　　平松公代


　　　　　山裾の藩主の御廟椎匂ふ　　　　　　　　　　　　　前田昌子


　　　　　隠れ城てふ山寺や椎の花　　　　　　　　　　　　　小栁津民子


　　　　　湾沿ひにひしめく舟屋椎の花　　　　　　　　　　　伊藤克江



　　　　　　　　　　



　　　　　椎の花神も漢(をとこ)の匂ひせり　　　　　　　　　　角川春樹


　　　　　椎匂ふ強烈な闇誰かを抱く　　　　　　　　　　　　西東三鬼


　　　　　老いらくの高き匂ひを椎の花　　　　　　　　　　　秋元不死男


　　　　　椎の花まみれに遊び暮れしかな　　　　　　　　　　石川桂郎


　　　　　花椎の香に偽りを言はしめし　　　　　　　　　　　橋本多佳子


　　　　　椎の香の猛々しきを深く吸ふ　　　　　　　　　　　正木ゆう子


　　　　　椎の花鉄棒下りし手のにほふ　　　　　　　　　　　福永耕二



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
　　　　　　　　ご自分と大切なご家族を守るために三密を忘れなく　密閉、密集、密接を避けましょう
　　　　　　　　手洗い、うがい、マスクの着用　を　日常に　　　　

５月 １９日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅雨・ついり・梅天・梅雨空・入梅・旱梅雨


　　　　　枕木を叩くつるはし梅雨に入る　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　梅雨に入るなかなか色の出ぬテレビ　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　梅雨兆す書棚に空の貯金箱　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　屏風絵の銀の剥落梅雨に入る　　　　　　　　　　　河原地英武


　　　　　梅雨鴉一声鳴いてそれつきり　　　　　　　　　　　下里美恵子


　　　　　外郎（ういろう）てふ胃薬飲んで梅雨籠　　　　　　栗田せつ子


　　　　　入梅や運河に揺らぐ常夜灯　　　　　　　　　　　　武藤光晴


　　　　　寺田屋に深き弾痕旱梅雨　　　　　　　　　　　　　岸本典子


　　　　　つゆ入りの風なまぐさし桶狭間　　　　　　　　　　加藤ゆうや


　　　　　三円で買ふレジ袋梅雨湿り　　　　　　　　　　　　森垣一成


　　　　　瀬田川の水音荒く梅雨に入る　　　　　　　　　　　内田陽子


　　　　　糠床を混ぜて日暮るる入梅かな　　　　　　　　　　青山美佐子



　　　　　　　　　　



　　　　　十薬の花まづ梅雨に入りにけり　　　　　　　　　　久保田万太郎


　　　　　夕暮は犬の時間ぞ梅雨に入る　　　　　　　　　　　櫂　未知子


　　　　　梅雨の闇小さき星は塗りこめて　　　　　　　　　　福永耕二


　　　　　夜の腕にかげろふ触れし梅雨入かな　　　　　　　　石田波郷


　　　　　ひとの句が心占めをり梅雨入り前　　　　　　　　　林　翔


　　　　　やぶれがさむらがり生ひぬ梅雨の中　　　　　　　　水原秋桜子


　　　　　手で量るきやべつの重き梅雨入かな　　　　　　　　鈴木真砂女


　　　　　抱く吾子も梅雨の重みといふべしや　　　　　　　　飯田龍太



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
　　　　　　　　ご自分と大切なご家族を守るために三密を忘れなく　密閉、密集、密接を避けましょう
　　　　　　　　手洗い、うがい、マスクの着用　を　日常に



　　　　　　　　　　

５月 １８日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　花茨・花うばら・野ばらの花・茨の花


　　　　　青山河茨の花を折り持てば　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　花うばら児への片仮名軍事便　　　　　　　　　　　矢野孝子


　　　　　野茨の花が枝張る舟着場　　　　　　　　　　　　　伊藤範子


　　　　　花茨散らし鷲翔つ明日香川　　　　　　　　　　　　清水弓月


　　　　　見はるかす津波禍の土手花茨　　　　　　　　　　　国枝洋子


　　　　　湖見ゆる姫街道やうばら咲く　　　　　　　　　　　掛布光子


　　　　　寝釈迦への近みち細し花茨　　　　　　　　　　　　森田とみ


　　　　　花茨軍艦島の闇深し　　　　　　　　　　　　　　　玉井美智子


　　　　　とうさんとつぶやいてみる花うばら　　　　　　　　幸村志保美


　　　　　水見色の瀬音ゆかしき花茨　　　　　　　　　　　　矢野愛乃


　　　　　大鼠横切る疾さや花茨　　　　　　　　　　　　　　水野時子


　　　　　湯の町を分つ渓流花うばら　　　　　　　　　　　　小原米子



　　　　　　　　　　



　　　　　花茨馴れては恋ふる荒瀬かな　　　　　　　　　　　中村汀女


　　　　　女の学校紅旗かかげて花茨　　　　　　　　　　　　中村草田男


　　　　　風の間のひかりが搦む花茨　　　　　　　　　　　　能村登四郎


　　　　　引潮に水藻流るる花茨　　　　　　　　　　　　　　林 　翔


　　　　　野茨つむわれが欺せし教師のため　　　　　　　　　寺山修司 


　　　　　サーバーはきっと野茨風が立つ　　　　　　　　　　坪内稔典


　　　　　野いばらや水よりひかるものを言ヘ　　　　　　　　夏井いつき



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
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　　　　　　　　手洗い、うがい、マスクの着用　を　日常に

５月 １７日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　桐の花・花桐


　　　　　桐の花旅の衣に風通す　　　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　桐の花大学裏に住みつくか　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　うす暗き母の病棟桐の花　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　桐の花散り込む流れ鍬浸す　　　　　　　　　　　　下里美恵子


　　　　　釈迦牟尼は暗きに在す桐の花　　　　　　　　　　　都合ナルミ


　　　　　山の田の荒るるにまかせ桐の花　　　　　　　　　　清水弓月


　　　　　日翳りて色失ひし桐の花　　　　　　　　　　　　　福田邦子


　　　　　祓はれし馬場へ散り継ぐ桐の花　　　　　　　　　　武田稜子


　　　　　門川に鱒飼ふ暮し桐の花　　　　　　　　　　　　　上杉和雄


　　　　　掌にぬくき落ちしばかりの桐の花　　　　　　　　　鈴木真理子


　　　　　牛匂ふ村の戸毎に桐の花　　　　　　　　　　　　　山本法子


　　　　　漆黒の寝釈迦に桐の散りつくす　　　　　　　　　　篠田法子



　　　　　　　　　　



　　　　　幻聴や高みにくらき桐の花　　　　　　　　　　　　夏井いつき


　　　　　桐の花をんなにもあるこころざし　　　　　　　　　大石悦子


　　　　　どの畑も農夫はひとり桐の花　　　　　　　　　　　高橋悦男


　　　　　花桐や川の中まで古戦場　　　　　　　　　　　　　加藤憲曠


　　　　　ひそひそと夕ベ声過ぐ桐の花　　　　　　　　　　　寺井谷子


　　　　　あを空を時の過ぎゆく桐の花　　　　　　　　　　　林　徹


　　　　　桐咲いて雲は光のなかに入る　　　　　　　　　　　飯田龍太



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
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５月 １６日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青梅・実梅・梅の実


　　　　　青梅に紅さすはつか東慶寺　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　実梅売るみすずの街の乾物屋　　　　　　　　　　　栗田やすし　　　　　


　　　　　孫生れて植ゑし記念の梅は実に　　　　　　　　　　花村富美子


　　　　　実梅落つ茂吉生家の屋敷神　　　　　　　　　　　　小島千鶴


　　　　　青梅にほのかな紅のありにけり　　　　　　　　　　齊藤眞人


　　　　　青梅の一つ艶やか綾子句碑　　　　　　　　　　　　沢田充子


　　　　　だめ猫のままに逝きけり梅落つる　　　　　　　　　武藤光晴


　　　　　落梅の香れる庭に朝日さす　　　　　　　　　　　　長澤和枝


　　　　　落梅のうぶ毛に光る雨しづく　　　　　　　　　　　高橋ミツエ


　　　　　音軽く枝に弾みて実梅落つ　　　　　　　　　　　　渡辺慢房


　　　　　もぐさ屋の薄れし屋号実梅熟る　　　　　　　　　　上村龍子



　　　　　　　　　　



　　　　　実梅より雨一雫顔に受く　　　　　　　　　　　　　瀧澤伊代次


　　　　　青梅の一つが見えてあまた見ゆ　　　　　　　　　　岡本圭岳


　　　　　何となくみな見て通る落ち実梅　　　　　　　　　　甲斐すず江


　　　　　青梅もためらひ傷の七つや八つ　　　　　　　　　　櫂 未知子


　　　　　捧げ来しは実梅を叩き落とす棒　　　　　　　　　　辻　桃子


　　　　　牛の顔大いなるとき青梅落つ　　　　　　　　　　　石田波郷


　　　　　青梅の籠にみちくるくらさかな　　　　　　　　　　黒田杏子



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
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５月 １５日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　雪ノ下・鴨足草・虎耳草


　　　　　無明庵やさしき花を鴨足草　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　雪の下短かき唄をくりかへす　　　　　　　　　　　細見綾子 


　　　　　志野焼の壺に束ねて鴨足草　　　　　　　　　　　　上田博子


　　　　　鴨足草書院の庭の隅隅に　　　　　　　　　　　　　巽　恵津子


　　　　　雪ノ下崖にはびこる貴船道　　　　　　　　　　　　小西照子


　　　　　母の忌や花咲き初めし鴨足草　　　　　　　　　　　朝比奈照子


　　　　　鴨足草花の枝垂るる政子の井　　　　　　　　　　　服部満代


　　　　　水しぶく崖にはりつく鴨足草　　　　　　　　　　　萩野文子


　　　　　鴨足草きしみて動く釣瓶井戸　　　　　　　　　　　伊藤敬子


　　　　　住み捨てし山家の水場鴨足草　　　　　　　　　　　松本恵子


　　　　　路地めぐる水の豊かに鴨足草　　　　　　　　　　　神尾朴水



　　　　　　　　　　



　　　　　ふるさとや井戸草と呼ぶゆきのした　　　　　　　　山口青邨


　　　　　奥宮の御手洗小さし鴨足草　　　　　　　　　　　　轡田 進


　　　　　虎耳草流人の家に栄えける　　　　　　　　　　　　佐藤春夫


　　　　　湧き水を汲むたびに濡れ鴨足草　　　　　　　　　　鷹羽狩行


　　　　　花もつれもつれもつれて雪の下　　　　　　　　　　清重国子


　　　　　年寄の知恵さりげなし鴨足草　　　　　　　　　　　黛 　執


　　　　　ふもと井や湯女につまるる鴨足草　　　　　　　　　飯田蛇笏



　　　　　　　　　　

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５月 １４日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　朴の花・朴散華・厚朴の花・ほほがしは


　　　　　朴咲くや津軽の空のいぶし銀　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　朴の花山気をほしいままの白　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　散華てふ哀しき言葉朴の花　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　傘閉ぢて見上ぐる空に朴の花　　　　　　　　　　　大島智津


　　　　　背に日を受くる観音朴の花　　　　　　　　　　　　武藤光晴　　　　　　　


　　　　　無住寺となりて久しや朴ひらく　　　　　　　　　　桜井節子


　　　　　浮雲を追ふ浮雲や朴の花　　　　　　　　　　　　　小原米子


　　　　　そこはかと山家に匂ふ朴の花　　　　　　　　　　　石原けい彩


　　　　　裏木曽の谷筋深し朴の花　　　　　　　　　　　　　河合義和


　　　　　登城坂ぬけて明るし朴の花　　　　　　　　　　　　渡辺かずゑ


　　　　　杖借りて目指す頂上朴の花　　　　　　　　　　　　服部鏡子



　　　　　　　　　　



　　　　　朴咲くや谺のごとく雲殖えて　　　　　　　　　　　福永耕二


　　　　　その高さ風道として朴咲けり　　　　　　　　　　　能村登四郎


　　　　　咲かむとす涙の壺の朴の花　　　　　　　　　　　　佐藤美恵子


　　　　　明るさが水の始まり朴の花　　　　　　　　　　　　今瀬剛一


　　　　　そのかみの恋文は佳し朴の花　　　　　　　　　　　中村苑子


　　　　　朴の花かなしきときは遠くを見て　　　　　　　　　津田清子


　　　　　朴の花菩薩の如く宵月夜　　　　　　　　　　　　　阿波野青畝


　　　　　一花づつ揺れやむ朴や夕きざす　　　　　　　　　　鷲谷七菜子



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
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５月 １３日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　薔薇・花薔薇・蔓薔薇・白薔薇・薔薇園　②


　　　　　薔薇の門家庭教師として潜る　　　　　　　　　　　　能村登四郎


　　　　　おほぞらは素顔の青さ薔薇出荷　　　　　　　　　　　岡本 眸


　　　　　パン屋の娘気安く薔薇を呉れにけり　　　　　　　　　阿波野青畝


　　　　　棘に触れ薔薇より紅き薬塗る　　　　　　　　　　　　林　翔


　　　　　散らばりてそれぞれ好きな薔薇に立つ　　　　　　　　深見けん二


　　　　　どことなくジプシー風の薔薇なりし　　　　　　　　　京極杞陽


　　　　　白薔薇の花の尖りの弛みたる　　　　　　　　　　　　松本たかし


　　　　　ハーレムの跡に百花の薔薇くづれ　　　　　　　　　　岩崎照子


　　　　　さきがけて薔薇の黄をとどけねばならぬ　　　　　　　宇多喜代子


　　　　　憩ふ椅子あり薔薇のアーチくぐる　　　　　　　　　　津田清子 



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　熱情


　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　ことね



　　　　　自らへ贈るくれなゐ強き薔薇　　　　　　　　　　　　櫂　未知子


　　　　　その国の子が出て薔薇の大使館　　　　　　　　　　　鷹羽狩行


　　　　　少女美し薔薇もチョコレートも売れる　　　　　　　　安住 敦


　　　　　バラを挿し眠る一家に嗅がせたり　　　　　　　　　　秋元不死男


　　　　　一束の緋薔薇貧者の誠より　　　　　　　　　　　　　杉田久女


　　　　　濡れ傘を突く薔薇園の夕映に　　　　　　　　　　　　三橋鷹女


　　　　　やはらかに月光のさす白薔薇　　　　　　　　　　　　飯田蛇笏 


　　　　　乞食と僧侶をへだつ薔薇の門　　　　　　　　　　　　藤田湘子


　　　　　うなだれしマリオネットに薔薇を刺す　　　　　　　　仙田洋子



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　ゴールデンメダイオン


　　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
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　　　　　　　　手洗い、うがい、マスクの着用　を　日常に


　　　　　　

５月 １２日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　薔薇・花薔薇・蔓薔薇・白薔薇・薔薇園　①


　　　　　バラ園のホースの水を天に放つ　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　背を曲げて古寺の路傍の薔薇を嗅ぐ　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　深き息せむ夜の粗ら壁に薔薇さして　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　友若しバラの香に顔深く埋め　　　　　　　　　　　　下里美恵子


　　　　　薔薇園のベンチに方程式を解く　　　　　　　　　　　矢野孝子


　　　　　赤き薔薇棺に載せて出棺す　　　　　　　　　　　　　鈴木みすず


　　　　　薔薇の雨立子の小さき硯箱　　　　　　　　　　　　　伊藤範子


　　　　　ペルシャ猫見ゆる出窓や薔薇屋敷　　　　　　　　　　千葉ゆう


　　　　　みどりめく少女の裸像薔薇盛り　　　　　　　　　　　梅田　葵


　　　　　壺の薔薇おおきくゆれし昼の地震　　　　　　　　　　牧野一古



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　ノスタルジー


　　　　　たそがれといふ薔薇淡きすみれ色　　　　　　　　　　小柳津民子


　　　　　ひとり居に一人のリズム薔薇の花　　　　　　　　　　井沢陽子


　　　　　仏間にも薔薇活け母へ香を分つ　　　　　　　　　　　桜井節子


　　　　　口ずさみ薔薇園巡る車椅子　　　　　　　　　　　　　神尾知代


　　　　　薔薇の門くぐる画集を繰るやうに　　　　　　　　　　米元ひとみ


　　　　　雨近き庭の白薔薇剪りにけり　　　　　　　　　　　　水野時子


　　　　　朝摘みし花匂ひ立つ薔薇の風呂　　　　　　　　　　　服部達哉


　　　　　落日の光に薔薇の透きとほる　　　　　　　　　　　　漆畑一枝


　　　　　海原にバラの匂へる美術館　　　　　　　　　　　　　井上靖代



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　ヘルムートシュルト


　　　　　　　　　三たび東京・大阪・京都・兵庫に緊急事態宣言が出されました
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