チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 149

2019年05月07日 11時25分15秒 | 日記
立夏に入り着物は単衣と思いきや今日は寒い18度
薄手の袷を取り出す
たかが薄い裏地でもあるとないとでこうも違う

先日ある染色作家と話をしていたら
「五泉ではもう絽縮緬は作らないと言われた」
「丹後はどうなの同じような雰囲気だね」

絽縮緬好きのチャコちゃん先生はがっくり
初夏から夏にかけてなんとも気持ちのよい素材だ

昭和の初めまでまだ男が元気のいいころ黒塀の家をあてがわれたお妾さんが
一風呂浴びて旦那を待つ間縁側に座り涼をとっているのだがそのとき素肌に絽縮緬の浴衣をサラリと着ている風情の色っぽいこと
それをちりめん浴衣と言っていた
その姿を描いた日本画も残っている伊東深水だったかな

お妾さんも二号さんもそれが彼女たちの仕事
本妻さんは家事を取り仕切り男が仕事に打ち込めるように家庭を整えるのが仕事
その器量がない女は本妻にはなれない
外に女を囲うのは男の甲斐性そこで生まれた子は外子として本家は認知し養育費を本妻が与える

お正月になると外の女や子どもたちが新年の挨拶に訪れる
本妻は黒紋付の羽織を着て挨拶を受けお手当を渡す
そういう家庭が近くにあって母たちは本妻との付き合いだが子どもたちはお妾さんのほうがお菓子をくれるのでよく遊びに行っていた
しかも女は昼間は暇なのでお手玉やおはじきの相手、本も読んでくれたりするので結構楽しかった
お香を焚きしめているので家中いい匂いがした

足繁く行くと母に叱られるのでたまーーにひょこっと行くので余計歓迎される暇なんだなあと思ったものだ

ある時学校帰りの姉に見つかりこっぴどく説教された
「ひさちゃんは大きくなったらあんなあ女になりたいの?」
「ううん私はお羽織り着て小遣い配りたい」
それを家に帰って告口されたのでそれ以来足止め食ってしまった
残念に思う

大人になってわかったけど家督を次ぐために男の子の誕生が必要としている家の男外にお妾さんを囲ったのだ
家をつないでいくことが日本の場合は重要だった
いきなりだが恐れ多くも明治天皇は8人もの側妻がいらしたが結局男子は太正天皇だけだった
それくらい男の血が家を栄えさせることになっている

お妾さんは着物文化の担い手だったのではないかと今思う
本妻は紋付きを中心に春夏秋冬きちんとした着物を着ているが
お妾さんたちは季節を尊び素材から柄色まで自由に気ままにそして染めの人たちと着物や帯を作り上げていく
着物を誂える喜びが観劇「とかで消化できたのかもしれない

昭和の着物をまた違った角度で眺めてみたいと思う

#妾 #二号 #本妻 #絽ちりめん #側室 #五泉 #丹後 #中谷比佐子



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