チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 225

2019年09月12日 09時40分23秒 | 日記
結婚式や七五三の祝、成人式の前撮りの問い合わせが来るような季節になった
先日は「やはり結婚式には着物を着ようと思うので着付けをお願いします」と8年ぶりにいらした奥方。

この8年は舅、姑、ご自分の両親の介護や送り出しに明け暮れていたというご報告、その後の相続問題、片付けなど息せきって色々と話してくださる。多分誰にも話せなかった諸々のことが一気に出てきたのだろう。

人間がこの世から去っていくことの大騒動、出産は喜びにあふれ旅立ちは悲しみと混雑混乱、そこで一番問題になるのが着物の処置
多くの人が生前に着物を配るということをしない、というより着物の価値がわからなくなったので、着物を頂いても喜ぶ人が少なくなった。
それと同時に着物はどういうわけか、ご自分が着ないのに最後まで手放せないでいる人も多い。

母の時代は着物はまだ財産性を帯びていたので、娘たちに遺すと言うより「今必要な人に差し上げる」という姿勢で暮らしていた、母がなくなったあとは見事にタンスがスカスカだったらしい。らしいとは私は母の着物に興味がなかったので着物の話題の中には入っていかなかった

しかし姉たちが私に帯留めや夏の色留袖、結城紬や大島紬を分けてくれた、それらは60歳を過ぎて大活躍だ
中にたった一枚山崎斌さんの草木染めの着物を私がプレゼントしたらしく(覚えていなかった)私の手紙と着物が畳紙にくるまれたまま、しつけも取らずに入っていた
「比佐ちゃんこんな地味なのをプレゼントしたの?」次姉
「地味かなあ黒豆と栗で染めたと書いてるけどあの当時お母さんいくつだったのだろう」
「60代後半?」
「あまりにも嬉しくて着なかったんでしょう?母さんそういう人だから」と長姉。さすが一緒の時間が長いだけあってよくご存知、納得。

着物には物語が詰まっている 着物は心の資産
久しぶりにいらした奥方も
「この着物にしました。息子の結婚ですから黒留を着るべきでしょうが、これは姑が病に倒れる前に私に帯とセットで賈ってくれたものですから、一緒にお式に参列という意味もあってーー」

そして奥方はスッキリとしたお顔でお帰りになった

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コメント
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