コレステロ-ル安全に除去 合併症防ぎ手術不要/後遺症ほとんどなく
コレステロ-ルなどで狭くなった心臓の周りの 冠動脈をレ-ザ-で治療する取り組みが道内 でも始まった。これまで極度に詰まった血管に 対しては有効な治療法がなかったが、このレ- ザ-治療では後遺症もほとんどなく、安全に除 去できるようになった。「エキシマレ-ザ-冠動 脈形成術」と呼ばれる治療で、通常の保険診療 と併用できる先進医療に指定されている。細い 管に光ファイバ-を組み込んだ直径2㍉ほどの カテ-テルをワイヤで誘導し、紫外線レ-ザ-をコレステロ-ルの 塊に照射することによって動脈の詰まりを蒸散させる。赤血球より 小さい分子レベルまで分散することで、コレステロ-ル片が他の血 管で詰まることはないとされる。血管内に金属球を入れて削ったり、 二酸化炭素レ-ザ-などのように熱作用を使った治療では血管周 辺組織を傷つけることもあるが、非熱的エネルギ-のため損傷もない という。厚生労働省によると、道内でこの治療を先進医療として受け られるのは北海道社会保険病院(札幌市豊平区)。昨年9月に承認 された。同病院心臓血管センタ-長の五十嵐慶一医師は「レ-ザ- 単独ではなく、詰まった血管を広げる際に使うステント(金属製の筒) を入れる前や、ステントを入れた後の再狭さく時に行う。ほとんどの 冠動脈病変に対応できる」と話す。札幌市在住の60代男性は2年ほ ど前、約30分にわたり胸が痛くなり、狭心症と診断された。左冠動 脈は9割も詰まっていた。ステントを挿入したものの、半年後に再狭 さく。薬剤ステント挿入や金属球で削り取るなどの追加的治療を四 回行ったが、六度にわたり狭さくした。昨年9月にエキシマレ-ザ- による治療を受けたところ、その後は症状もなくなり、元気に過ごせ るようになった。同病院では、これまでに15人が治療を受けた。大 半が再狭さくした重度の患者だが、いずれも予後は良好という。治 療は、ステントと同様に足の動脈からカテ-テルを入れて行う。違う のは生理食塩水を流しながらレ-ザ-を照射することだけだ。これに より血管に穴が開くといった合併症を防ぐことができる。治療時間は 平均1時間ほど。1日の入院で翌日には退院できる。五十嵐医師は 「ステント再狭さくの場合これまで、風船を入れて膨らませるバル-ン 拡張、ステント再挿入、最終的にはバイパス手術しかなかったが、こ の治療は安全に手術と同程度の効果を得ることができる」と指摘する。 米国では1993年の承認後、心臓の冠動脈以外にも下肢静脈瘤や 末梢血管治療にも使われ、効果を上げている。ただ、国内で先進医 療の対象となつているのは冠動脈のみだ。一部の病院 では、保険 外で下肢を含めたレ-ザ-治療を行っているところもある。北海道社 会保険病院の先進医療費は通常の診療費のほかに三十万円弱か かる。