予備軍、該当者に指導<食事、運動=面談や電話で>
4月から40~74歳の健康診断が「特定健康 診査(特定健診)・特定保健指導」に変わる。内 蔵脂肪型肥満(メタポリックシンドロ-ム)に着目 して腹囲を測定、生活習慣病の該当者や一歩手 前の予備軍を見つけ、生活改善をみっちり指導 する。実施を義務付けられた大企業の健康保険 (健保)組合や国民健康保険(国保)などの医療 保険者は準備を急いでいる。「イチ、ニイ、サンッ ・・・。ハイ、そこで止めて」。東京都西東京市の スポ-ツ・文化交流センタ-「きらっと」。1月中旬、 健康運動指導士の声に合わせて約10人が汗を 流していた。参加者は昨年春の健診で男性85㌢以上、女性90㌢以 上などの腹囲基準を超えたり、糖尿病や高血圧症、高脂血症などの 支援で毎日の運動量や食べ物を記録するなどして、生活習慣の改 善を目指している。同市は2006年から、特定健診・特定保健指導 を先取りした国保ヘルスアップ事業に取り組んできた。こうした光景 が、4月以降は全国各地で見られそうだ。特定健診には、従来の健 診項目に腹囲が加わる。検診でメタポ該当者か予備軍と判断される と、医師や保健師、管理栄養士らが生活習慣の改善を促す特定保 健指導の対象になる=図参照=。特定保健指導には「動機付け支 援」と「積極的支援」がある。動機付け支援はメタポの予備軍が対象 で、原則として面談一回。該当者が対象の積極的支援は、面談で食 事や運動の目標を設定し、さらに電話や電子メ-ルで連絡を取りな がら3ヵ月以上かけて指導する。狙いは、国民医療費の三分の一を 占める生活習慣病の関連疾患を予防し、医療費を抑制することだ。 厚生労働省の試算では健診対象者は約5700万人。12年度には 健診実施率を70%にし、指導対象と判断された人の45%に生活改 善を促し、予備軍と該当者を10%減らす。15年度に25%減れば、 25年度には医療費を2割抑制できる。だが現実には、健診実施率が 高くないため、実現は簡単ではなさそうだ。医療保険者は健診実施 率が低いと13年度から財政的なペナルティが課せられるため、実質 率向上が課題となつている。一方、特定健診より、さらに難しいのが 特定保険指導だ。西東京のヘルスアップ事業では指導中に三分の一 が脱落。担当保健士は「地域の実情に合わせ、数年かけて態勢づくり をする」と言う。健保組合からも「初年度から完ぺきにはできない」とい う声が上がっている。国保側が撤廃を求めるペナルティ-導入は5年 後、罰則対象の基準を決めるは2年後。健診の実施率向上は2年後。 健診の実施率向上に力を入れ、保健指導は様子をみてから-。そん な医療保険者が少なくない。
特定健診・特定保健指導 健診には事業主が行う職場健診や市町 村の住民健診などがあるが、40-74歳については4月から、実施 責任が全国約160の健保組合や約1800の国保組合など医療保険 者に移る。該当年齢の会社員は、職場で従来通り健診を受ければデ- タが健保組合に提供され、特定健診を受診したことになる。扶養家族 も受診を強く促される、国保加入者は、自治体でなく国保すら受診券が 送られてくる。