衛生管理徹底し4ヵ月
ナメコと聞くと、真っ先にみそ汁の具や、大根お ろしのあえ物を思い浮かべる人は多いのでは? どちらかというと、「控えめ」なイメ-ジだが、丹 精込めてたくましく育てられたナメコは、つやつ やで、生命力に満ちあふれている。肉厚で歯応 えも良く、つるりとした食感も格別。天ぷらやいため物など料理法も 多彩だ。通年で菌床栽培している道内主産地の上川管内和寒町を 訪ねた。同町三笠の組合法人「丸親きのこ生産組合」。室温15度、 湿度75%に保たれた小部屋に入ると、棚にぎっしりと並んだ直径約 15㌢のポットいっぱいに、ぬれたように輝くナメコが顔を出していた。 従業員15人でナメコ生産に取り組む同組合では、おかくずとフスマを 混ぜた菌床を使っている。ポットに入れて殺菌した菌床に植え約3ヵ 月間、暗い部屋で培養。その後、明るい部屋に移し15日かけ一株 300㌘ほどに育てて収穫。さらに15日後、生えてきたナメコを再び収 穫して終える。ポットは合わせて約15万個。工場長の大前了也さん (36)は「雑菌が入ると培養中にカビが生えるなど、成育不良の原因 になる。作業靴のはきかえをはじめ、衛生管理の徹底と適正な温度、 湿度の維持に気を配っている」と話す。
◇ ◇ ◇
国の減反政策を受け、同町で本格的にナメコ栽培が始まったのは19 70年代前半。昨年の生産高は約3百㌧。同管内愛別町、同比布町に 次道内3位で、札幌、旭川をはじめ道内各地に出荷している。ただ、 大手による大量生産の影響などで卸売価格は20年前の四分の一近 くに低迷。最近の燃料高騰で生産コストも上昇しており、厳しい経営 環境が続いている。和寒町三和でナメコを生産する有限会社白樺きの こ代表の吉田直ニさん(64)は「品質確保と安定生産、コスト削減が大 きな課題」と説明。同社では、菌床用のおがくずにするシラカバを原木 から厳選するなど、独自の工夫をしているという。
◇ ◇ ◇ 歯応え、ぬめり 料理法多彩
組合法人塩狩きのこ生産組合で生産したタモギ ダケなどのキノコ料理か゛味わえる飲食店「峠そ ば」(同町朝日)、吉田さんらにナメコ料理を紹介 してもらった。世代を問わず好まれそうなのは、 歯応えを楽しめるナメコの天ぷらと、パプリカやニ ンジンなど野菜との相性もいいバタ-いため。「ナ メコのぶっかけ丼」は油でいためたナメコをしょうゆ、酒、調味料で一煮 立ちさせ、熱いご飯にかけた。ナメコの独特のぬめりには体の粘膜を 保護するなどの効果があるムチンが含まれている。粘りが取れない よう、ゆですぎないのが調理のこつ。大前さんは「町内の生産者と道 内の大型店やイベント会場で、直売やナメコの天ぷらの調理実演など を積極的に行っています。生産者側からさまざまな食べ方を発信し、 消費拡大に結び付けたい」と意欲を燃やしている。