午前9時半頃に日通が来る。既に運び出す荷物はひとつの部屋に集めてあるので、それを前にして担当者と話をする。作業の人は総勢3名。いざ作業が始まれば1時間もしないうちに片付いてしまう。最後に書類を作成し、帰国後の手続きについて説明を受け、そうしたことも含めて1時間程度で家の中はハンマースホイの絵のようになった。ざっと掃除機をかけ、手持ちの荷物をまとめて最後のゴミ出し。手持ちの荷物のなかにはこちらで使いつぶすものもあるので、少し量が多い。
一部の荷物を、後で取りに来ることにして住処に残し、スーツケースと機内持ち込みのカバンをもって予め予約しておいたB&Bへ向かう。おそらく荷物の総重量は2つあわせて35キロぐらいだろう。スーツケースを持ち上げるのが大変なので、バスに乗らなくても済む経路を選び、最寄のSoutheastern鉄道のWestcombe Park駅へ向かって歩く。駅は高台にあり、ゆるやかな坂を昇らなければならない。坂の下にさしかかったところで、タクシーが前からやって来る。どうしようなかと思い、なんとなくタクシーの運転手のほうを見る。向こうもこちらを見ているようだ。そのまま擦れ違ったが、私の顔はタクシーを追う、向こうもスピードを落としてこちらを振り返っている。手を上げることなく、タクシーが停まった。タクシーのほうへ荷物を引き摺りながら歩み寄ると、運転手が窓を降ろす。「パディントン駅まで行く?」「行くよ」「153サセックスガーデンね」「わかるよ」というわけで、そのままタクシーに乗った。
B&Bにチェックインして、割り当てられた部屋はその建物の最上階、の上の屋根裏部屋だったようなところだ。日本式に数えれば5階になるが、古い建物で天井が高いので、もっと高さがあるだろう。繰り返しになるが、古い建物なのでエレベーターというものが無い上に階段は梯子のように狭い。これを35キロの荷物を持って登るのである。今回のロンドン滞在での最後の難関なのか、最後から何番目なのか知らないが、人の気配が無いのを幸いに、手荷物とスーツケースを別々に持って昇り降りすることにした。
ちなみ宿泊費は1泊68ポンドである。だいたいの相場として、ターミナルとなる駅周辺の宿は最低45ポンド前後である。パリに遊びに行くとき、朝早い列車に乗るのに駅近くの宿を取るのだが、宿泊サイトのリストのなかの一番安いのを選んで45ポンンドだった。一泊だけなら、とりあえずベッドとシャワーがあればよいので、それで十分なのだが、今回は3泊なので、多少の快適さも求め、普段は読みもしない宿泊サイトの各宿に対する宿泊客のコメントにもざっと目を通した上で、宿を決めたのである。しかし、古いながらも清潔で気持ちの良い宿である。
荷物を置いて、不動産業者へ向かう。退居の際の室内チェックを受けるのである。担当者が不在なので、代わりの人にお願いすることになっていたが、今日の午後ということだけで、時間まで決めておかなかったので、住処へ戻り、そこで1時間ほど待機することになった。その間に残っていた荷物をまとめ、本を読んで過ごす。家というのは、人が住んで初めて家になるのだなと改めて思う。家具や調度品を片付けてしまっても、人が住んでいると、その人の気のようなものが充満しているように思われる。同じように清潔で、同じような家具や調度品を並べた家でも、住む人によって、居心地が全く違って感じられると思う。それが何によるものなのか知らないが、なにはなくとも人が一番大事な要素であることは確かだと思う。
退居のチェックは無事終わり、敷金相当額の小切手を受け取る。不動産業者の人に車で駅まで送って頂き、宿へ戻る。時間は午後5時を回っている。部屋で荷物を開いたり、郵便や社内便で送るものを分類したりしていると、6時だ。少し早いが食事に出ることにした。
Paddington駅周辺は飲食店も多いが、これといったものがない。これまでロンドンで回転寿司に入ったことがないので、エキナカの回転寿司に行くことにした。行ってみたら満員で入れない。みんなどんなものを食べているのだろうと、客の背後から様子を見てみると、焼きそばとかカレーを食べている人がいる。寿司屋に来たものの、最近は生ものを食べる気がしないので、これはちょうど良い。とりあえず、駅まで来たついでに地下鉄に乗ってNational Galleryへ行くことにし、帰りにここに寄ることにした。
Paddingtonから地下鉄Bakerloo Lineで美術館のあるCharing Crossまで乗り換え無しで行くことができる。今夜も全館開館していて、よりどりみどりだったが、やはり最後はピエロ・デラ・フランチェスカ、マンテーニャ、ボッティチェリあたりで締めてみたい。それと、英国に敬意を評してジョージ・スタッブスの「ホイッスルジャケット」とコンスタブルの風景画はしっかりと感じておきたい。ほかにもいくつか見ておきたいものがあったのだが、なかには別の作品と入れ替えられてしまって観ることのできないものも何点かあった。わずかに1時間ほどではあったが、一応気が済んだので、Paddingtonへ戻る。
回転寿司は、さすがに客も少なくなり、従業員たちが交代で、客に混じって食事をしている。もう閉店が近いということだ。チキンカツカレーとみそ汁を注文し、ベルトの上を流れていたどら焼きを食べる。基本的に寿司屋なので、ごはんは寿司飯、つまり冷めたものである。そこにチキンカツとカレーが乗ったものが登場する。カツカレーは日本風の味で、やはり温かいご飯のほうがよいとは思うが、それでもおいしかった。
一部の荷物を、後で取りに来ることにして住処に残し、スーツケースと機内持ち込みのカバンをもって予め予約しておいたB&Bへ向かう。おそらく荷物の総重量は2つあわせて35キロぐらいだろう。スーツケースを持ち上げるのが大変なので、バスに乗らなくても済む経路を選び、最寄のSoutheastern鉄道のWestcombe Park駅へ向かって歩く。駅は高台にあり、ゆるやかな坂を昇らなければならない。坂の下にさしかかったところで、タクシーが前からやって来る。どうしようなかと思い、なんとなくタクシーの運転手のほうを見る。向こうもこちらを見ているようだ。そのまま擦れ違ったが、私の顔はタクシーを追う、向こうもスピードを落としてこちらを振り返っている。手を上げることなく、タクシーが停まった。タクシーのほうへ荷物を引き摺りながら歩み寄ると、運転手が窓を降ろす。「パディントン駅まで行く?」「行くよ」「153サセックスガーデンね」「わかるよ」というわけで、そのままタクシーに乗った。
B&Bにチェックインして、割り当てられた部屋はその建物の最上階、の上の屋根裏部屋だったようなところだ。日本式に数えれば5階になるが、古い建物で天井が高いので、もっと高さがあるだろう。繰り返しになるが、古い建物なのでエレベーターというものが無い上に階段は梯子のように狭い。これを35キロの荷物を持って登るのである。今回のロンドン滞在での最後の難関なのか、最後から何番目なのか知らないが、人の気配が無いのを幸いに、手荷物とスーツケースを別々に持って昇り降りすることにした。
ちなみ宿泊費は1泊68ポンドである。だいたいの相場として、ターミナルとなる駅周辺の宿は最低45ポンド前後である。パリに遊びに行くとき、朝早い列車に乗るのに駅近くの宿を取るのだが、宿泊サイトのリストのなかの一番安いのを選んで45ポンンドだった。一泊だけなら、とりあえずベッドとシャワーがあればよいので、それで十分なのだが、今回は3泊なので、多少の快適さも求め、普段は読みもしない宿泊サイトの各宿に対する宿泊客のコメントにもざっと目を通した上で、宿を決めたのである。しかし、古いながらも清潔で気持ちの良い宿である。
荷物を置いて、不動産業者へ向かう。退居の際の室内チェックを受けるのである。担当者が不在なので、代わりの人にお願いすることになっていたが、今日の午後ということだけで、時間まで決めておかなかったので、住処へ戻り、そこで1時間ほど待機することになった。その間に残っていた荷物をまとめ、本を読んで過ごす。家というのは、人が住んで初めて家になるのだなと改めて思う。家具や調度品を片付けてしまっても、人が住んでいると、その人の気のようなものが充満しているように思われる。同じように清潔で、同じような家具や調度品を並べた家でも、住む人によって、居心地が全く違って感じられると思う。それが何によるものなのか知らないが、なにはなくとも人が一番大事な要素であることは確かだと思う。
退居のチェックは無事終わり、敷金相当額の小切手を受け取る。不動産業者の人に車で駅まで送って頂き、宿へ戻る。時間は午後5時を回っている。部屋で荷物を開いたり、郵便や社内便で送るものを分類したりしていると、6時だ。少し早いが食事に出ることにした。
Paddington駅周辺は飲食店も多いが、これといったものがない。これまでロンドンで回転寿司に入ったことがないので、エキナカの回転寿司に行くことにした。行ってみたら満員で入れない。みんなどんなものを食べているのだろうと、客の背後から様子を見てみると、焼きそばとかカレーを食べている人がいる。寿司屋に来たものの、最近は生ものを食べる気がしないので、これはちょうど良い。とりあえず、駅まで来たついでに地下鉄に乗ってNational Galleryへ行くことにし、帰りにここに寄ることにした。
Paddingtonから地下鉄Bakerloo Lineで美術館のあるCharing Crossまで乗り換え無しで行くことができる。今夜も全館開館していて、よりどりみどりだったが、やはり最後はピエロ・デラ・フランチェスカ、マンテーニャ、ボッティチェリあたりで締めてみたい。それと、英国に敬意を評してジョージ・スタッブスの「ホイッスルジャケット」とコンスタブルの風景画はしっかりと感じておきたい。ほかにもいくつか見ておきたいものがあったのだが、なかには別の作品と入れ替えられてしまって観ることのできないものも何点かあった。わずかに1時間ほどではあったが、一応気が済んだので、Paddingtonへ戻る。
回転寿司は、さすがに客も少なくなり、従業員たちが交代で、客に混じって食事をしている。もう閉店が近いということだ。チキンカツカレーとみそ汁を注文し、ベルトの上を流れていたどら焼きを食べる。基本的に寿司屋なので、ごはんは寿司飯、つまり冷めたものである。そこにチキンカツとカレーが乗ったものが登場する。カツカレーは日本風の味で、やはり温かいご飯のほうがよいとは思うが、それでもおいしかった。